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いわゆる普通の家政婦ちゃん!  作者: 久城のカワウソ
承の章
34/60

どうします、やっちゃいます?④

「うわっ!」


 突如、ガラス張りの天井が一気に割れた。凶器と化したガラスの雨がスケヒトとセバスチャンに降り注ぐ。


「ゲフッ!」


 セバスチャンが一回吠えて、スケヒトたちの周りに透明なバリアが張られた。ガラスがドームの形を型取って二人を避けるように落ちていく。


「……!」


 ガラスと一緒に落ちてきた――降下してきたものを見て、スケヒトは焦った。


「もう来たのかよ……」


 上から降りてくるのは、ヘルメットとゴーグルを着けた迷彩色の集団。映画などに登場している特殊部隊に似ていた。


「ガルルルル」


 特殊部隊に囲まれ、セバスチャンは牙をむいて威嚇いかくする。


「動くな!」


 銃のようなものをこちらに向け、隊員の一人がそう叫ぶ。

 どうしよう。完全に包囲されてしまった。


「我々は管理局所属、残火人のこりびと強制浄化部隊――『スクワット』だ!」


「何の略なのか全く分からないネーミングだな!」


「黙れ! 黙って手を頭の後ろで組め!」


 ガチャガチャと音を立てて、銃が目標を捉える。

 四方八方から銃口に見つめられ、スケヒトはたまらずセバスチャンにしがみついた。


「ゲフッ」


 セバスチャンが小さく吠えた。しがみつかれていない方の頭がスケヒトに目で合図を送ってくる。どうやらここを強行突破するつもりらしい。その意をみ、スケヒトは無言でうなずいた。


「アウォーンッ!」


 耳をふさがずにはいられないほどの大音量で、セバスチャンは遠吠えをする。

 すると周りを取り囲んでいたスクワットの隊員たちが、見えない壁に押し退けられるようにして一斉に吹き飛んだ。


「や、やりぃ……」


「ゲフッ!」


 進路はオールフリー。隊員が吹き飛んだのを見て驚くスケヒトを背中に、セバスチャンは駆けだす。再び扉を粉砕してホール内に突入した。


「ヤバい!」


 前方の舞台を見ると、なじみもスクワットに囲まれている。分身――黒い女を出して相手を近づけまいと牽制けんせいしていた。


「急いでくれセバスチャン!」


 事態は一触即発。

 何としてでもなじみを――残火人を救わなければ。


「一斉に撃てぇぇぇ!」


 銃声が響き渡った。黒い女はなじみを抱きかかえるようにしてそれに撃たれる。そして、塵が風に吹かれてなくなるように消えていった。


「構え!」


 銃口が今度はなじみに向けられた。なじみは敵を睨みながら後ずさっている。


「――お前、跳び過ぎなんだよ」


 窮地きゅうちに陥った残火人を上空から見ながら、スケヒトは文句を言う。

 早く行かないと浄化されてしまう。急げとは言ったが、ここまで跳べとは言っていない。


「ゲフッ!」


 セバスチャンは天井を一蹴りし、なじみ目指して一気に降下する。

 下では部隊のリーダーらしき人物が手を挙げ、発砲の合図をいまにも出そうとしていた。


「頼む、間に合ってくれ!」


「――撃てぇぇぇ!」


 ホールに轟音が響いた。衝撃で劇場がきしむ。


「……ごほっ」


 煙のように舞った埃の中から咳をするのは、セバスチャンに乗ったスケヒト。

 間一髪、バリアでなじみをまもることができた。


「こりゃまた盛大にやったな……」


 視界が開けると、スクワットの隊員たちは舞台上にいなかった。座席に寄りかかったり、通路に寝ていたりと全員が吹き飛ばされている。なじみはセバスチャンの後ろで気を失っていた。


「どうすっかな」


 気絶したなじみを前に、セバスチャンから降りたスケヒトは頭を抱える。

 セバスチャンの背中になじみを上げることは難しい。体力的にもそうだが、時間がかかり過ぎる。


「ゲフッ!」


 スケヒトがどうするか迷っている間に、セバスチャンが動いた。

 二つの頭を使ってなじみとスケヒトの両方をくわえる。


「もが(おい)!」


 頭から口の中に入っているスケヒトはうまく喋れない。


「もがもがもが(聞いてんのか)!」


 唾液で体じゅうべとべと。服がしぼれるくらい濡れてしまった。


「フンッ」


 抵抗するスケヒトを鼻で笑い、セバスチャンは跳躍の準備に入る。

 このまま跳ばれたら四肢粉砕する自信がある。咥えるならせめて縦ではなく横にしてほしい。


「もがもがもがぁ(おい馬鹿やめろ)! もがっ――!」


 暴れるスケヒトは口の中でしゃぶられ、鎮圧される。レジスタンスが静かになったところで、セバスチャンは跳躍した。


「もぎゃーーっ!」


 体にかかる加速度を感じながら、着地点に風呂があることを祈った。

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