『木下恵喪失事件ファイル』
4月5日 木下恵が姿を消した。
翔太は今日あったことを日記に記した。
毎日丁寧に日記をつけている翔太だが、今日は荒く文字を描き始めた。
ただ夢中になって書いた。
書き終えた翔太はそのまま眠っていた。
__3日前
「おい、日浦、起きろ〜」
国語教師の杉野が翔太の肩を叩く。
翔太は直ぐに目を覚まし杉野の方を見る。
「すみません」
「寝不足か?夜更かしは健康に悪いぞ」
クラスの女子がクスクスと笑っている事に気付き翔太はモジモジする。
「じゃあ、続き読んでいくぞー」
そう言って杉野は黒板の方へともどっていく。
__昼休み
「翔くん、また寝てたの?」
「うん、昨日ちょっと徹夜してて」
「ダメだよ翔くん!健康第一だよ!」
そう言って恵は少し怒る。
「そんなに怒らないで、ね?」
「まぁ、翔くんが言うならいいけど」
少しの沈黙が訪れたあと恵は話し出す。
「あのね、翔太くん、この間の話なんだけどね」
「もしかして返事か?!」
「うん……言っても大丈夫かな?」
「うん!大丈夫……」
翔太は唾を飲み込み覚悟を決める。
「ーOKだよ」
「本当に?やったぁー!」
翔太は喜びのあまり飛び跳ねた。
「翔くんが告白してくれるとは思わなかったかけど
凄く嬉しかった。」
恵は照れながら翔太の方を見る。
「思い切って告白して良かった〜」
翔太の鼓動は少し早いが安心したのか少しずつ戻っていく。
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄春休み最終日
『なぁ、恵、今空いてる?』
翔太は恵にMineを送っていた。数秒後、スマホの音が鳴った。
『空いてるよーどうしたのー?』
恵からの返信に翔太は心を踊らせる。
『いやさ、話があるんだけどいい?』
『なになに?』
『あのさ、俺さ……』
『うん』
翔太は数秒止り、勇気を振り絞る。
『恵の事が好きなんだ』
『え〜!!』
翔太はもう後戻りは出来ない所まで来ていた。
『また、今度返事くれない?』
そう言って翔太はスマホの電源を切った。
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
「それにしても翔くんかっこよかったよ〜!」
「やめてくれ、恵、恥ずかしさが増す。」
翔太は恥ずかしそうにそっぽを向いた。
「もぉ、可愛いねぇ!」
そんな翔太を恵はからかう。
「そんな事ないって!」
「いやいや〜可愛いよ〜」
畳み掛けるようにからかう恵に翔太は少し笑った。
「なぁ、恵、ずっと一緒に居てくれるよな?」
「たが断る!」
「あのなぁ、」
翔太は真剣な顔をしていたが、今度は呆れた様子だ。
「うそうそ、ずっと一緒だよ」
「そうだよな、ずっと一緒」
2人は小指で、指切りげんまんをした。
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄4月5日 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
事が起こったのは学校の帰り。
いつもみたいに帰っていた時だった。
「翔くん、今日どこか行こ?」
「そうだな、何処行きたい?」
「うーん」
恵少し悩み答えを出そうとしていた。
「そうだ、綺麗な場所があるんだけど行かない?」
翔太が振り替えるとそこに恵の姿はなかった。
「あれ?恵?おーい、恵ー」
いくら呼んでも返事がない。流石におかしいと感じた翔太は恵に電話を掛けるが圏外で繋がらない。
翔太は不安に押し潰されそうだった....
恵が消えてから一時間、翔太は立ち直れないでいた。
唯一残った恵の鞄を見つめる翔太の目には光一つすら灯っていない。
翔太の部屋から聞こえてくるすすり泣く声と床を叩く音。
この日の翔太はあまりにも普通とは程遠い存在だった。
一週間が経った頃、翔太は少しずつ日常に戻って行った。
だがそれも恵のいない日常。
翔太にとってはつまらない日常だ。
帰り道、信号が変わるのを待っていた翔太に一つの声が届く。
「翔くん、助けて...」
翔太は気づいていた。恵の声だと、間違えるはずのない声と。
「恵!何処に要るんだ!なぁ!」
翔太は必死になって叫んだが、恵からの返事はない。
「翔太くんだね?」
誰かに話しかけられた。
「そうですけど、誰ですか....」
翔太の目の前に立っていたのは少し歳上位のお兄さんだった。
「僕は雨先晴、宜しく」
翔太は少し困る。こんなことをしている間も恵は苦しんでいるのではないか?と不安になる。
「まぁ、そんな顔しないで、恵ちゃんは助けるかさ」
恵と言う言葉に翔太は反応する。
「もしかして恵を知っているんですか?」
「あぁ、勿論。」
「教えて下さい!今何処に要るんですか?」
晴の指差す方を見た翔太は驚いた。
「それって...スマホ?」
「そう、恵ちゃんはスマホの中って訳」
晴はテンポ良く説明し出した。
「恵ちゃんが居るのはスマホの中のひとつのファイル。」
「はぁ、で、恵は助かるんですか?」
「まぁ、大丈夫だけど……」
あまり理解していない翔太に晴は呆れている。
「翔太くん、明日の朝3時にここの近くの公園で待ち合わせね、いい?」
「はい、恵を助けられるなら行きます!」
「いい心構えだね」
「じゃあ、今日はこれで」
「さようなら?」
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家に帰った翔太は落ち着きがなかった。
頭の事は恵でいっぱいだったため、リフレッシュに小説を読み出した。
「はは、これ面白いな」
翔太は少し気が楽になったのか、明るい顔をしていた。
「よし、ありがとな、ハルマ先生。」
翔太は覚悟を決めた。そして布団へ入る。
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「おはよぉー!翔太くん」
「まだ3時なので騒がないでください。」
「あれ?どうしたのー?元気ないねー?」
晴は不思議そうに翔太の目を見つめるが、翔太の目は死んでいる。
「あんたが元気すぎなんだろうが……ふぁぁ」
朝は苦手な翔太にとってはキツい時間帯だ。
それでも恵を助けたいと言う一心が、翔太の気力に繋がっているのだ。
「じゃあ、翔太くんこれ見て?」
翔太のスマホに情報共有で何かが送られてくる。
「なんですか?これ」
「昨日恵ちゃんのファイルをダウンロードしておいたの、って言っても分からないだろうけど……」
「って事はこれがあれば恵を助けられるんですね、」
「分かっちゃうの?……」
詳しく説明しようとしていた晴はある意味期待を裏切られた。
「これを開いてみて」
「はい、開けました。」
言われた事だけをやっているのに翔太はなんだが難しい顔をしている。
すると突然スマホが光出した。
「眩し、何だこれ」
あまりの眩しさに翔太が瞬きをした時だった。
目の前に広がる見知らぬ世界。
「どこなんですか、ここ」
「ここはファイルの中、見た目は普通の街だけど、ここにはどんなデータでも入っている。」
「どんなデータでも……」
あまりのスケールのデカさに翔太は唾を飲む。
「で、その中に恵ちゃんは取り込まれたわけ、着いてこれてる?」
「何者なんですか?あなたは」
翔太は少し困惑している。
何故この男が恵や自分を知っているのか、
何故こんな所を知っているのか、昨日から気になっていたが、今改めて気になっていた。
「ん?僕?僕はそうだな〜まぁ、救世主かな?」
「ふざけないでください!」
真面目に聞いた翔太を揶揄うように晴はちょける。
「ごめんね、僕はまぁ、君たちで言う未来人かな」
「未来人?!ふざけてる?」
「いやいや、これほんと。」
眉間に皺を寄せて本気顔を披露する晴。
「未来と行っても2091年から来たからまぁ最近だね」
「いや、70年は最近??」
70年先から来たと暴露する晴。
「70年前、つまり今、1人の女子高生が行方不明になる。原因はウイルスによるファイルへ監禁。
70年後の4月5日、ファイルが解凍され、中から出てきたのは70年前に行方不明になった女子高生だった。」
「それって……」
「うん、そうだよ、恵ちゃんだ。そして君、日浦翔太は恵ちゃんが居なくなったショックで自殺。これが僕のいた時代の話だ。どう?納得いった?」
あまりにも衝撃的な話だ。翔太は受け入れるのに時間がかかる。
「そうですか……」
翔太は暗い顔をして俯く。
「まぁ、大丈夫。だってこの救世主晴さんが来たからね、」
晴はドヤ顔をかましている。
「恵ちゃんからは君の事頼まれてたの」
「恵が?俺のことを?」
「あぁ、絶対に死なないで欲しい、どうか私ともう一度あって欲しいと」
翔太の顔は涙でぐちょぐちょだ。情けない顔を堂々と晒す精神はMに限りなく近い。
「まぁ、そんなに泣かないで、助けに行くんでしょ?」
「は、はい。」
「よし気合い入れた!行くよ~」
二人は町の方へと進んでいく。確信は無いがそこに恵が居ると信じて。
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しばらく歩くき、二人は足を止める。
そこには日本でも名高い東京タワーに良く似た建物が建っていた。
「いや、懐かしい!東京タワーとか子供の頃に撤去去れてたからな~」
「え?!70年後って東京タワーに無いの?!」
翔太は驚いた。自分がよく知る建物は無くなっていると言うジェネレーションギャップが激しい。
「さてと、翔太くん、ここだと思う。間違ってたらごめん」
「間違ったらごめんじゃすまないよ...大丈夫かな~?」
晴の言葉に翔太は不安を隠しきれないでいた。
中に入ってしまえば晴の雰囲気は変わった。
「翔太、気を付けろ。このタワーには結構な数のウイルスが居る。」
「はい、分かりました。」
一階からエレベーターで最上階に行く経路なのだが、エレベーターの前はウイルスがたくさんいた。
「あれがウイルスなのか?」
「うん、人形だけどウイルスだね。ちょっと待ってて」
「え?」
待てと言う指示に戸惑う翔太、だがその意味直ぐに分かったようだ。
「これでどうよっ!!」
何処からか銃を取り出した晴はウイルスに向かって銃弾を一斉に撃ち始めた。
「HEY!HEY!HEY!乗ってる?」
ドドドと言わんばかりに地面が振動している
銃を持った晴の姿はまるで獣。両手に銃を構えている銃で獲物を逃さない。
「グァァァァ」
「ギャァァァ」
程なくして一階のウイルのス殲滅完が了した。
「あの?晴さん?」
「ああ、翔太くん、終わったよ。」
「さっきの銃はなんですか?」
晴が手に持っていた銃はいつの間にか消えていた。
「さっきのはね、銃の情報このファイルから取り出したんだ。」
「ここに来たとき情報は何でも有るって言ったでしょ?」
「つまり、情報を取れば何てもできるって事?」
「そゆこと、例えばかめ○め波だって撃てるし、バ○スもできるよ」
何処かで聞いたことのある名前を出す晴の説明に翔太は納得していた。
「って事はスタープ○チナもだせるのか!」
「そんなことしてる暇ないよ恵ちゃんを助けるんでしょ。」
「はい、行きましょう」
我に変える翔太に呆れる晴。
二人はどんどん上へと上がっていく。
最上階へ着くとカーテン付きのベットが置かれていた。
翔太は思いきってカーテンを開く。
「恵っ!大丈夫か?」
そこで眠っていたのは恵だった。
恵の方へと顔を近づけると、急に目が開き、翔太は吹き飛ばされた。
「がはっ!何を……」
「悪いな小娘の体は貰った。ついでにこいつも気絶させておいた。」
晴は地面に倒れていた。残っているのは翔太と謎の人物だけだ。
「話をしよう、日浦翔太。」
「私はウイルス型人工知能だ。」
「私が作られたのは今から1年前、この体の父親に作られたのだ。」
「そんな、恵のお父さんが?なんで?」
翔太は人工知能に戸惑う。
「まぁ、お前が知るようなことではない。そろそろ時間だ。」
「死ね。」
ナイフを取り出し翔太へと襲ってくる。
するとナイフは翔太の腹の3cm前で止まる
「なんだ?動けない……」
「残念だったな人工知能さんよぉ!お前はそこから1歩も動けやしない、1歩もだ!」
人工知能は動こうとしたが、翔太の予想通り動けなかった。
「何をした?!」
「ここには色んなデータがあるんだ、じゃあウイルス除去のデータがあってもおかしくは無いよな?」
「あと1000年出直して来い。まぁ、あと10秒で消えるけど。」
「クソォォォォ、ウギャァァァ」
人工知能は悲鳴を上げながら消えていった。
恵の体はその場で倒れる。
「ん……翔くん?」
「恵、大丈夫か?!」
「うん大丈夫。ねぇ、翔くん指切り覚えてる?」
「え、あ、うん。それがどうしたの?」
「もう一度しよ?ね?」
「指切った。」
2人が指切りをする中タワー崩れていった。
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「続きまして、新人賞大賞。週間本屋ランキング1位の本『再開〜またいつか〜』です。」
「この本私も買いました。」
テレビで本の紹介番組がやっている。
「あ、もしもし?恵?」
「もしもし?翔太、本売れてるね!」
「まぁね、これもみんなのおかげだよ。恵はお父さんの件大丈夫だっのか?」
「あ、うん。上の圧力で作らさせられた物だったから責任は上に行ったみたい。」
「晴さんも無事に帰ったみたいだし。」
「先生〜時間です。」
「あ、そろそろ行かなきゃ、じゃあまた。」
翔太は電話を切り、扉を開ける。
「これからインタビューがあるのでしっかりしてくださいね、白ノ先生。」
「へーい」
翔太はダルそうに返事をする。
「まぁ、たまには頑張るか〜!!」