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機動特殊陰陽捜査課第3班  作者: 楠木 茉白
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01


満天の星空がビル群の光りに打ち消され、まだ賑わい残るオフィス街に白銀のロングヘアを輝かせ、ビルからビルへと飛び移りながら切れ長な美人の女性が白銀の閃光のごとく疾走している。


「目標地点到達まであと1分」


着用している防弾ベストの背中には『POLICE』と刺繍されている


「狙撃チーム配置に到着」


インカムに女性の声で通信が入る。


「陸上チーム配置に着いた」


太い声の男性の声。


「援護チーム配置に着きました」


若くスッキリとした男性の声の通信が入ると白銀のロングヘアの女性の口元がクスッとつり上がった。


「あと30秒で到着」


と言葉を吐いた後すぐに鋭い女性の声で通信が入った。


「総員1分後に作戦開始、一之瀬急げ」

「……そういえば、拓斗、今日1度も好きって言ってくれてないよね、ききたいなぁ♪」


すぐさま若くスッキリした声の三善拓斗が焦ったように小声で答える。


「ちょっ!冬華、今作戦中だから」

「こんな時だから聞きたいの、不安な気持ちじゃあ、作戦に支障をきたすし、ね♪」

「そんな事言われても…」


拓斗の困った様子に冬華は配置に向かいながら満面の笑みを浮かべている。


「おい!バカップル!イチャイチャしてんじゃねぇ!私の狙撃の照準がズレてお前らを撃ち抜きかねねえ、三善!めんどくせえから言ってやれ!」


狙撃手、桜花彩姫がスコープを覗きながらぶっきらぼうに言葉を放つ横で補佐員の西田一樹が苦笑いを浮かべている。


「彩姫さん、勘弁してください」

「ほら拓斗、彩姫さんもこう言ってくれてるし♪」

「はあっははは、良いじゃないか三善、若く輝いてるじゃないか!」

太い声の巨漢、陸上チームの井戸栄太が機動隊員数名と相棒の清水孝治とエントランスホールで構えている。


「井戸さんあんまし、あいつら甘やかさないで下さいよ」


清水が井戸に呆れたように言い放つ。


「ねぇねぇ拓斗ぉ」


冬華が疾走しながらも甘えるように呼び掛ける。


「あのバカどもはオープン回線で何をしている」


冬華が拓斗に向け甘えた声で呼び掛ける通信を聴き、通信車両内で頭を抱える特殊陰陽捜査課第3班班長、四法院冴子が鋭い声を濁らせている。


「冬華ちゃん…」


オペレーター席の秋吉麻耶が冴子に気を遣いながら苦笑いをしている。


「わかったよ」


頭を抱えながら拓斗が冬華の呼び掛けに答え、深呼吸をひとつ行った後、インカムマイクに手を添え顔を赤くし囁く。


「冬華…好きだよ」


電流が走ったように顔が一気に赤く火照る冬華。


「よーーーし!ひと仕事しますか!」


冬華は立ち止まることなく、疾走したそのままの勢いで、目標地点の建物のガラス天井目掛け飛び込み、突き破った。


「あのバカ!総員作戦開始!!」


直ぐ様冴子が叫び総員に指示した。

冬華がガラスを突き破り、着地すると、風体の悪い武装した集団が銃口を冬華に向けるが焦ることなく、服に付いたガラス片を払い、顔をキリッとさせ、警察バッチを示す。


「警察!全員大人しく逮捕されなさい!」


冬華の姿を見て、武装集団の1人がはっとし叫んだ。


「白銀の髪、白狼だ!」


冬華に向けられた銃口から次々に弾丸が発砲されると、冬華は腰の刀を抜刀し全ての弾丸を切って捨てた。


「なんだと……化け物が!こっちには人質がいるんだぞ!」


そう言うと、武装集団の数名がドレスを着た複数名の人質に対して銃口を向ける。


「キャー!」


騒然とする人質達を他所目に冬華はため息をつく。


「無駄よ」


人質達の前に突然黒い壁が出現し、武装集団と人質に分断された。


「なんだ!これはいったい!?」


驚きざわつく武装集団を見て冬華は笑顔を浮かべる。


「流石拓斗♪」

「冬華、あんまり無茶はしないでよ」


黒い壁の横から突如現れた拓斗が冬華に歩みよる。


「なんなんだお前ら!」


武装集団のリーダー格が2人に向け叫ぶと、拓斗が真剣な眼差しを向け答える。


「警察省機動特殊陰陽捜査課だ、禁止呪物及び薬物密輸並びに逮捕監禁、銃刀法違反等で逮捕する」


拓斗の逮捕状の口頭申告が終わると同時に井戸らが機動隊員を引き連れて一気になだれ込む。


「ダーハッハハハ!手柄は頂きだ!」


井戸が武装集団を両手で2人確保した後シンバルを叩くように頭をぶつけ合わせ、気絶させ、次々になぎ倒していく。


「井戸さん、やり過ぎないでくださいよ!」

「ハハハ!わかっとる、清水!手柄は俺らのもんだ!」


武装集団が銃口を井戸に向けると、井戸は不気味な笑顔を向けた。

武装集団は井戸の不気味な笑顔に戸惑うが、一斉に発砲したが井戸は避ける事無く、全ての銃弾を体に受ける。


「やったか?」

「ふん!!!」


井戸は体を鋼の様に硬質化し、全ての銃弾を弾いた。


「ハハハ!俺を殺るならこんな物じゃ無理だぞ」


その様子を見ていた冬華と拓斗は苦笑いをしている。


「あの様子じゃ、私たち別に居なくても大丈夫そうだね」

「そうかもね……」


清水は井戸と違い、少し気だるそうに武装集団を制圧していると、武装集団が奥側から軍事用の武器を出して来る事に気が付いた。


「井戸さん!あれ!」

「軍事用の対戦車砲か……あれは不味いな、おい桜花!」


井戸はインカムに手をやり、桜花に通信する。


「わかってるっての」


武装集団が対戦車砲を使用しようと構えると、桜花による完璧正確な狙撃で次から次へと破壊される。


「はい、クリア、そんじゃ、アタシらは引き上げるよ」


狙撃を終えて、構えを解いた桜花はその場にあぐらをかきながらタバコを咥えると、西田が直ぐにライターで火をつける。


ホールでは武装集団はあっという間に制圧され、機動隊員達が手錠を掛けどんどん連行されて行く。


「状況終了、人質全員無事です」


拓斗が冴子に通信を入れると機嫌が悪そうな声が聞こえてくる。


「皆、ご苦労さま、だが、後で全員私のオフィスまで来い!」

「皆さん、お疲れ様です……では撤収して下さい」


麻耶の気まずそうな声を最後に通信はブツっと切れた。


「なんか、班長、怒ってた?」

「うん……かなりね」


清水が呆れ顔で冬華と拓斗の元に近づきため息をついている。


「拓斗ぉ、お前の彼女なんだからちゃんと管理しろよ、班長の所にはお前らでいけよ」

「あ、はは……ごめん、孝治」

「清水!管理って何よ」

「お前ら、バカップルの事だよ」

「私たちが幾らラブラブだからって嫉妬しないでよ」

「はいはい、そんじゃあよろしくな」


清水は冬華を軽くあしらい、井戸の元に現状整理に向かう。


「ねぇ、拓斗これからどうする?仕事終わったし、デートする?」

「いや、報告書とか残務処理があるし、まだ勤務中だよ」

「ええー!」


冬華の無線に冴子から連絡が入る。


「一之瀬、お前は特に早く私の所にこい」

「げっ!まだ聞いてたんですか!?じょ冗談ですよ……はは」

「ハハハ……冬華仕事仕事」

「うぅぅぅ……」


機動隊員に連行される武装集団のリーダーが抵抗して暴れ始めた。


「大人しくしろ!」

「はなせー!」


機動隊員の腕を振り払いリーダー格の男は隠していた赤い液体の入った注射器を自身の首に刺し液体を一気に入れた。


「お前何を!?」

「ぐぐぐぐががががががあー!」


男の体はみるみるうちに大きくなり、その姿は鬼の様な荒々しい化け物へと変わった。


「うわぁぁぁ!」


化け物は近くにいた機動隊員を叩きつぶそうと巨大な腕を振り下ろすと黒い壁が盾となり機動隊員を守った。


「ひぃぃぃ!」

「早くにげろ!冬華!」

「分かってるっ…よ!」


冬華は化け物の腕を刀で払い飛ばした。


「どうする?拓斗」

「冬華なんとかここで食い止めるよ」

「了解」


厳しい顔する冴子が考えている。


「秋吉解析を」

「はい、対象の基準値はA判定…完全鬼人化を確認しました!」

「はぁ…直ぐに省に通信を繋いで」

「はい」

「第3班班長四法院です、作戦実行中に鬼人化を確認A判定と認定された為殲滅の許可を申請します…わかりました」


冴子は外線の通信を切り、総員に通信を繋いだ。


「総員に伝令、対象は鬼人及び妖魔と認定、只今より殲滅対象となった、殲滅にかかれ!」

「待ってください!まだ鬼人化してすぐです!助けられます!」

「三善、そいつは自ら鬼血を取り込んだ自業自得だ」

「ですが!」

「上意だ!」


拓斗は悔しそうに俯いた。


「わかったな、三善」

「……わかりました」


拓斗は顔を上げた。


「冬華、僕のわがままを聞いてくれる?」

「……私は拓斗の何?」

「えっ?……そうだね、冬華、僕に手を貸してくれ」

「当然だよ、拓斗」


冬華と拓斗は隣りに並び凛々しく化け物に対峙した。


「おいおい、お前ら何楽しそうな事してんだ?俺も混ぜろよ、桜花、お前も一枚噛むか?」

「めんどくせぇことを、まぁ馬鹿に付き合ってやるよ」

「井戸さん、彩姫さん、ありがとうございます」

「おう!」


井戸は肩を回しながら嬉しそうな表情をしていた。


「西田、滅霊弾よこせ」

「えっ?ああぁ只今!」

「てめぇらこの一発は高ぇんだしっかりしろよ」


彩姫は西田から受け取った滅霊弾を口に咥えライフの弾丸を手早く抜き滅霊弾を込めた。


「お前ら何を勝手な事を!」

「班長すみません、でも僕たちは警察官です、滅殺する事が仕事じゃない、逮捕する事が僕ら警察官の仕事なんです」

「ガハハ!班長、そういう事だ、こいつらに何言っても無駄だ」

「井戸お前まで……くっ…馬鹿者共が、はぁ……10分だ!10分以内にカタをつけろ、それ以上は待てない、いいな!」


冴子は呆れて肩を落とすも決心を決めた様にまた元のキリッとした顔つきに戻した。


「了解!」

「まぁ、ああ言ってるが班長が一番滅殺に納得してないんだがな、よし!清水お前は避難を最優先!一之瀬は俺と化け物の動きを止める!三善は化け物を引き剥がす!桜花外すんじゃねぇぞ!」

「誰に言ってんだよ、おっさん」

「全員行動!班長に恥をかかすな!」

「おう!」


井戸の掛け声を皮切りに総員は一斉に走り始めた。


「秋吉、解析と近隣の交番と警察署に伝令」

「はい」

「私は結界の準備をしておく、ここは秋吉任せたぞ」

「はい!すぅー、はぁー標的解析始めます」


麻耶は息休むことなく手早く解析と同時に各所へのメールを送信を行った。


「馬鹿者共が…領域を想定する四法院の名のもとに領域結界をはる」


冴子は持っていた呪符を空へ向けて飛ばすと周囲に化け物を閉じ込める結界がはられた。


拓斗は右手の親指にしていたリングに力を込めると拓斗の影が禍々しい圧力を出しながら大きく広がっていった。


「井戸さん!冬華!」

「任せて!」

「こなくそが!大人しくしやがれ!」


井戸は下半身を冬華は上半身へ化け物の動きを停止させる為に攻撃を行っていたが、鬼へ変貌し続ける化け物に手を焼いていた。


「おい!三善急げ!これ以上防げねぇぞ!」

「この!いい加減にしろー!」


冬華は体全体に白銀の燃える様な生気を放ち、灰色の瞳は神々しさを増しすと、力の限り化け物を吹き飛ばした。


「おい!一ノ瀬殺す気か!?」

「大丈夫ですよあれくらい、それに準備は出来たみたいです」


拓斗は集中し、感覚を研ぎ澄ました。


「三善の名のもとにこの血肉に宿りし神器を解放せしめろ、羅刹」


拓斗がそう唱えると大きくなっていた影が更に禍々しく強大化し、化け物を包み始めると麻耶から通信が入った。


「三善君!呪源は背骨で繋がってるよ!」

「冬華!引き剥がすよ!」

「了解!」


拓斗は左手で右手首を持ちリングに更に生気を込めると化け物を包んだ影が化け物を取り込み始め、化け物とリーダーの男引き離したが太い線でまだ繋がっていた。


「冬華!」


冬華は目にも止まらない速さで飛び出し刀に生気を注ぎ込み一気に化け物と男を繋ぐ線を断ち切った。


断ち切られた化け物は新たな宿主を探す様にその場を高く浮遊し始めた。


「時間通りだな、百眼」


彩姫の瞳に術印が浮き出ると化け物の呪源が見える様になり、そこへ目掛け銃弾を一発で射抜いた。


化け物は銃弾で射抜かれた事で苦しみだし消滅した。


「終わったみたいだね」

「うん、冬華、ありがとう」

「うふ、拓斗のお願いだもん、この後どうするデートする?」

「いや…」


冴子からの通信が二人に入った。


「馬鹿者が!まだ勤務中だ!」

「ひぃ!冗談ですよぉ」

「何が冗談だ!一ノ瀬、三善!あと他の造反共!残務が終わったら直ちに私の所へこい!」

「そんなに怒らなくたって…うまくいったんだから……」

「何か言ったか!一ノ瀬!」

「いえ!了解しました!」

「冬華……」


男を軽々と肩に担いで井戸がやって来た。


「おーい、お前ら遊んでないで片付け手伝えよ、警察官は今からが忙しいんだからよ」

「うっ……」

「現場の整理から犯人の取調べ、そんで報告書作成、今からの方が長ぇんだ」

「冬華、やっちゃおうか」

「うぅぅぅ…デートは?」

「また今度ね、頑張ろう」

「うぅぅぅ…はぁぃ…」

「さっさとやれバカップルが片付かねぇだろ!」

「しくしく…」


その後の警察省警察局機動特殊陰陽捜査課第3班の勤務は翌朝まで続いた。


「早く…帰りたぃよ…」

「頑張ろう冬華」































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