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いわゆる普通の家政婦ちゃん!  作者: 久城のカワウソ
承の章
47/60

エスケープ、しちゃいますか?⑤

 おりゃぁ! と言いながら、セラが残火人のこりびとを押さえていた隊員を蹴り倒す。

 輪廻刀りんねとうを持たないセラは、どうも足癖が悪いみたいだ。


「スケヒトさん、私の携帯もらえますか?」


「お、おう」


 セラにいきなり話しかけられ、見惚みとれていたスケヒトは驚いてしまう。

 短時間のうちに三名のスクワット隊員を倒す様子は、まるで映画でも観ているようだった。


「管理局に電話さえすれば、一件落着です!」


 セラはそう言って、携帯電話をいじる。

 四方八方を取り囲まれ、いつ撃たれるか分からないこの状況。どうしてこんなにも余裕なのだろうか。


「ゲフッ」


 スケヒトが心配そうにそわそわしていると、セバスチャンが鳴いた。

 見ると、いつもの子犬形態になってこちらに歩いてきている。


「ああそっか、そう言えばお前がいたな」


「ゲフッ」


 得意げに吠える。

 セバスチャンがいれば、狙撃される心配はない。なんせこの犬はバリアを張れるのだから。スクワットの銃がバリアに敵わないことは、劇場での戦闘のときに証明済みだ。


「本当に手荒い真似をしてくれる。乙女には優しくしろと教えられなかったのか」


 残火人は輪廻刀を持ち、不満をこぼす。


「にしても、お前の用心棒も容赦ないな」


 苦笑いをする残火人の目線の先には、地面でのびている二名の隊員がいた。

 助けてもらっておいて何だが、確かにセラは容赦ない。脳天にかかと落としを食らった彼は大丈夫だろうか。


「スケヒトさん……どうしましょう」


「ん?」


 噂をすれば、携帯を操作していたセラが話しかけてきた。一件落着と言っていた割に顔が青ざめている。


「バッテリーが、たったいま切れました」


「おい、マジか……」


「暴走でもしない限り、完全に沈黙です」


 こんなときにふざけないでいただきたい。


「じゃあどうするんだ? セバスチャンも腹がへっていて、そうは持たないぞ!」


 セバスチャンのバリアがなくなれば、絶体絶命だ。その前に何とか、この状況を打破しないと。


「方法は一つ、逃げるしかありません」


「逃げるってどこにさ」


「そりゃあ、千代ちよちゃんの待つスケヒトさんの家ですよ」


「でも、それは……」


 確かに逃げるところは家しかない。家に帰れば充電器もあるし、セバスチャンのご飯だってある。携帯がフル充電されるまで、安全に立てこもることができるだろう。だがしかし、


「千代が危険になってしまうんじゃないか?」


 家に帰る前に先回りされたら、人質にとられる可能性がある。もし仮にそうなったら、どんな要求をされたとしても従ってしまうに違いない。


「大丈夫ですよ。いまこの場でスケヒトさんの家を知っているのは、私と残火人なじみさん、セバスチャンの三人だけですから」


 そう言いながら、セラは手に持った白い球を空中に上下させる。


「それに、彼らを巻く方法もあります。いやぁ、無駄だと思っていた買い物がこんな形で役に立つとは」


 はいどうぞと言って、ガスマスクらしきものを差し出してきた。

 毎回思うのだが、一体どこから取り出しているのだろうか。


「スケヒトさんと残火人なじみさんの分です。セバスチャンはポケットにでも入れておけばいいでしょう」


「何をするつもりなんだ?」


「これを使うのですよ!」


 じゃじゃーん! と言って手に持った白い球を見せてきた。


「深夜のテレビショッピングを見てつい買ってしまった、『どろろん! 忍者の煙玉』です!」


「花火の名前みたいだな……」


 コンビニとかで夏によく売っている。テレビショッピングでそんなものを売るとは、挑戦的な会社もあったものだ。


「地面に投げるだけでもの凄い煙幕を張れるってことで買ったんですけど、なかなか使う機会がなくて困ってたんですよね」


「そりゃそうだ」


 頻繁に使う機会があるわけがない。いや、あってたまるか。


「アニメとかでよくある撤退シーンを、まさかいまできるとは! 感激です!」


 腕で両目を覆い、泣く真似をするセラ。

 目の前でこうも振る舞われては、敵ながらスクワット隊員がかわいそうに思えてくる。


「おい、何だこれは」


 興奮しているセラを横目に、残火人にガスマスクを手渡す。


「いまから煙幕を張るから、そのためのものだ」


「よくこんなものを持っていたな、お前の用心棒」


「うちの家政婦は何でも持ってるぞ」


 いらない物ばかりだけどな、とは決して言わない。いらない物のおかげで助けられているのも事実だ。


「ゲフッ」


 セバスチャンが空中でスマホに変身する。スケヒトは落ちてきたそれをキャッチして、ポケットに入れた。


「準備はよろしいですか?」


 張りきった様子でセラが言う。

 白いセーラー服にガスマスク。とてつもなく見た目が怪しい。それを言ってしまえば、自分もそうなのだが。


「ではいきますよ! そりゃ!」


 かけ声とともに、ガスマスクをつけた怪しい三人組が煙に包まれた。

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