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いわゆる普通の家政婦ちゃん!  作者: 久城のカワウソ
承の章
33/60

どうします、やっちゃいます?③

 ケルベロスとなったセバスチャンの背中に乗り、なじみが待つ劇場まで急ぐ。


「は、速ええ」


 バスの屋根にしがみついている感じだ。振り落とされないかひやひやする。


「ゲフッ!」


 首根っこにしがみついていると、セバスチャンが突然吠えた。


「ん、どうした?」


 聞くと、スケヒトがしがみついている方とは逆の頭が後ろを見る。そしてもう一度、今度は何かたくらんでいるかのように吠えた。


「おい! 何を――!」


 言い切る前にセバスチャンが飛んだ。正しくは跳んだなのだが、跳躍にしては高度が高すぎる。スケヒトはたまらず絶叫する。


「うわぁぁぁぁぁぁ!」


 急上昇したと思ったら今度は急降下。お菓子箱のように小さくなった建物がだんだんと大きくなってくる。


「ば、馬鹿ぁぁぁぁぁぁ!」


 どうやらこのまま劇場に着地するらしい。

 内臓の浮遊感と迫りくる地面への恐怖からスケヒトは目をつぶった。


「……」


 衝撃がなかなか来ない。まだ着地しないのか。


「ゲフッ!」


 こんなときに何の用なのだろう。用件なら着地してからにしてくれ!


「うわっ!」


 いきなり、生温かくてべとべとしたものが顔の上を通り過ぎた。


「ゲフッ!」


 恐る恐る目を開ける。下を見ると、セバスチャンの足は地面についていた。


「よかったぁ」


 どうやら無事に着地できていたようだ。ここは劇場の前にある駐車場。

 一段落いちだんらくしてスケヒトは額を拭う。そして自分の顔面が濡れていることに気づいた。


「なんじゃこりゃあ!」


 セバスチャンを見ると、ぺっぺっと唾を吐いていた。先程のべたべたした生温かいものはセバスチャンの舌だったらしい。


「うへー」


 ポケットからハンカチを出し、顔を拭く。唾液の量が半端ではない。


「ま、ありがとよ」


 なかなか目を開けなかったから舐めて教えてくれたのだろう。一応お礼を言ってからセバスチャンの背中を降りる。


「フンッ」


 セバスチャンは鼻を鳴らし、そしてまたスマートフォンに変身した。スケヒトは煙の中から落ちてくるセバスチャンをキャッチし歩き出す。


「急いでなじみを探さなきゃ」


 戦闘員が向かっていると連絡を受けてからそんなに経っていないはずだ。管理局よりも先に見つけ出さないと、残火人のこりびとを救うことはできない。


『ゲフッ』


 スマホからそんな通知音が鳴った。見ると、何やらアプリが起動している。


「ん、広範囲索敵レーダー? ……まさか」


 やはりセラが使っていた広範囲索敵ゴーグルのレーダー版だった。

 画面には劇場と思われる建物の図面と赤い点。赤い点には天月あまつきなじみというタグが付いていた。


「ここになじみがいるのか!」


 なじみは舞台の上にいるらしい。


「……!」


 なじみの場所が分かり、スケヒトは急いで向かおうとする。しかし、その足は動かない。


「なんだ、これ」


 胸を埋め尽くすのは驚きと焦り。

 劇場の四方八方から戦闘員と表示された青い点が接近してきている。そうこうしている内に、周りを包囲されてしまった。


「なじみが、ヤバい!」


 数人が舞台へと近づいていくのを確認し、スケヒトは駆けだす。


「セバスチャン、もう一回でっかくなってくれ!」


 そう言ってスマホを前方に投げる。ボンと音がして、煙の中からケルベロスが出現した。


「管理局よりも先になじみを奪取するぞ!」


 背中によじ登りつつセバスチャンに言う。

 こうなってしまえば管理局が来る前にどうこうと言うよりも、なじみを別の場所に連れ去るしかない。


「よし! 頼む」


 準備が整ったことを伝えると、セバスチャンは一言吠えて走り出した。劇場の入り口が高速で近づいてくる。


「ん?」


 そう言えば、入り口はそんなに広くなかった。ケルベロスとなったセバスチャンでは通れるはずもない。


「一回ストップして――」


 さらにセバスチャンが加速。止まるつもりは毛の先ほどもないらしい。


「おいおいおいおい!」


 入り口までは目と鼻の先ほど。もう衝突を避けることは不可能だ。


「くっ!」


 目を閉じ衝撃に備える。

 どーおんっ! と音がしてセバスチャンが停止した。


「……ううっ」


 パラパラと入り口の残骸が頭から落ちる。うめきながら、セバスチャンに舐められる前にスケヒトは目を開けた。


「ゲフッ」


 セバスチャンがスケヒトを見る。無事を確認してくれているようだ。


「真っ白になったけど、何とか大丈夫だ」


 制服や腕がほこりのせいで白くなってしまった。きっと顔もお白いを塗ったようになっているであろう。


「フンッ」


 そう鼻を鳴らし、セバスチャンが顔を近づけてくる。


「おい、まさか!」


「……」


「俺なら大丈夫だから、気にすん――!」


 抵抗むなしく、再び顔面をべとべとにされた。

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