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抗うことこそ力なりて ー歪み、綻び、収束するー  【元題名=未定】  作者: 非珈琲俺
第一幕 〝            〟
2/6

第????:1話

全ては此処から始まる。



 『さァ、始めヨうカ』



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 『ハハハ、……ム駄ダ無……。……ヨうト……カな?』


 辛うじて一階の基礎的部分の残る、酷く崩壊した王城の中心で道化師が嗤う。


 『……に手は出……。必……此処で……す』


 『ホぅ?ソれハ此……とカな?』

               

 道化師が、背後に生まれた闇から()()()を引き摺り出す。


 『……は?』


 ソレは、上部に縫い付けられた細く黒い糸を(つか)まれた(いびつ)なボウリングのボール。糸の付いていない面からは、薄い橙色(だいだいいろ)の滑らかな生地が(のぞ)いている。まるで、人肌のような、



 否。



 まるで、ではない。ような、ではない。


 ソレは、細く黒く伸びるしなやかな糸を掴まれユラリと揺れる()()は。


 瞳を失った暗い眼窩(がんか)(さら)し、丸く口を開いた()()は、紛うことなき、人の生首だった。


 『お……だろう。※※!?』


 『残……ネ。……ニ殺……よ』


 『……す。何処……殺す』


 『ーーソレは……な話ダ』


 道化師が消え、胸から刃が飛び出す。口から噴き出した血が、辺りに撒き散らされた。


 『ダって、君はーーーーーー』


 『……るな、巫山戯(ふざけ)ッーー!?』


 冷たい感触が首を通り過ぎてーー



 「ーーッァ!?」



 布団から跳ね起きる。呼吸が荒い。心臓が、締め付けられているかのような鋭い痛みを発しながら大きく鼓動し、顔の血管までもが大きく脈打つのが分かる。少し痛い程に。


 一旦、深呼吸をして気持ちを(しず)める。


 心臓の鼓動が普段通りに戻り始めると共に、呼吸も痛みも落ち着いて行く。


 ……一体、俺は何を見ていた……?


 (ーー道化師?生首……?)


 両のこめかみを押さえるように片手で顔を覆いながら、急速に朧気(おぼろげ)になっていく先の記憶を、映像を逆再生するように思い出そうとする。


 (俺は首を切られて死んだ。誰に?道化師に。道化師は何かを持っていた、何を持っていた?)


 生首だ。


 俺は、その生首を見て何かを、いや、名前を呼んでいた気がする。顔さえ分かれば、その叫んだ名前も導き出せる筈だがーー肝心の記憶の方に、もう(もや)がかかり始めていて顔が判別出来なくなっている。


 俺は、ここで諦めて別の事柄について考え始めるのだろう。


 ……普段通りであれば。


 だが、この日は違った。


 心の片隅に、思い出せ、思い出せと、必死になって焦っている自分がいる。俺はその嘆願(こえ)に従うことに決めた。掛かる靄を取り除くようにして、顔を判別しようとする。少しずつ、少しずつ晴らしていく。この作業の途中、あの道化師を俺は知っている、ということに気が付いた。何故知っているのか、名前は何なのかーーかなり奇妙だが、これに関しては後で考えることにする。


 もう少しで、靄を完全に取り払えるというところまで来た。名前が喉まで出かかっている。


 もう少し、もう少しーーーー


 ーージリリリリリリリリリリリリリリリリッ!!


 「ッ!?」


 けたたましく鳴る甲高い音で、俺の肩が大きく跳ねる。


 振り向くと、そこには自転車のベルと同じ要領で音をならし続ける、鈍い銀色の輝きを持つ目覚まし時計があった。


 驚かされたことに若干イラッとしつつ、ボタンを叩いて音を止める。


 時刻を見ると、針は6時30分を示していた。


 「……着替えるか」


 もう、夢のことは頭から抜け落ちていた。






一週間後くらいかなー次の投稿は。

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