02 奇跡のパンツ?
二話 奇跡のパンツ?
「え……どっちって?」
『言葉の通りだよ。 お嬢さん、君が落としたパンツはこの薄汚れた白いパンツとこっちの奇跡のパンツ……さぁどっち?』
白タイツのおじさんが両手に握ったパンツを私に見せる。
「奇跡のパンツ……ってよく分からないけど、私が落としたのはそっちの薄汚れた方だよ」
私は向かって左側の自分のパンツを指差す。
するとーー……
『うーーん!! 正解! お嬢さんお名前は!?』
「クロエ……ですけど」
『クロエちゃん! 君は正直者だ!! 正直者のクロエちゃんには特別にこっちの奇跡のパンツをあげよう!!』
白タイツの大精霊が私の前まで近づいてきて【奇跡のパンツ】を私に差し出す。
「え……でも私のパンツはそっちの……」
『ダメ! これは僕がもらうからダメ!!』
「えぇえええ!?!?」
白タイツの大精霊は強引に奇跡のパンツを私の手に握らせて再び泉の上に戻る。
「えっと……この奇跡のパンツってなにが奇跡なの?」
私は受け取ったパンツをマジマジと見つめる。
見た感じは至って普通のパンツみたいだけど……。
『何か奇跡なことが起きるかもよーってだけのパンツだよ! 気にしたらだめ! と言ってももう奇跡、起こってるんだけどね!』
白タイツの大精霊が眩しい笑みを私に向ける。
「ーー……もう起こってる?」
『そう! そのパンツを君が履くこと……それこそがもう奇跡なのさ!!!』
「ーー……は?」
そう言うと白タイツの大精霊の体がピカッと眩しく光り、一瞬でどこかへと消えてしまう。
「な……何だったんだろう」
私は疑問に思いながらもスカートの中がスースーするので、とりあえずその【奇跡のパンツ】を履くことに。
ーー……うん、至って普通の履き心地。
これといって奇跡っぽいことは起きてないけど。
まぁ新しいパンツになったってことはちょっと嬉しいよね。
この場所にとどまっているとまだあの変な大精霊に絡まれるかもしれないと予想した私は洞窟を出る。
するとーー……
「ーー……うわ」
洞窟を出てまず私の視界に広がっていたのは戦争で疲弊した兵士たち。
至る所で血を流したりボロボロになりながら座り込んでいる。
「ちょっ……大丈夫ですか!?」
駆け寄って話しかけるもあまり元気がなさそうだ。
「ちょっと待ってて、洞窟の中に泉があるから……私水を汲んできます!」
そう兵士に伝えた私は体をくるりと洞窟の方へ向ける。
その時だった。
ガシッ
「ーー……!!」
突然兵士が私の足を掴む。
「ーー……あ、あぁ……」
何やらボソボソと語りかけている模様ーー……。
私は耳を近づけて声を聞くことにする。
「だい……じょうぶ。 ありが……とう」
兵士が力なく私に微笑む。
「え、いやでも!!」
「こ……これを……」
兵士は力なく腕を動かして自身の身につけていたポシェットのようなものに手を突っ込む。
「?」
そしてなにかを握りしめて私に差し出す。
「え」
それは腕輪と透明な袋に包まれたクッキー。
「ここに……いるってことは……君は、孤児……だろ。 すまないな……俺たちが、戦争をしているせいで……」
兵士はそのクッキーと腕輪を私の手に力なく置く。
「え……食べないの? それにこの腕輪は?」
「俺はもういい……。 そしてこの腕輪は自分のステータスを見れるようになるもの。 戦争が落ち着いて国の行き来が自由になった時……この腕輪で自分のレベルを確認して、ギルドで自分にあったクエストを受注しなさい」
「ギルド?」
私が聞き返すと兵士はニコリと微笑む。
一体どういうことだろう。
パパも昔は冒険者だったって言ってたけど、ギルドなんて言葉聞いたこともない。
私が考えていると遠くの方から男性の声が。
「おーい、あっちに動けそうにない奴らがぎょうさんおるでさー!!」
「ーー……?」
声のした方に視線を向けるとさっきまで笑っていた兵士の目つきが一気に変わる。
「君……ここは時期危険になる。 だから……すぐに、お逃げなさい」
「え、でも兵士さんたちは?」
「は……やく!!!」
その目から兵士の本気度が伝わった私は兵士に一礼、その後声のした方角とは逆の方角……森へと繋がっているのであろう茂みの方へと駆け出した。
ーー……のだが。
「あーー!! あっちに女が逃げていくでぇ!!」
タイミングの悪いことに見つかってしまう。
「捕まえろ! そしたら今夜はパーティじゃ!!」
「ーー……!!!」
あれはおそらく山賊。 捕まったらなにをされるかわからない。
全力で走るもワンピースの裾が長くて邪魔。
なので私は手に持っていたクッキーをパンツの中へ……貰った腕輪を腕に通す。
すると目の前に四角い画面が表示される。
●クロエ
【レベル】1
【装備】奇跡のパンツ
【数値】攻:1 防:5 魔攻:0 魔防:2
【スキル】奇跡
ーー……これが兵士の言ってたステータスってやつか。
そしてスキルのところに【奇跡】って書いてる。
じゃあ今この現状……私がクッキーをもらったりしたことや山賊から逃がしてくれたことも奇跡になるのかな。
「ーー……ってのんびり考えてる場合じゃなかった」
後ろを振り返るとまだ山賊っぽい男が追いかけてきている。
「よーし! 絶対逃げ切ってやるんだからーー!!!」
私はより一層の気合を入れ、道なき山の中を突き進んでいった。
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