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仕返し小説家

作者: 波瀾万丈

わたくし、【仕返し小説家】借波倍増『かりは・ばいぞう』である。


少しばかり自己紹介をしよう。

わたくしの職業

本業は小説家である。

しかし、わたくしの小説の何がいけないのか

いまだかつて一冊も売れた事がない。


だが、知る人ぞ知る

裏の世界の小説家なのだ。おっと!

今日もまた依頼人が

来ましたよ。


ではお仕事にかかりましょうかね…。


ごめんください…


今日の客は、30代後半の

OLだ。泣きすぎたのか、目を真っ赤に腫らし、魂が抜けたかのようにわたくしの所に

やってきた。


「すみません。

もう限界です。

私死にたい。」


「いったい何があったか知らないが死ぬ前に私の小説を読んでからでも遅くない。一ヶ月待ってくれ、一ヶ月で書き上げる。私が代わって本の中で仕返しをする。私の書く本は現実に起こる。そしたら君の気持ちも変わるはずだ。一ヶ月後

読みに来てくれ。」


「はい、わかりました。信じて来月また来ます。

よろしくお願いします。」


そう。わたくしは依頼人から事情を聞き、今後の加害者の将来をわたくしが小説を書く事でその通りの運命になるのだ。


しかしその内容は依頼人の希望は聞かない。

なぜなら当事者はすぐに

殺してしまうからだ。


だから先の事は小説を読んで満足して頂く。

そういうことだ。

「さて、お客さん

何があって誰を主役に作りたいのか、お聞かせ願いますか?」


依頼人は悔し涙を堪えて

話し始めた。


「私は25歳の時から働いてきた職場がありました。

最初は何気なく入社しました。

でも5年、10年と働くうちに事に仕事に対する情熱、やりがいが出てきて一生の仕事にしたい、

そう思い

結婚も諦め休みも取らず、毎日楽しく12時間以上働いていました。


その努力を認めてくれた

上司も時期店長になるようバックアップしてくれました。ところが一年前…

あの女が入社してから

ことごとく私の信頼は崩れていきました。

なんで?

こんなに自分の時間も犠牲にしてまじめに働いてるのに…と不信感でいっぱいでした。

依頼人の目頭がだんだんあかくなってきた。

「一年前入社した女咲枝さきえがいました。

その女とはとても仲良く気が合うと思ってました。

いろいろ私の事をあれこれ言う人から聞き出し教えてくれて慰めてくれてました。ところがそれは私を陥れる作戦だったのです。

咲枝の手口は、

まず私を批判するように話を持っていき私の悪口を言うよう誘導します。

それをいかにも私の為に教えたと言わんばかりに報告してくれ、私も相手の批判するよう誘導します。

お互いそれを繰り返し社員全員、敵にまわすように持っていきました。

信用を失わせた時点で

領収書の控えを隠したり

私のパソコンを細工したりでっちあげの証拠を作り、とどめに上司に私が不正をしたかのように密告し上司を信じさせました。

手口は功名で私がいくら

否定しても信じてもらえなかったんです。

結局私はこの年で結婚も考えず唯一の励みだった仕事までやめざるを得ない状況にまで追いやられてしまいました。

悔しくて悔しくて自殺を考えたのです。どうか私の苦しみをあの女にも味わわせてください。お願いします。」

依頼人はかなり疲れきった様子だが夢を壊された悔しさからか深々と頭を下げ

私に要求した。

「あなたの苦しみはわかりました。

確かにひどい女だ。

明日から書きましょう。

小説の内容の通りに事は

進みますので結果は、

小説を読んで理解していただきたく思います。」

「ありがとうございます。では、よろしくお願いします。」

そう言うと依頼人は帰って行った。


さてと、どういう結末に

したものか…。

この年まで仕事一筋で生きて来た女性が、一人の女の仕掛けによって失ったもの。

依頼人は40歳前後。

という事は転職は無くはないが難しいのと

採用になっても精神的な

苦痛は大きいだろう。

結婚と言う手もあるが

これもまた年齢的に可能性は低くなる。

なにもかも捨てる覚悟での仕事だっただけに悔しさも半端じゃない事だろう。


とりあえず、一晩考えよう…。


………翌朝………


よし、構想が決まった。裏切る人間は裏切られる辛さを思い知らせてやろう。

…一ヶ月後、依頼人はやって来た。


「本は完成しました。どうぞ読んでください。

これを読んで生きる希望が持てれば幸いです。」


依頼人は本を読み始めた。


主人公は咲枝

夫と娘の三人家族か…。


題名は


【底辺人生】


小保咲枝こやすさきえ30歳


小さな機械販売会社で働く事務員。

大勢の男性社員の中女性は咲枝一人。入社一年間の間に三人の

先輩女性社員を辞めさせた。

しかも全て自分は手を汚さずに…。

一人は経理担当の一番の

ベテラン社員だ。

その社員の悪事を依頼人に告げ上司に報告させクビに…。

次に一年先輩の社員は

男性社員にモテた為悔しく友達のふりして陰では

不評をばらまいて

本人に辞めるよう

上手に薦めた。


最後に依頼人だ。


ベテラン社員の逆恨みに

賛同して仕掛けたと言う事だ。誰にも嫌われる事なく

入社一年で見事ボスの座を獲得したのだ。

咲枝は煙たい先輩が誰もいなくなり、

いままで誰も相手にしてくれなかった男性社員も一人じめ。


夢のような会社生活が始まるとワクワクした。


ところが咲枝を待っていたのはそんなパラダイスではなかった。


1番安い給料だから会社は咲枝の事を知りながら残したのだ。男性社員にちやほやされる事を夢見た咲枝だったが

どんな男性社員にも

選ぶ権利はある。

誰からも誘いを受ける事はなかった。


こんなはずじゃない…

咲枝は悔しくあらゆる男に片っ端から社内メールを送った。

しかし誰からも返信なし。お気に入りの男性社員上野和彦うえのかずひこにも猛アタック。


ようやく振り向いてくれたかに思えた。

上野はかつて咲枝が辞めさせた彼女と付き合っていた男。やっとあの子に勝てた…と思える瞬間。


あわよくば旦那と離婚してこの人と…。


咲枝は上野を食事に誘った。

実は上野は辞めさせた咲枝に復讐しようと考えていたのだ。


だから食事の誘いを受け

メールのやり取りもした。

この女の化けの皮をはがして必ずどん底に落としてやる…


上野は食事中の会話を全て録音し、メールのやり取りも全部残した。


気を許した咲枝は

あらゆる秘密を話し始めた。「咲枝ちゃんてどうやってお局達を辞めさせたの?

俺もうっとうしかったから助かったよ」

上野は訪ねた。

咲枝は得意げに話し始めた。

「まず経理の吉沢、

あの女は元々私に事務の事で偉そうに言うから嫌いだった。

でももう一人の浅見(依頼人)とあまり仲良くない事を知りこいつら二人を

喧嘩させ潰し合いさせれば二人とも潰れると思ったんだよね。

それが幸いな事に吉沢は横領してる事が発覚。ここぞとばかりに浅見を利用してけしかけた。

案の定浅見は乗ってきた。

即座に上司にばれて吉沢はクビ。

次に吉沢の気を引く為に

同情し吉沢と組んで仕返ししようと試みた。

あら捜しを始めた。

赤字仕事を上司に伝え

領収書を隠して浅見が細工したかのように状況を作った。

そして上司に報告したら

馬鹿な上司は本気にして

浅見いびりが始まったんだよね。

辞めるのも時間の問題だった」

上野は

「じゃあ高梨(彼女)は?」と一番聞きたい質問をした。

すると咲枝は

「あの子って馬鹿だよね。私が唯一の友達だからって内緒の話全部しゃべってくれるの。

店長に細工してもらって

小遣いもらった事までね。だからそれがばれて辞めるはめに。

私がばらしたんだけどね。でも高梨は何も知らずに

今だに友達と思ってる。」

(何と言う最低の女だ。

その場で殴り殺してやりたい。)

そう思った上野だったが

ぐっと我慢した。

「咲枝ちゃんて頭いいね

最高だよ」


咲枝はそんな上野に夢中になっていった。


ある日上野は

「俺咲枝ちゃんの事本気になった。独身ならよかったのに

俺だけの咲枝ちゃんならいいのに。」


咲枝は念願叶ったと

感激のあまり涙が出た。

「私旦那と離婚する。何もかも捨てる。待っててね」

上野の計画通り事は進んだ。

咲枝は家に帰り、

旦那のあら捜しを始めた。

もちろん慰謝料が関わる事なので上野の存在は隠した。

嫌われるよう

家事も一切せず子供の面倒も見ず

些細な事でも文句を言って喧嘩をした。


それでもそんな簡単に

離婚まではいたらない。


イライラする咲枝に

追い討ちをかけるように


上野は思わせぶりな言葉でせかした。


「咲枝ちゃんはやっぱり俺より旦那さんの方がいいんだ。

俺離婚できないなら

付き合えない。」


「もう少しだけ待って。

お願い。必ず離婚するから」

咲枝はただ焦るばかりだった。


上野は親友にも訳を話し

協力してもらう事にした。

それは社内規定である

飲酒運転で捕まったら

クビという事を

まずは実行するためだ。


あるとき上野は食事に誘った。


もちろん咲枝は喜んで来た。

実行開始。


上野は必要以上に酒を勧めた。

上機嫌の咲枝は上野に勧められるままお酒をのんだ。

「咲枝ちゃん。

今日は楽しかった。早くずっと一緒にいれる日を楽しみにしてるよ。」


上野は念入りに咲枝の信用を作りあげた。


「私もとっても幸せ。

上野君にこんなに愛されて…。

私上野君と関係を持ってもいいよ。」


と、咲枝は迫って来た。


上野は内心思った。


(お前みたいな女大金積まれても嫌だよ。

これも全て高梨の為。

もう少しの辛抱だ。

誰がお前なんか抱くか。

勘弁してくれ。)


「ありがとう。でも俺は何よりも咲枝ちゃんを大切にしたいから

ちゃんと一緒になれるまでは我慢する。」


そう言って納得させた。


「じゃあそろそろ帰ろうか。

今日も楽しかった。

ありがとう。

また会おうね。」


そう言うと咲枝は車に乗った。


作戦開始。


上野は親友に電話した。


「もしもし隆か?

あの女今出た。

あとは頼んだ。」


「任せとけ!」


隆はあらかじめ上野に

咲枝の家までのルート。

車種。ナンバー。全て聞いていた。

「あれだ!」


隆は咲枝の車を発覚し

すかさず咲枝の前を走った。

「よし、あの信号歩行者点滅。

グッドタイミング。」


隆は急いで渡るふりして

速度を上げた。

案の定、咲枝もスピードを上げた。

黄色信号、

渡ると見せかけて止まった。

……ドーン……

計画通り咲枝は飲酒運転で隆の車に衝突した。


「痛ってー。何やってんだよ」


隆は車から降りて

咲枝に近づいた。すると咲枝は飲酒運転と言う事もあり

隆が近づいてるにも関わらず、猛スピードで逃げた。

(馬鹿な奴め。情報は全てわかってるから逃げれる訳ないのに…。)


隆は急いで警察に電話した。

「はい、守馬警察、どうしました?」


「当て逃げされました。

大崎交差点の信号で追突され近づいたら逃げられました。」

「相手の車のナンバー見ましたか?」


「ええと確か8502黒の

軽ワゴン。

30前後の女性。すぐ調べてください。」


「すぐ現場に向かい、犯人を探します。」



…10分後パトカーが来た。

「現場検証させてください。

まずお宅の名前は?」


「水口隆」


「免許証と車検証見せて下さい。」


「はい。」


「状況を説明してもらえますか?」


「赤信号で止まったら、

後ろからいきなり追突されたんです。

僕が車から降りて話しようとしたら

猛スピードで逃げて行きました。とりあえずナンバーだけは控えました。

僕の車直してもらえるんでしょうか?」

と、隆は不安そうに尋ねた。

「当て逃げ犯は探さないと……」

と話していると無線連絡があったらしく警官はパトカーに乗って話し始めた。


しばらくして隆の元にやって来た警官が

「当て逃げ犯の車がわかった。

犯人は酒を飲んでたらしく恐くなって逃げたらしい。たった今逮捕しました」

(やったぞ上野!大成功や)隆は役目を果たした。咲枝は当て逃げ事態は対した罪にはならなかったものの飲酒運転で即免許取消。罰金50万円。

それでもその時咲枝はそれ以上の事の重大さに気づいてなかった。


家では旦那と大喧嘩。

もちろんそれは咲枝が

望んでた事なので、

あわよくば離婚と考えた。


しかし仕事でも飲酒運転で捕まったらクビと言う契約を、咲枝は忘れてたようだ。

あくる日、咲枝は上司に呼ばれた。


「君、昨日飲酒運転で

捕まったらしいね。」咲枝は、隠すつもりだったので驚いた。


「誰がそんな事言ったんですか!」


反省するどころか反発した。

上司は、

「誰が言ったかは今関係ない。

うちの就業規則は知ってるよな。」


開き直った咲枝は

「わかりました!辞めます。どうもお世話になりました!」

そういうと

バタンと力いっぱいドアを閉めて出て言った。


もちろん密告は上野だ。


そうとも知らず咲枝は

即座に上野にメールした。『悲しいお知らせがあります。今日上野君に会いたい。』

上野は含み笑いを浮かべ


(よし、もう一息だ)


と考えながらメールの返信をした。


『…どうしたの?大丈夫?俺も会いたいと思ってた。でも家の方は大丈夫なの?旦那さんに叱られない?』

上野は思ってもいない事だが、心配するふりをして

返信した。


咲枝から返信が来た。


『あんなやつどうでもいい。

今はすごく落ち込んでるから上野君に会いたい。』

あっそ!

上野は優しいふりをして


『わかった。

じゃあ今日も7時にいつもの店で。

元気だせよ。』


(またかよ。面倒くさい。これも高梨の為。

我慢我慢。

もう少しだからな。

待ってろよ…高梨。)


約束の時間が来た。


いつもの店の前で

咲枝は待っていた。


「お待たせ。咲枝ちゃん。」

二人は店に入り、

とりあえずコーヒー二つを注文した。


咲枝は上野の顔を見て、

けなげにも泣き出した。「咲枝ちゃん、どうしたの?

何があったの?

俺でよければ話聞くから泣かないで。」


上野は言った。


咲枝は今日あったことを話した。


「そっか。大変だったんだね。

でも考えようによったらそんな理解のない会社

辞めれてよかったんじゃないの?

咲枝ちゃんはまだ若いし

もっといい会社見つかるよ。俺を信じて。」

何を信じるのか意味不明な事を言う上野だった。すると咲枝は

「せっかくここまで苦労して三人を陥れる事に成功してぬしの座を獲得したのに…悔しくて。」


(こいつめ。必ず地獄に堕としてやる。)


上野はそう思った。


「そうだよね。でも咲枝ちゃんには俺がいるじゃないか。

元気出して早くもっといい会社一緒に捜そうよ。」


「ありがとう。上野君に言われると何か元気出てきた。」

二人はその後2時間程、

たわいのない話をして

家に帰った。家に帰ると、

「お前、今までどこ行ってたんだよ!

子供もほったらかしで。

最近何してんだ。

警察に捕まるような事して反省もしてないのか!

母親失格じゃないか。」


旦那の紀夫【のりお】が

怒鳴り出した。


すると咲枝は、

ここぞと言わんばかりに


「わかったわよ!そこまで言うなら離婚してあげるわよ!」


と、いかにも旦那に言われた理由が原因かのように

離婚話を持ちだした。

最初はア然としていた紀夫だったが、

確かにろくに家にも帰らず子供はほったらかし、

家事はしない、

そんな母親なら子供の為にならないと考え離婚を

前向きに考えるようになってきた。

翌日から仕事もなくなり

ハローワークに通いながら暇さえあれば上野にメールする毎日が続いた。

上野はうんざりだった。

でもあともう一踏ん張り。我慢我慢。

咲枝が退職して一ヶ月程たった頃、

子供が寝静まってから、紀夫は咲枝を居間に呼んだ。


「俺達もうだめなんじゃないか?

子供も最近お前に全然なつかないし…

今すぐ離婚までは考えないけど、もう少し直してもらえないか?」

紀夫は咲枝にお願いした。すると咲枝から返ってきた言葉は

「直すような悪い事してないわよ!

なんであんたにそこまで

言われなくちゃいけないの?

いいわ、離婚するわよ。

但しあんたが言ったんだから、ちゃんと慰謝料払ってよね!」それを聞いて紀夫はカチンときた。


「お前が悪いんだろ!

何が慰謝料だ、ふざけるな!

裁判してもいいがお前に勝ち目はないぜ、

逆に慰謝料払うようになってもいいならそうしなよ。」

咲枝は考えた。


ここで下手に争うと

離婚まで時間がかかる、

慰謝料がなくても上野君が面倒みてくれる。

慰謝料は諦めて言うとおりにしよう。


「わかったわ、これ以上

あんたみたいな人と暮らしていけない。離婚しよう。」紀夫は再度確認した。


「子供は俺が面倒みる。

それでもいいんだな?」

「いいわ。私になつかないんだからしょうがないじゃない。」

「わかった。そこまで言うなら離婚しよう。」


咲枝は喜んだ。


ようやく上野と一緒に

なれる時がきたと…。


咲枝は早速上野にメールを入れた。


『上野君喜んで、私やっと旦那と離婚する事が決まったの。

明日離婚届け出すからね。』

上野はメールを見て


(ようやく最終ラウンドか

咲枝ちゃんさいなら〜)


その日は返信せずに無視した。


あくる日、

咲枝は早速区役所に行った。

手続き終了。


咲枝は晴れてフリーとなった。


喜びのあまり上野にメールを送った。


…ピロリーン…


…上野の携帯が鳴った。


『たった今離婚届け出してきたよ〜。

これから咲枝の事よろしくね!』


それをみた上野は


(よし。最後にとどめを刺したら終わりだ。)


上野はこれを機に携帯電話とメールを着信拒否した。

数日後、

咲枝は上野と連絡が

取れないため会社に電話した。


「上野君、どうしたの?

全然連絡付かないけど。

私何か気に障るようなことした?」


「仕事中なので…」


上野は一言そう言うと電話を切った。

さて、これからどうやって手を切ろうか?

とりあえず放っておこう。

それから毎日上野宛に

電話がかかった。しかし事務員に外出中だと取り次がないように言った。

そして万が一の為、

全て着信の回数、時間の記録をした。


一日5回、ひどい時は10回と、どんどんエスカレートした為、

とりあえず一度電話に出る事にした。

「もしもし、上野君。

どういう事?

何で避けるの?

遊びだったの?

訴えるわよ!」


咲枝の怒鳴り声がした。


「訴える?

俺君にお金使わせた訳でもないし、関係を持った訳でもないんだけど…。どういう理由で訴えるか知らないけど、好きにすればいいよ。


俺は数々の電話全部記録してるからストーカー行為で警察に突き出してもいいんだよ。」


上野はそう突き放した。


すると咲枝は、

「ひどい、ひど過ぎる。

私はあなたの言う通り、

離婚までしたのに。」

と号泣した。

「俺離婚してくれなんか

一言も言ってない。

離婚しない人とは付き合えないと言っただけ。

離婚したからと言って

付き合うとも言ってないだろ。よーく思いだせよ。」

すると咲枝は

「あんた最低だね!。」


上野は怒りをあらわに


「お前が社員達にしたことに比べたら、まだましさ。お前は三人の女を陥れたんだ、三人の女を路頭に迷わせた。

しかもけなげにお前をまだ友達と思ってるやつもいる。」

そう言うと咲枝は電話を

切った。


(やれやれ、終わった。)


咲枝はとうとう全てを失った。

家族、仕事、金、住家…。今後路頭に迷うはめになるだろう。

これも自業自得。

人を不幸にする人間は、必ず自分に降り懸かってくる。

自分が幸せになる事は

人を幸せにすること。

心にいつも置いておかないといけない…と思う。



パタン。依頼人は読み終わって本を閉じた。

「いかがだったかな?」

仮波は尋ねた。

すると依頼人は

「ありがとうございました。すっきりしました。私もう今までの事は全て忘れて一からやり直します。先生のおっしゃる通り、

人を幸せにできる人間になれるよう頑張ります。」


依頼人は何度も何度もお礼を言って帰って行った。


また一人の命を救う事ができた。


さてと、明日からも予約が詰まってる。

今夜はゆっくり酒でも飲んで寝るとするか…。

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