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彼女は幸せになれないー巻き込まれ転移男の異世界奇譚ー  作者: 赦す内燃機関
第2章:ニラは焼かないでは食べられない
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第39話:嵐の前の騒がしさ

 日が昇ると同時に小屋を出発し村に向かった。ネティマスは盗賊をつれてサジャーロのもつ武法:狩の<隠密>によって、城の近くまで先回りしてもらった。気づかれないかが心配であるが、何かあれば唯温の腕輪に反応があるはずだ。


 僕と認識阻害を使ったアニマが村に着くと、村人はまばらでそのほとんどが老人と子供だった。盗賊が言っていたとおり大人たちはアライテルの城にさらわれてしまうらしい。それは行ってしまえば奴隷であり、この村の人が逃げないための人質でもあろう。それに子供が村にいれば、大人たちも迂闊なことはできない。


ーなかなか小賢しいなあ奴も。これじゃあ、まともに農業もできないだろうに・・・。


 僕はアニマにお願いし怯える村人に盗賊の根城の場所を教えた。そこにあるものは全てこの村のものだと伝えると彼は訝しがったものの、銀貨100枚と盗賊の持っていた剣を強引にあげる大げさに喜んでから、小屋の方へと案内された。そして、金銭以上に彼らは盗賊を倒してくれたことに感謝しているようだった。


「お礼はなんもできませんけんど、せめてご飯でも食べて行ってくだせえ。」


ーそれでもちゃっかり僕は銀貨50枚分もらってしまってるしなあ。ムーサさんの分と合わせて銀貨100枚だ。


「そうだよおにいちゃん」

「あそぼ?」

「にーちゃんへんなかおー」

「このローブきれーだね!」

「なにその虫??」

「たかいたかいして!」



・・・・



ーてか子供おおすぎないか?自分、小さい子の相手は苦手なんだよなあ。


僕は狼狽しながらアニマを見た。


「え、あ、いえ、急いでおりますので。」


「急いでる?まさか、あの城に行こうなんて考えているんじゃないですけえ?」


「・・・。」



「おにーちゃんたちお城いくの?」

「うわーすげーゆうしゃなの?ゆうしゃなの?」

「たてながの薄っぺらいかおー」

「あぶないよ?服取られちゃうよ!?」

「虫はちょーだい!」

「お城は・・・いっちゃなだめなの・・・。」



・・・・



ーわかったからとりあえず、顔のことには触れないでくれるか・・・。



「何があったかは知らんですけんども、それだけはやめておいた方がいいですけえ。」



僕は年話でアニマに返事を送った。


「ええ、ちょっと見るだけです。」


「どうしてもいくなら、やっぱりご飯くらいたべたほうがいいですけえ。これが最後になるかもしれんですけど・・・。」



僕はアニマのツノがピンと張ったのを見逃せなかった。僕が頷くとアニマは首を縦に振った。



「・・・はい。」


僕とアニマは老人に言われるがままご飯をご馳走になった。カブの炒め物とペンネのようなパスタをトマトのような赤い身で煮込んだものだった。これまた質素ながら決して互いに邪魔をしない、調和のとれた優しい味だった。


子供達はというと・・・なんとその場にいた全員が僕の後をついてきて、一緒にご飯を食べてる。この老人、いやここに住むお年寄りは皆、子供の親代わりなのかもしれない。



ーアニマは案の定・・・おかわりしたか。



僕とアニマが子供達の迫力に押されろくな会話もできないままに、礼を行って立ち去ることにした。もとよりネティマスを待たせている。


「「「「「「またねー!!」」」」」」


ーちびっ子たちは最後まで元気いっぱいだ。。。



老婆は僕とアニマに渡したのは、小さな硬いパンだった。



「お腹が空いたら、いつでも戻っておいで。」



僕は無言で頷いて、アライテルの城へ向かった。



・・・



夕方近くになってネティマスと合流すると、僕らは最終確認をした。盗賊にはネティマスが通訳をする。


盗賊の男は完全に人生を諦めた顔をしているがどちら道助からないからと、僕の作戦に加わることをしぶしぶ了解してくれた。僕としても戦力になるとは思っていないが、自らの手で殺すのも後味がわるい程度の考えでしかない。いや、せめて死なないでほしいものだ。


 ネティマスと盗賊、チュビヒゲ、魔導器&霊体グプタは城の裏手から潜入をする。チュビヒゲにはグプタが見えるし、グプタは魔力結晶の位置がわかる。すなわち、道案内はグプタがそれを追うようにチュビヒゲが動き、ネティマスがそれについて行くという次第だ。

 僕とアニマそれとグプタ本体は正面から潜入して時間を稼ぐ。魔力結晶が見つかり次第、チュビヒゲが僕にそれを運んでくると言う作戦であるが、最悪の場合ここからサジャーロに乗って逃走する。それはもちろん僕が逃げられないことを意味している。



「わっかんねえな。お前ら、本当にそれでいいのか?冷静になればほとんど運だよりってわかんじゃねーか?まして、バケモノの兄ちゃん・・・皆んな化け物か・・・あんた、逃げれないんだろ?」



盗賊は自分の命より大切なものはないとなんども言った。その通りだと思う。だけど、僕は結局のところ人生なんてそんなもんじゃないかと、ここにきて変に諦観じみた感情になっていた。とにかく今の僕にはアニマのことしか考えられないというだけの話だ。確かに冷静じゃない。


「・・・ネティマスさん、チュビヒゲ、盗賊のお兄さんには、申し訳ないと思います。」


それでも、皆んな首を傾げているのは、”申し訳ない”の感覚が日本と違うのからもしれない。



「とにかく、終わったら、美味しいものでも食べに行きましょう!」


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