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いわゆる普通の家政婦ちゃん!  作者: 久城のカワウソ
承の章
48/60

エスケープ、しちゃいますか?⑥

 後ろの方はいまだに白煙に包まれている。スクワット隊員たちはいまごろ、方向感覚を失って混乱しているだろう。セラの出す小道具はいつもえげつない。


「脱出成功ですね! まさかあんなに煙が出るなんて、あはははっ!」


 斜め前を走るセラが笑いながら言った。

 煙玉の威力にも驚いたが、それよりもガスマスクをつけた状態で走りながら話せるセラの方が驚きだ。


「いつまでガスマスクつけてんだよ」


 スケヒトと残火人のこりびとは、煙の中から出た直後に外している。

 重いし暑苦しいし、これをつけたまま走るなど考えられない。そんなことを現実でできる者など、セラくらいだろう。


「セーラー服にガスマスク、私は萌えますけどねぇ」


「はぁ?」


「セーラー服と日本刀もいいです! だからいまは、輪廻刀りんねとうを持っている残火人なじみさんに萌えてたりもするんですけど」


「知らねえよ!」


 まとめると、セラは性癖ゆえにガスマスクを外さないらしい。萌えとかどうとかはイマイチよく分からないが、そう言えばこういうやつだったと思い出す。いかなる状況であってもセラは変わらない。


「おいっ、……ちょっと」


「ん、どうした?」


 声がして後ろを見ると、残火人が走るのをやめていた。膝に手をついて、肩で息をしている。


現世こっちの私は、どうも体力がないらしい」


 あごに垂れた汗を拭いながら、残火人は言う。

 なじみは決して運動が苦手と言うわけではない。逆に得意な方だ。そんななじみがへばったとなると、原因は今日の疲労だろう。黒い女を出し、黒刀くろがたなで戦い、その後結構な距離を歩いたのだ。体にかかった負担は相当なものに違いない。


「私は後から行く。だからお前たちは先に……」


「行くわけないだろ! とりあえず輪廻刀を置け」


 輪廻刀はずっしりとした重さがある。持っているだけで腕が筋肉痛になるくらい重い。そんなものを持って走っていたら、疲れるのは当然だ。成り行きとは言え、いままで持たせてしまったことを申し訳なく思う。


「悪かったな、持たせてしまって。それは俺が持つから、あと少しだけ頑張ってくれ」


 そう言って残火人から輪廻刀を受け取る。するとその様子を見ていたセラが駆け寄ってきた。


「これは失礼しました。萌えとか言ってる前に、私が受け取っておくべきでしたね」


 すみませんと言って、ぺこりと頭を下げる。


「輪廻刀は私が持ちますから、スケヒトさんは残火人なじみさんのサポートをお願いします」


「分かった」


 セラに輪廻刀を渡して残火人に近寄る。

 サポートと言っても、できることはただ一つ。柄ではないがやるしかないだろう。


「家までもうちょっと、あとひと踏ん張りだ」


「はぁっ……しょうが、ない。これも……妹に会うため」


 ふうーっと息を吐いて、残火人がかがめていた腰をもとに戻す。依然として肩で息をしているが、先程よりは呼吸が整ってきている。


「手、よこせよ」


「ん?」


 照れながら、それでも頑張って手を差し出すスケヒト。そんなスケヒトを見て、残火人は目をぱちくりさせた。


「ほら、早く。追手が来ちまうぞ」


 残火人から目をそらし、赤くなった頬をかいてスケヒトは言う。

 恥ずかしいから、早く手を取ってほしい。


「ふっ、強がりよって」


「わ、笑うな!」


 このままでは恥ずかし過ぎて死んでしまいそうだ。まさに恥ずか死にそうな状況。


「そこのお二人さん! イチャイチャしてないで早く行きますよ!」


 輪廻刀をぶんぶん振り回しながらセラが叫ぶ。いつの間にか、電信柱二本分ほど先に行ったところまで進んでいた。


「いっ、イチャイチャなんて!」


「もう! 先に行ってますからね!」


「ちょっと、待ってよ」


 否定するスケヒトを置いて、セラは再び駆けだす。

 より一層手を繋ぎづらくなってしまった。残火人に差し出したはずの手は、セラの背中を追ったまま動かない。


「ほら、私たちも早く行くぞ」


 そう言って、スケヒトが伸ばしている手を残火人が取った。しっかりと握ってスケヒトを引っ張る。


「疲れてたんじゃ……」


「そんなの気合でどうにかなる!」


「顔もまだ赤いし、そんなに無理しなくても」


「赤くなってなどないわ!」


 このときどうして残火人が怒ったのか、スケヒトには分からなかった。

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