第34話:トッホンの街並み
「プカプカ」します。良い子は真似しない様に。
「え?これってよもぎじゃないですか?」
(よもぎですか?)
「こちらでは”マグワート”です。」
「チュビ!チュビ!」
「あ、ちょ、チュビヒゲ、食べちゃダメだって。これ売るんだから!」
僕らは周囲のマグワートーーよもぎーーを刈り尽くすと、持ってきた麻のバッグいっぱいにつめた。
グプタのアドバイスでどれがよく魔力を保有しているものかわかる。
「これを乾燥させて煎じると少量の魔力回復効果があるです。マグワート茶って呼ばれてたです。」
ーふむ、この幼女、いや、グプタウィキがあれば、こっちの生活も安泰だな。
「例えば、乾燥させて、直接食べたりしたら?」
「その場合でも魔力を回復しますが、食べると麻痺属性の効果があるです。」
ー食べれば麻痺か・・・ん?例えば吸ったら?
(タイラさん、それは?)
僕はグプタに教えてもらった火の魔法の感覚を元に、空気中からいくつかの気体を分離することに成功した。最も軽い気体、地球だったら「水素」を空気中で濃縮して燃やせば火が起こる。無論場合によっては爆発する。
ー火力を調整して、空気をこれをにのせれば。。。
{ジュワ}
「よし!やっぱりこの感覚だ!あ、アニマさん・・・ほら、持ち運ぶのに、乾燥させた方がいいかなと思いまして。」
火と風の属性魔法と組み合わせればあのアネゴの魔法のように、草を乾燥させられる。そして乾燥させて巻けばほら。
ーよもぎタバコだ!
「ヨモギタバコです?」
ーち、グプタに気づかれたか・・・。これを吸ったら・・・。
{カチッ}
ーうわ、ナニコレかっけ!指先から火出せるとかまじかよ!
僕は悪役っぽくヨモギを巻いたものを指に挟んで、反対の手の人差指から火を出した。
「・・・うわ、にが・・・。」
ヨモギタバコは異常に苦く、酩酊感もなかった。その代わり、スッと体が軽くなるような、すなわち魔力が回復してる感覚があった。
「でもまあ、なんというか僕にはお似合いかもしれないな。いつも甘ったるいことばかり考えてたし。こっちに来てまで、タバコに逃げてばっかりもいられないか・・・。」
(モシ?なんの話です?それに、吸って大丈夫なんですか?)
「ん、苦いですよ。よければどうぞ。」
ー地球では人にタバコを進めるなんてワルとされたもんだけど、まあ、ヨモギだしな。
「あ、でもまって、新しいのを・・・」
(うわあ・・・苦い・・・。よくこれ吸えますね。)
ーあ、間接キ・・・。いや、まあアニマは特に気にしてない・・・か。うん。ここは異世界だ。まあ、アニマがズレていると言う可能性も・・・。
「タイラ、何照れてるです?」
ーがふっ!!
「いや、あれ、でも、苦いけど、なんか気に入っちゃって。まあその、カッコつけです。」
アニマとグプタは訝しい目で、こちらを見つめている。確かに煙の匂いもするし、副流煙が・・・。
「チュビ!」
ーあれ、チュビヒゲはこれ嫌いじゃ無いのか?
「マグワートの煙にも魔力回復の効果があるです。少量なら体に悪いこともないです。」
ーそうか・・・なんか、都合がいいな。まあでもとにかく。
「良い子は真似してはいけませんよ!」
ーこの世界ではどうにか生きていたいな。弱い僕でも、腐らずまっすぐに生きていたいな。
僕が乾燥したヨモギをいくらか束ねてーーいくつかは丸めてーーバッグにしまい終わる頃、周囲を見渡していたアニマが僕に手招きをした。
ー手招き可愛い・・・。
(モシ?向こうにあるのって、街ですよね。)
「あ、本当だ。」
(もうすぐですね。)
ー母さん、父さん、新しい生活はそんなに悪くはないです。親孝行はまだできそうに無いですけど、色々とうまくいきませんけど、悪いことばかりじゃ無いです。なんかよくわかりませんけど、僕は今、次の一瞬一瞬が、
「とても楽しみです。」
・・・・・・
ー3時間後ー
「なるほど、中世異世界というよりこれは。」
ーうーん、これじゃあまるで・・・
「スチームパンクです?」
「ちょ、グプタ!思考の先まで読むんじゃ無い!」
タイラたちがついたカラコール第2の都市”トッホン”は、遠くから見る分には石造りの家や、整えられた煉瓦づくりの道路、大小様々な商店で賑わう商業都市のように見えた。町全体の規模も大きい。どことなく台湾の市街と南フランスを合わせたような異国情緒があった。ここで大きく違うところは、屋根屋根には大きな鉄製のパイプが張り巡らされ、ほうぼうでは煙が上がっているところだ。人々の移動手段も馬のような動物ではなく、バイクのような2輪車だった
ーイメージと違う・・・。
「そんなことより、どうやって入るかですよね。」
街の外側は数mほどの鉄の柵が張られており、飛び越えるにはあまりに目立つ。肝心の関所のような入り口には小屋があり、ここで通行手形を発行しているようだった。
ーそもそもアニマさん入れるのかな?
「精神魔法の認識阻害を使えばいいです。」
ーぐ、グプタ!!!(涙目)
「アニマさん、認識阻害の魔法とか。使えませんか?」
(精神魔法の一つですから、やり方さえわかれば・・・。)
ーよしグプタの出番だ!
僕は魔導器グプタを手渡すと、グプタの言う言葉を一字一句漏らさず伝えた。
「タイラ、あとはアニマが詠唱するだけです。」
「いいですか、アニマさん、見せたい姿をイメージして・・・・詠唱は・・・”偽りを晒せ”です」
(はい。ええ、この感じ、つかめました。 -ELMONTRU FALSOJN- (偽りを晒せ)!)
アニマの姿は小麦色の素肌に灰色の瞳に黒縁のメガネ、髪の色は灰色で、角もなくなっていたーーどことなくススーリに似てる?ーー。
(どうですか?この辺のほーマの姿を真似たつもりですが・・・。)
「ええ、完璧ですよ。」
ーうーん、朴訥な村娘って感じでこれはこれで・・・
「タイラ、この魔法は魔力永続で消費するです。」
「と、とにかく街へ入りましょう。」
・・・
「次どうぞ。」
「私たちは、旅のものです。私はアニマ、そして彼はタイラ、薬草を売りに来ました。」
僕は挨拶をして、手に持った麻の袋を置いた。
「そのドラケトは?」
ーしまった、チュビヒゲのことを忘れてた。
「チュビ?」
(アニマさん、ペットですと、言ってくれませんか?)
「ペットです。」
「ペット?ドラケトを?」
「なにか問題でも?」
ーうん。これ絶対なんか引っかかってる。問題だったわけだね。
「いや、聞いたことがなかっただけだ・・・。それより、男、お前はなぜ喋らない?」
ーう、うげえ・・・
「彼は遠くから来て、この国の言葉がわからないだけです。」
「この国の言葉?ニラヤ=カナヤ語はこの世界共通の言語だぞ?忌まわしくもディアブルでさえも解する。まさか、お前はそれ以外の言語があるとでもいいたいのか?」
ーここは単純に”言葉を知らずに育った”くらいの方が良かっただろうな。アニマさんは何も間違ってないけれど・・・おそるべし”焼かないニラ”・・・。
(あ、アニマさん、地球のことは秘密にしてくださいませんか?僕は単純に言葉が喋れないという体でいいので!)
アニマさんと僕が何も言わずに見つめあって数秒後、再び門番に向き直った。
「・・・モシ・・・いえ、彼はただ言葉を喋れないという意味です。」
「ふん・・・。怪しいものは持ってない様だな。通って構わない。これが通行許可証だ。常に携帯しろ。持っていない場合には罰金があるからな。」
(よ、よし、アニマさんありがとうございました。早く行きましょう。)
僕は会釈をしてアニマさんの背中を押しながら、そそくさと街に入った。
ーなんかあの門番こっちずっとみてるような・・・。
「衛兵に連絡しておいてくれ。変なよそ者が2人入った。」
世界に共通の言葉があると母国語という概念は存在しない




