08 魔物召喚!!
八話 魔物召喚!!
先日手に入れた特殊スキル【魔物召喚】はとても有意義なもので、私はそれを今日も使用してタワシ型魔物たちを多数召喚。
「さぁ! 今日も頑張るよーー!!」
召喚した場所は宿屋の浴場。
宿屋の主人が最近腰を痛めたため屈んでやる作業がかなり困難になったため、それを知った私は普段お世話になっていたことから作業時間のかなり長くて腰にも負担のかかる浴場掃除をかってでたのだ。
するとどうだろう……感動した宿屋の主人は私が浴場掃除をしている期間、宿の宿泊費を免除してくれると言ってきたのだ!!
私は石鹸をパンツの中に入れて複数パンパン☆
10個ほどに増やした石鹸を浴場全体に投げ、その後にホースを使って全体的に水を撒き散らす。
そしてーー……
「じゃあみんな! やっちゃって!!」
私はタワシ型魔物たちに向かって合図。
『ピギャアア!!』
『ピーギャアアア!!!』
『ピッギャアアア!!』
タワシ型魔物たちが一斉に石鹸に向かって突撃。
体全体を石鹸の泡で纏わせて浴場全体を縦横無尽に駆け回る。
『ピギャアアーーー!!』
『ピギャギャギャーー!!』
どうやら魔物たちも楽しんでいる模様。
石鹸で滑りが良くなっているため普段よりも素早く行動できるのが嬉しいらしい。
私はただその様子を眺めながらたまに水を撒くくらい。
私自身楽ができるし魔物たちも楽しそう……腰を痛めた宿屋の主人も助かるしでまさにウィンウィンウィン☆の関係だ。
そしてそんな生活を始めて4日目くらいかな……ここで事件が起こったのだ。
◆◇◆◇
今日も今日とて私が魔物たちと浴場掃除に勤しんでいる時だった。
ガッシャーーーーン!!!
宿屋の受付所の方から大きな音が鳴り響く。
私は誰かがお皿を盛大に落としてしまったくらいのものだと思ってその時はあまり気にしていなかったのだが……。
「邪魔するぜぇーー」
「ーー……?」
ガラガラと浴場の引き戸が開かれ汚い格好をしたおじさんたちが3人、中へと入ってくる。
「……っち、なんだよ掃除中かよ。 良い女がいると思ったのによう!!」
「あぁ、唯一いるのもガキしかいねぇし……てかなんで雑魚の魔物がここにいるんだ?」
「どうする? 何人か連れて行かないと親分に怒られるの俺たちだぜ?」
おじさんたちは頭を掻きながら顔を合わせて話し合いを開始。
「あ……あのぉ、今掃除中……ていうかここ女湯なんですけどぉ……」
私は少し遜りながらおじさんたちに声をかける。
すると……
「うるせえなガキが!! んなこと分かってるよ!!!」
「ーー……!?」
いきなり恫喝。
私はいきなりのことで驚いて体をビクつかせる。
「え……じゃあなんで?」
「攫いに決まってんだろうが!! 親分が女を求めてるんだよ!!!」
「あんま俺たち山賊を甘く見んじゃねーぞ!!!」
ーー……!!
この人たち山賊なんだ!!
山賊の恐ろしさは身をもって体験している。
村が戦争に巻き込まれて壊滅すた時、真っ先に来たのは山賊だった。
金目のものを奪えるだけ奪い、私より年上のお姉さんっぽい人たちも何人か連れて行かれていた。
泣き叫んで逃げようとしてたら殴られて強制的に黙らされてたりしてたからあの衝撃的な光景はそう簡単には忘れられることはできない。
私は恐怖から一歩後ろへと引き下がる。
「おいみろよ、このガキ俺たちにビビって体震わせてるぞ!」
「ギャハハ!! たまにはこういうガキでも親分喜ぶかもな! よし、今日はこいつを親分のところに……」
やばい……なんとかしなきゃ!!
こんな人たちに捕まったら何されるかわからない……それに平凡な生活を送るっていう私の夢が余計に遠くなっちゃうような気がする。
そんなの嫌!!!
私は体を震わせながらも手を腰の方へ。
最近全く使っていなかった短剣を手に持ち山賊たちに向かって構える。
「アッハハ!! こいつ俺たちとやる気だぜ!!」
「ガキのくせに威勢がいいじゃねえか! そういう強気なところをズタズタにするのが楽しいんだよな!!」
「よし、じゃあ俺が先に相手をしてやろう」
1人の山賊がニヤついて手をポキポキ鳴らしながら一歩前へ。
手のひらを開いたり閉じたり……ワキワキさせながら私の方へ少しずつ近づいてきた。
ーー……大丈夫、今回の相手はタワシ型魔物の時よりも遥かに大きい。 剣を向ければ絶対当たる!!
私は心にそう何度も言い聞かせ、短剣を強く握りしめて叫びながら突進。
しかし……。
「ギャハハハ!! 弱えーー!!!」
私の短剣はいとも容易く弾かれ、腹部に強烈な蹴りを入れられる。
「ーー……っきゃあああああ!!!」
私はそのまま後方へと飛ばされ壁に激突。
なかなかに痛い蹴りだったのでお腹を両手で押さえ込みながらその場でしゃがみこむ。
「おいおいあまり傷物にするなよ?」
「そうだぞ、それをしていいのは親分だけなんだから」
「分かってるって。 じゃあこいつを縛り上げて早速親分のところに……」
山賊が縄を取り出して私に近づいてくる。
ダメだ……逃げたくてもお腹に力が入らないから逃げることも出来ない。
戦おうにもやっぱり私はレベル1。 もうどうすることも出来ないのかな……。
山賊の手が私の方へとゆっくりと伸びる。
もうダメだと確信し、私はゆっくりと目を閉じた……その時だった。
『ピギャアアア!!!』
「いってええええ!!!!」
耳に聞こえてきたのはタワシ型魔物と山賊の声。
恐る恐る目を開けるとタワシ型魔物たちが山賊たちの腕や足に噛み付いている。
「ーー……え?」
『ピギャアアアア!!!』
『ピッギャアア!!』
「くっそこの雑魚どもが!! 魔物の中でも底辺級の雑魚さの分際で!!!」
「離れろよ!!! このやろう!!!」
山賊たちは必死にタワシ型魔物たちを振り払う。
しかしタワシ型魔物たちも負けじと飛ばされてもすぐに体勢を立て直して再び山賊へと食らいつく。
「くっ……! 数が多すぎる! こんな量を一度に相手にしたのは初めてだ!!」
「あぁ! ていうかこいつら他のタワシ型よりも強くないか!?」
「些細なダメージだが地味にくるな。 こんな状態でガキに暴れられても面倒だ! おい、あのガキに睡眠の矢を当てろ!」
1人の山賊がタワシ型魔物に噛まれながらも弓を引き、先に何かが塗られた矢を私に向ける。
「安心しろ、眠りから覚めるまで痛みは感じない!!」
「ーー……!!!」
これが当たるともう私に未来はない……こんなところで諦めてたまるもんかぁ!!!
「もっとおいで!! みんな!!!」
私は両手を前にかざしてスキル【魔物召喚】を再び発動。
先ほどとよりも倍以上のタワシ型魔物を召喚する。
「みんな、私を守ってえええええ!!!」
『ピギャアアアア!!!』
『ピギャギャギャ!!』
『ピギャギャアアアア!!!』
1匹が矢に噛り付いて矢を破壊。
もう1匹は弓の弦に齧り付き弦を破壊。
その他のタワシ型魔物たちは一斉に山賊たちに飛びかかる。
「痛ええ!!! 痛ええええ!!!」
「おい、もう俺体力ないぞ!!」
「俺もだ!! くそ、ここは退散するぞ!!!」
山賊たちは浴場の出口に体を向けて一斉に走り出す。
しかし……
『『『『ピッギャアアアアア』』』』
「「「ーー……!!!」」」
山賊たちの向かう先にタワシ型魔物たちが石鹸の滑りを活かしながら素早く先回り。
互いに身を引っ付けあって壁を形成……彼らの出口を塞ぐ。
「な……なんなんだ!? たかが雑魚魔物たちなのに!!」
『『『ピギャアアアアア!!!』』』
壁がゆっくりと傾き山賊たちの方へ倒れていく。
「や……やめろおおお!!!」
「うわああああああ!!!」
「ぎゃああああああ!!!」
ドスンッ
タワシ型魔物たちの壁が山賊たちを押しつぶす。
これにより潰された山賊たちは沈黙。 皆そろって気絶してしまったようだった。
それと同時に私の目の前にステータス画面が開かれる。
●レベルの離れた敵を倒しました。 経験値ボーナスが入ります。
「ーー……え、やった! もしかして私レベル上がったの!?」
私はドキドキしながら表示文を読み進めていく。
●タワッシー
【レベル】10
【数値】攻:30 防:23 魔攻:0 魔防:25
【スキル】集団能力強化・合体
「ーー……え、魔物の方?」
それに名前、タワッシーって言うんだ。
私はタワッシーにもスキルというものがあることに気づき、その詳細を調べてみる。
●【集団能力強化】複数の同族で行動する場合、全体の数値が上昇。
●【合体】1つの個になる場合、個々の数値を総合した強さになる。
「ーー……私は?」
少しくらいはレベル上がってても……
●クロエ
【レベル】1
【装備】スウィートドレス・奇跡のパンツ
【数値】攻:1 防:5 魔攻:0 魔防:2
【スキル】奇跡・自動回復
「うわあああああああああん!!!」
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