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抗うことこそ力なりて ー歪み、綻び、収束するー  【元題名=未定】  作者: 非珈琲俺
第一幕 〝            〟
4/6

第????:3話

かなり遅れた。今回は説明回(設定)ぎみ。

 王都ツァイト。別名として『神塔の都市』とも称されるここツァイトは、円形に広がる防壁で囲まれた、王城を中心に展開される都市だ。防壁には東・西・南・北それぞれに四つの門があり、そこから真っ直ぐに、王城へ大通りが敷かれている。この四つの大通りの中間地点には、噴水を真ん中におく、広場が存在した。

 

 その内の一つ、南の噴水広場にて。


 ()()()()()()綺麗に光輝く満天の星空を、噴水の縁に腰掛けながら、俺は眺めていた。現代日本ではなかなか見られない素晴らしい景色ーーではあるが、慣れていないと、現実との差にかなり混乱させられるであろう光景だ。


 先伸ばし以外のなにものでもない決断をした後、俺は宣言······してないな、取り敢えず自分の考えた通りに『How』へとログインした。


 ログインした時点だと、現実時間は7時20分。つまりまだ朝だ。


 だがしかし、ゲーム内に来てみれば、これだ。


 『How』では、現実の三倍の速度で時間が進む。


 それも、1日が8時間しかないなどというちゃちなものではない。ゲームの中で24時間、つまり一日過ごしても現実では8時間しか経っていないという、若い内から精神がオッサン臭くなりそうな、そんな可笑しなモノである。


 この時間を加速する技術は、今のところ『How』でしか実装されていない。この機能を噂で聞いたから『How』を購入したと言う人も多いと聞いている。掲示板を見ていると、この理由で買った人の中でも、特筆して多いのは現役サラリーマンやブラック企業に就職してしまった人のようだった。


 中には、会社からこれを買うよう念押しされた人も居るようで······ブラック企業とは恐ろしいものだ。

 

 それはともかく。オンラインプレイでこそ三倍速で固定されているが、シングルプレイを選択すると、恐ろしいことに等倍速から30倍速までーー隠し要素もあったりするがーーどの倍速で遊ぶか選ぶことが出来る。


 30倍速。つまり一日で約1ヶ月遊べるということである。もう一回遊べるなどというレベルではない。このゲームの製作者は日本人らしいのだが、これが、外の人に『変態』と呼ばれてしまう所以なのか。


 まぁ、それは置いておくとして、今のゲーム内時間は、22時。


 要は夜の10時であるということで。


 つい5分程前に目を覚ましたばかりだと言うのに、そろそろ日付が変わるのも近い時刻になっている。


 ブラジルやらフランスやら、遠くの国に旅行しに行った人が「時差が辛い」と言う気持ちがよくわかるというもの。真夜中なのに寝る気になれない。


 だからと言って寝ることをしなければ、次の日、朝にも関わらず眠気に襲われる、なんて事態に陥ることとなりかねない。


 実際二年程前までその事で困るプレイヤーが多く、一時期はログイン時間を調整することが謎のブームとなっていた。


 クレームもあったが、運営は文句を言う輩に対して「仕様です」の一言で終わらせていたらしい。それでもしつこく食い下がる相手には「そこまで言うのならこのゲームの公開は止めましょう」と言っていたそうだ。

 

 大半のクレーマーは、ここで怖じ気ついて引くのだが、一人のクレーマーが、運営の人気を落とすために、動画・ブログでやり取りを公開していた。「言質とったぜww」などと掲示板にもスレ立てをしていたが、公開したその瞬間から「テメェ何してくれてんだ!?」と大炎上し、総叩きに遭っていた。「ナイス!」などと言っているアンチ勢もいたが、これも同じく総叩き。少数が、多数に押し潰される瞬間だった。


 この後すぐに、熱烈なファンの方々が必死に運営を説得してくれたお陰で、サービスは無事続いたがそれがなかったら如何(どう)なっていたことか。


 感謝しかない。まぁ俺は傍観して笑っていただけだが。


 「……宿屋に行くか」


 眠気はないが、寝るしかないだろう。でないと現実に戻ったとき、早起きしたのに目元に隈が浮かんでいるという惨事が起きかねない。

 

 噴水の縁から立ち上がり、斜め左の『銀の宿り木』と書かれた看板が下がっているところへと向かってーー


 「……あ」


 『CLOSE』

 

 扉にはそんな文字が刻まれた板が掛けられていた。


 あー……そういえばこの世界、中世がモデルの異世界だったな。そりゃ閉まってるよな今22時過ぎなんだから。こんな時間まで働き続けるってどんなブラックだって話だ。今の時間帯で営業を続けているのは、従業員を雇う余裕のある高級宿ぐらいのものだろう。


 俺だって一応は古参勢だ、高級宿に泊まるくらいのグニスーーイグニスでの共通通貨ーーの貯蓄は腐るほどある。

 

 だが、たった一晩しか泊まらないのに、わざわざ高級宿に泊まりに行くと言うのはなぁ……。


 「……面倒臭ェ」


 そうだ、一晩しか泊まらないのになどという(くだり)はただの言い訳だ。実際はただただ面倒臭いだけ。今のこの位置から高級宿まで行こうとすると、一番近いところでも10分前後は掛かるからな。


 噴水の周りに設置されているベンチを適当に見繕ってーーまぁどれも同じだがーー座り、背凭(せもた)れに寄り掛かる。


 これでよし。


 寝る準備は出来た。


 「メニューオープン」


 ボソッと呟くと目の前に、淡く、青白く光る厚さのない透明な板が現れる。板には様々なアイコンが立ち並んでおり、俺はその中からの時計が記されたアイコンに触れた。このシステムが、(くだん)の眠気不足(何ぞそれ?)を解消してくれる。


 『タイマー』の項目から、『起床時刻』を選択し、設定を行う。取り敢えず5時で良いか。針を5時になるよう動かして『決定』する。


 これで完了だ。


 あとは、『寝る』という意思を持った際に現れる『寝ますか?Yes / No』のメッセージで『Yes』を選ぶだけで眠気に襲われて寝ることが出来る。


 こんな簡単に解消出来るのに、二年程前までは、何故か全てのプレイヤーがーー掲示板を見る限りーー時差に苦しめられていた(俺は除く)。


 発売から一年近く、誰も『タイマー』のヘルプなぞ詳しく見ていなかったらしい。聞いたとき、正直阿呆だと思った。


 しかもその所為(せい)でサービス終了になりかけたのだから救えない。本当に有難う御座いました。


 つらつらと考えながら、『Yes』を押す。


 ーーズキリ。


 ……? 何か忘れているような……まぁいいか、御休み。




 あの時俺が『タイマー』のこと書き込まなかったら、如何(どう)していたのだろうか。今も時間調整が行われていたのかねぇ……。


次回何時だろ。


僕は信じる······僕ならできると!

知ってる人いるのかなぁ。

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