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彼女は幸せになれないー巻き込まれ転移男の異世界奇譚ー  作者: 赦す内燃機関
第2章:ニラは焼かないでは食べられない
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第41話:平凡の先に

そろそろ二章が終わる気がします。


「違う・・・それは違う・・・・」


「それだよそれ!!そういうの見たかったんだよ!!!」


ーうるさい!こんな奴に構ってる暇なんてない、早く、早くアニマのところにいかないと!!!!



「邪魔だ、邪魔だ、邪魔だぁぁぁあ!」



「へえ!いいねえ!」



「降ろせよ!!早く!降ろせよぉ!!!」



「いいのかい!そんな口聞いても!!」



ー邪魔だ・・・邪魔だ!!!!お願いだから行かせてくれ!!



アライテルの手にはいつのまに召喚したのか、先に返しのついた銛の様なものが握られている。それはー一直線に僕の目に向かいーー


「邪魔だって!!!!」


銛の矛先は僕の顔から逸れて空を切った。


「は?」


ーお前、お前が!!一人で!!


「勝手にここで!浮いてろよ!!」








{キィィィン}







視界が一瞬暗転する。



「・・・?」



気づけば僕は地に足をつけ、目の前には手に錠の掛けられたアライテルが宙から数メートル浮いていた。


ー何が起きた?アライテルが何故浮いてる?わけがわからない・・・だけど、そんなことより・・・。


すぐさまアニマに駆け寄ろうとする僕の目の前を従僕のキメラ2体が遮る。


「引っ込んで・・・ろよ!!!!」


彼らの手はもとより人間のそれではなく熊の腕の様にも見える。

猫よろしく、指先に力を入れ現れた鋭い爪ーー太い筋肉に加速されたーーが両側から襲う。



ー邪魔だ、邪魔だ、邪魔だ、今は黙って、後ろに下がっててくれよ!!!頼むからさ!



僕の思いはもはやほとんど懇願だった。気づけば涙が頬を伝っているのに、その時初めて気づいた。


{キィィィン}



「「?」」



拳は宙を切った。というよりも、二対のキメラはそれぞれ、あと一歩で届く位置におり、そもそも攻撃が当たっていなかった。


僕は追撃よりも早く、アニマの元に駆け付ける。しかし、それはすでに致命傷としかおもえなかった。。


「はあ、はあ、アニマさん!ダメですって!それは、それだけはダメですよ!!治癒魔法で責めて止血でもー」


「・・・いいのです。これで私も許されるのですから。」


ーあああ!!!もう!!!!


「違う!なにもかもあべこべだ!こんなストーリは違う!!!」


ーあなたは!あなたは僕の、僕のヒロイン(希望)なんだ・・・・


「そうだ、こんなストーリーは間違ってる!!!!!こんなストーリーは間違ってるんだ!!!!!」


僕は右手でアニマの頬に触れ、がむしゃらに左手で治癒魔法を試みた。今まで自力で組織の欠損を治すのには成功したことはない。今回も同じように、ただイダズラに魔力を傷口に垂れ流すだけで、一向になんの成果もなかった。



ー絶対に間違ってる!アニマが死ぬのは・・・間違ってる!!!



「間違ってる、間違ってる、間違ってる、間違ってる、間違ってる、間違ってる、間違ってる、間違ってる、間違ってる、間違ってる、間違ってる、間違ってる、間違ってる、間違ってる、間違ってる、間違ってる、間違ってる、間違ってる、間違ってる、間違ってる、間違ってる、間違ってる、間違ってる、間違ってる、間違ってる、間違ってる、間違ってる、間違ってる、間違ってる、間違ってる、間違ってる、間違ってる、間違ってる、間違ってる、間違ってる、間違ってる、間違ってる、間違ってる、間違ってる、間違ってる、間違ってる、間違ってる、間違ってる、間違ってる、間違ってる、間違ってる、間違ってる、間違ってる、間違ってる、間違ってる、間違ってる!!!!!」




{キィィィン}



ーまただ視界が・・・くらく・・・。



「・・・まちがって・・・る・・・。」




{カラン}



ーあれ、なんでネティマスがくれた腕輪が落ちてるんだ?


{ドサッ}





___________________________



「なあ、タイラ、お前、またあれいくの?」


「あれって?・・・ああ、ボランティアね。うん。」


「お前もすきだよなあ。・・・ーーさんのこと!狙ってるんだろ?」


「え、うん、まあ、それもあるけど・・・でもさ、もう嫌なんだよね。」


「いやって何が?」


「正しいと思うことを見てみにフリをするのがだよ。僕に力があったら、偉そうに踏ん反り返ってる奴ら全員ぶん殴ってやるのにって思う。」


「あ、なに、お前ってそういう感じの人?もうすぐ20才なんだろ?どうせ、力なんてねえんだから、好きなことすればいいじゃんよ。いまどき。正義なんて流行らねえだろ。」


「・・・そうだね。でも、多分、僕は好きでやってるんだ。だから、正義とかでもないと思う。もちろん、本当は誰かに助けてほしいけど、それこそこの地球にこそ、異世界からヒーローが来てくれたらいいのにっておもうよ。」


「あっそ、まあ、いいや。学食くらい付き合えよ。」


「え、あ、うんじゃあ一緒するよ。」


ーそうだ。僕はそれが正しいと思ったんだ。僕には僕の思いが、正義なんて安っぽい名前じゃない、もっとか弱い願望があったんだ。それはきっと、悲しむ人を救えるはずだと思ったんだ。。。



____________________________




(ーさん・・・タイラさん・・・)


ーアニマ?



目を開けると、血の海の上に横たわっているアニマの顔がすぐ目の前にあった。自分が同じ様に横たわっているのに気づくのに数秒かかり、気付くと同時に体を異様な疲労感が襲った。


「な、なんだこの脱力感・・・。」


ーなんだろうこの感じ・・・魔力が尽きたのか?


「アニマ・・・アニマ・・・。」


僕はアニマに触れようと”両の手”を伸ばした。そして右手がアニマの頬に触れる。左手の感覚が無いことに気づいたが、そんなことはどうでもいい。アニマの目はいつかのように不安げでありながら、黒い夜空に凛々しい満月をたたえていた。


「アニマ・・・ごめん・・・俺のせいだ・・・君のこと・・・諦められなくて・・・それで無謀なことして・・・結局、結局こんなことになっちゃって・・・。」



(タイラさん・・・・一体何をしたのですか?)



「なにもできなかった・・・もっと美味しいもの一緒に食べて・・・できることならこの世界の色んなところに行きたかったんだ・・・魔法のことも・・・アニマと一緒に・・・けど・・・・けど・・・・もう。」



ー・・・僕は何も何もできなかった。アライテルの前に何もできないで、アニマが傷つくのを止められなくて、とにかくがむしゃらに走って、それで結局、結局どうしようもできなくて・・・


「ッツ!死なないでくれ!!アニマ!!」


僕は異様に気だるい体を起こして、這いずるようにアニマに近いた。アニマもそれに気づいたのか、血の海のなかで起き上がろうとする。


「無理したらだめだ!傷が・・・あの大きな傷が!」


見ないようにしていても目がいってしまうのが人間だろう。僕の視線は必然的にアニマの傷口に・・・


「え??白い肌・・・だけだ・・・」



(タイラさん、ですから何をしたのですか?私の傷が元どおりになっています。それに・・・)



ーえ?なんだって!!!


「じゃあ!アニマさんとまだ一緒にいられる!そういうことですよね!ああ・・・あああ・・・・」


僕はほとんど力を失うようにして、膝をついたまま抱きついた。アニマの体の冷たさが、頰に伝わると火照った体が冷静さを取り戻していくのがわかる。抱きしめ返される手がわずかに強くなるのと同時に、お互いの心臓の鼓動が早くなるのが聞こえた。僕は見知らぬこの世界で2人、同じ鼓動を聞いてることがとても嬉しかった。


「タイラさん、左手が・・・」


盛り上がる僕を沈めるように、アニマは申し訳なさそうに僕の耳元で囁いた。


「僕の左手はどうだっていい!アニマが生きているのだから!」


「左手が無くなってます・・・。」


「そんなのどうだって・・・え、左手がない?」


嬉しくなるあまり気にならなかった左手の痛みが、突然にいやらしく襲ってくる。痛みとともに、一気に現実に連れ戻されると、血と汗の匂い、背後で動く魔力の気配、それから殺気のような居心地の悪い視線が急に色を取り戻した。


「あ・・・あ・・・そうだ・・・生きて帰らないと。手・・・て・・・」


ー<解釈>

______________________________________________________________________________


名前:大凡おおよそ たいら

種族:*ホモ・サピエンス>モンゴロイド>日本人

性格:優柔不断

合計魔力量: 0/2020

体重:59.98 kg

状態:ー

魔導:精神魔法 属性魔法 (火・土・水・風) 治癒魔法  

能力:「解釈ー力への意志ー」

加護:「拾う者」

アドバイス:「正しく問うことが正しい答えを導く」

______________________________________________________________________________



ーえーと・・・体重が10kg近く減ってる?・・・、手のせいか?・・・少なくとも状態異常はないし、逃げるだけならいけるか?


 自分のステータスを確認しているところで、血の海の中に床から手が生えているのに気づいた。アライテルの魔法をうけたのか、あるいは何かの弾みでうっかり左手を落としてしまったのだろうか。僕は手に近づいて、それをよく見た。


ーうう・・・ごめんよ・・・こんなにちっさくなっちまって。



「それは、魔導器グプタです。」


そしてやっと現れた救世主の存在に、僕はやっぱり同じ言葉を呟いた。


「グプタ、ぐう使える。」

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