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いわゆる普通の家政婦ちゃん!  作者: 久城のカワウソ
承の章
53/60

後片付けは、お任せください!⑤

 セラたちが風呂に入っている間、スケヒトは二階にある自室へと戻っていた。

 セラを泊めているため、この二日間は教科書を取るなどの用事がない限り入ってはいない。しかもすぐに出るようにしていたから、部屋に戻ったのは二日ぶりと言ってもいいだろう。


「……いい匂いがする」


 久しぶりに部屋に入ると、セラの匂いが鼻をくすぐった。シャンプーだろうか、清潔感のある甘い匂いがする。


「って、俺は何を考えているんだ」


 これではセラがいないうちにセラの部屋に忍び込んでいるみたいではないか。別にそんなことをしに来たのではない。


「ドッペルくん、スマホ持って帰って来てくれてるといいんだけど」


 スケヒトは学習机の上に置いてあった自分の鞄の中を探る。ちなみにドッペルくんとは、スケヒトの代わりになって授業に参加していたドッペルゲンガーのことだ。


「おっ、あったあった」


 鞄の底からスマホを取り出す。

 これで作戦を実行できるようになった。後はセバスチャンと交渉するだけだ。


「ちなみに……」


 セバスチャンと交渉しに戻る前に、ノートがどうなっているのか見ておきたい。あの分身は真面目に授業を受けてくれたのだろうか。


「ん?」


 ノートを開くと、ページとページの間から二つ折りにされたコピー用紙サイズの紙が落ちてきた。床に落ちた紙を拾い上げ、開いてみる。それは数学の小テストであった。


「おっ、満点!」


 数学の小テストは授業の最後に行われ、その日の理解度を図るものだ。そのテストが満点となると、きっとノートも真面目に取っていることだろう。


「……あれ?」


 ノートの隅々まで探しても、新しく書かれた授業のメモらしきものは見当たらない。小テストが挟まっていたところには、今日の日付があるのみだ。


「おいマジか……」


 もう一度、小テストを見直す。答えは完璧、途中計算も丁寧に書かれている。

 だがしかし、一点だけおかしいところがあった。筆算をしなければ解けないような問題ばかりなのに、どこにも筆算がないのだ。


「つまりは、そういうことか」


 ドッペルくんの頭脳は電脳並みだったということだ。

 性格と言い、頭のよさと言い、分身ならもっとスペックを近づけてほしかった。


「はぁー」


 いまさらどうこう言っても仕方がない。真っ白なノートをぱたりと閉じて立ち上がる。


「いまはセバスチャンと交渉するのが先か……」


 スマホを持って来てくれたことをドッペルくんに感謝して、スケヒトは自室を出た。


「――ゲフッ」


 一階のリビングに戻ると、入り口でセバスチャンが待ち構えていた。ジト目でこちらを見つめてきている。


「別に、やましい目的があって部屋に行ってたわけじゃないぞ!」


「ゲフッ(疑い)」


「これを取りに行ってたんだ」


 そう言って、セバスチャンにスマホを見せる。


「頼みがあるんだ。俺にお前の電話番号を教えてくれ!」


「ゲフ?」


 意味が分からないと言いたそうに、セバスチャンは首をかしげた。きっと腹の中では、犬が携帯を持っているわけないだろとでも思っているはずだ。


「お前がスマホに変身したときの電話番号だよ」


 犬が携帯を持っているとは最初から考えていない。


「少しでもセラとセバスチャンがいた記録を残して置きたくてさ」


 管理局の記憶操作によってセラたちのことを忘れてしまったとしても、一緒にいた

記録があれば思い出すことができるかもしれない。


「セラの電話番号でもいいんだけどさ、あれプライベート用じゃないみたいだし」


 セラが携帯から出したのは、セバスチャンと輪廻刀りんねとうのみ。趣味グッズは他のところから出していた。


「どうせ管理局から支給されたやつなんだろ?」


「ゲフッ(肯定)」


 管理局からの支給携帯となれば、番号を変えられる恐れがある。それにもしかしたら、処分によってはセラが携帯を没収されるかもしれない。


「だからさ、番号教えてくれないかな」


「……」


 セバスチャンはしばし考える。


「頼む!」


「……」


「明日の朝はホッケ焼いてあげるから!」


「……」


「紫カレーだって、俺とセラだけで食べるからさ!」


「ゲフッ(しょうがない)」


 紫カレーと聞いた途端、セバスチャンがスマホに変身した。空中から落ちてきたセバスチャンをキャッチして、スケヒトは言う。


「紫カレー、そんなに食べたくなかったのか……」


 それをこれから二人で食べねばならないと思うと、とても先が思いやられた。

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