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彼女は幸せになれないー巻き込まれ転移男の異世界奇譚ー  作者: 赦す内燃機関
第2章:ニラは焼かないでは食べられない
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第42話:長い前置き



ーおま・・・グプタか。ってことはつまり。



「魔力結晶は見つけたです。黒いニンゲンモドキが、今、ここに向かってるです。ただ、キメラの妨害で思ったようには進めてないです。」



{ガチャ・・・}



「おまえ・・・お前!何をした!!その能力はなんだよ!大した魔法も持ってないだろう!?何を隠してる!?言え!!言えよ!!」



殆ど動かない体を無理やりに動かしてアライテルの方をみやると、手錠や重力魔法が消えていた。さっきの側近キメラが手錠を解除したようだ。



ー何って、俺にもわからないわな。さっきから、何が起こったかも。。。くそ、左手が痛い・・・。


「タイラさん・・・」


アニマがせめてもの治療にと治癒法で傷口を止血をする。それでもズキズキとずっと痛むのだが、今は危機感と未来への希望からくるアドレナリンのおかげで幾分か正気で入られた。


「はあ・・・はあ・・・アニマを・・・自由にしろよ。」



「は!好い気になってんじゃねえよ!?」



ーなんだこいつ・・・冷静になってみると・・・ただの子供じゃないか。



「おい聞いてんのかよ!死にかけの芋虫!ゴキブリ!ゴミかす!」



アライテルが近づいてくる。右手には先ほどのアニマを傷つけたような黒い火が灯っている。



「はあ・・・もういいや。遊びは終わり!終わりだよ!一回黙らせればいうこと聞くでしょ。」



アライテルの左手(・・)が、再び僕に向けられると、重力魔法によってなすすべもなく宙に浮かび上がった。身動きの取れない状態で、今度は右手に宿した黒い火が僕にむかって放たれた。



「頼む・・・風魔法・・・広がれ・・・」



ーだめだ、風魔法が発動しない・・・もう魔力が・・・。



「タイラ、あれは闇属性の魔法、着火した対象の組織が破壊されるまで、消えない火です。避けるです。」



「タイラさん!」



アライテルが放った黒い火は目の前で爆散した。僕はとっさに両手で顔を覆ったーー左手はないがーー。



{ジュウ}



ー・・・あれ・・・被弾してない?



「え、アニマ!何を!!」



目を開けると目の前でアニマはローブを盾に、黒い火を受け止めていた。魔法耐性のあるローブが一瞬で虫食いのように燃えつきる。受けきれなかった火の粉がアニマの顔を直撃し、アニマはそれを避けきれず倒れた。



「なんだよ、お前。キメラのくせに・・・キメラのくせによおお!!!」



ーまずい・・・時間を稼がないと・・・。



(アニマさん!大丈夫ですか!)



(ええ、メガネのおかげで直撃はして・・・いませんから。)



アニマの顔はよく見えない。すくなくとも、大事には至っていないようだ。


「殺してやるよ!お前ら二人とも!」



アライテルがこちらに向かってくる。側近のキメラ2体が僕とアニマの退路を塞いでいた。



{バタン!}



「ああ!もう誰だよ!?」



一階のこのホールには至る方向にドアがついており、そのうちのひとつ、タイラの後ろ、出入り口付近、地下から上がってくる階段の扉が開いた。



「はは、まずったな・・・普通、謁見室とかで会うだろうが・・・なんでお前らここでやりあってやがる・・・」



ーあいつ!



扉を開けて現れたのは、手に大量の財宝をもった盗賊のアニキがだった。



「へえ・・・僕好きだよ。お前みたいな身の程をわきまえないネズミがさ!最後まで苦しんでチュウチュウいながら死ぬところがねぇ!!!」



ーこれ、アニキ・・・お宝盗んでトンズラしようとしたな?



「タイラ、あの宝石の中にいくつか魔力がこもったものがあるです。早く手に入れるです。」


「アニキ!それをおいて逃げろ!!」


「ネズミ、すぐに死ね!今死ね!さっさと死ね!!


アライテルは今まさに手を向けて、魔法を発動する瞬間だった。




「言われなくても逃げるやな・・・え?」



アニキは手に持った財宝を思いっきり床にぶちまけた。といのもアニキの両手両足がバラバラに宙を待っていたからだ。


「はは!達磨さんが転んだ!!」


{ドサッ}


「ヒッ・・・ヒィィィィイィィィ!!!」



「アニキ!」



目の前には胴体だけのアニキが、宝石と一緒に床に散らばっていた。



「タイラ、これは空間魔法です。ただ、手足の空間が断絶されただけです。無視して早くあの石を拾うです。」



ーえ、ええ!?あれ大丈夫なの?まあ、グプタがそういうのなら・・・。


僕は身近に転がってきた小さな琥珀のようなものを手に取った。アニキは状況がわからず、顔だけをキョロキョロさせて、黙ってしまった。


「タイラ、魔法を2つ発動するです。一つは、私たちを守る魔法特化の結界魔法です。」


ーもう一つは?


「黒いニンゲンモドキと魔法結晶をここに呼ぶ転移魔法です。」



ーわかったすぐにやろう!



アライテルはご満悦の表情でアニキの本体を宙に浮かべて遊んでいる。


ーグプタ頼む。



「詠唱は・・・。Beno de la amuleto, protektu la ĝojo kontrau malupuro(守護の祝福、汚れから喜びを守れ)ーです。」


ーちょ、ま、ながくね!?べのーであむれーと・・・ぷろてくらじょーよ・・・と、なんだっけ??


「Beno de la amuleto, protektu la ĝojo kontrau malupuro、ちゃんと口で発音するです。これは、高等な魔法です。」


ーわ、わかったよ・・・


「BENO DE LA AMULETO,・・・・ PROTEKU LA ĜOJO・・・ KONTRAŬ MALPURO! -(守りの祝福、汚れから喜びを守れ)ー」


手にした琥珀を中心に、何層もの糸でできた球体状の黄色い光があたりを包む、それはダンスホール全体に広がり、ひしめくように音を立てて壁や天井を這っていた。


光の糸に触れたところから、アニキの体は引き寄せられるように元に戻り、五体満足な状態で床にへばっているのが見えた。ちなみによくみれば股間を中心に、床には水たまりができていた。


「結界魔法だあ?お前のステータスには無かったはずだろうが・・・くそがくそがくそが!騙されたみたいで腹がたつなあ!おい、キメラ!」


アライテルは苛立った様子で、側近のキメラを顎で使った。熊のような手足をしたキメラたちはまっすぐ僕の前に向かってくる、あと10秒もせずに目の前にくるだろう。



ーえ、まって、結界張ったんじゃないの?目の前に来てるけど?


「あくまで魔法が距離の2乗に反比例して霧散するだけの結界です。それに、この結晶が壊れたり、時間が経てば消えるです。」


ーこの宝石を守りながら、素手で相手とやりあえってこと?


「そうです。ついでに転移魔法の時間を稼ぐです。」


ーちょ、まって、今起き上がるから・・・


{シュン}


「あ、ぶね・・・。」


目の前では一体のキメラの鉤爪が、髪を掠め取った。起き上がるのが遅ければ、首筋を切られていたかもしれない。


ー大丈夫だ・・・僕は体が丈夫だから。。。死ぬこと以外・・・かすり傷・・・・かすり傷・・・。


「くそくらえ!」


戦法も何もあったもんではなく、ただ目の前のキメラにがむしゃらにタックルをした。


相手の足が僕の顔にめがけて蹴りを放つ。右手でこれを防ぐと、ビキビキと相手の骨が折れる音が聞こえた。無論、僕の腕も無事では無く、”青あざ”ができた


ーいってええ・・・日本の温室育ちには、たかが青あざでもきついよ・・・でも・・・いける!


勢いが収まらぬまま、結果的にタックルが決まると、相手が地面に叩きつけられた。意図せぬ頭突きがキメラの腹部へ決まると、そのまま血を吐いてぐったりとしてしまった。


「まず、、、一体!」


ーこのセリフなんかかっこいいな・・・。


起き上がるのを待たず、後ろからももう一体のキメラがまっすぐにこちらの頭部を狙ってきた。


ー狙いは・・・目か!?


僕がとっさに顔を右手でかばう。鋭い爪とおそらくこちらでは尋常ではない腕力による全力の刺突は、手の甲を突き抜いて、鼻筋の肉を抉った。


「いって・・・えええなああ!!!」


爪の刺さった右手を握りしめて、相手の体に蹴りを放つ。相手も負けじと足でそれを防ぐが、膝の骨が折れたのか体制を崩した。


「くそ!大人しくしとけよ!もう!」


続けて蹴りを肩に入れる。キメラは腕を挟むものの防ぎきれず、地面に頭部を打って沈黙した。


「はあ・・・はあ・・・次は・・・アライテル・・・あんただ・・・」


「はあ・・・お前・・・本当にキモいよ?」


見るとアライテルはもうすでに、長めの魔法詠唱の準備をしていた。


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