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彼女は幸せになれないー巻き込まれ転移男の異世界奇譚ー  作者: 赦す内燃機関
第2章:ニラは焼かないでは食べられない
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第33話:世界に散らばるヒゲのあいつ

 見上げれば青い太陽が傾いている。手足の泥は、水魔法で洗い流した。考えてみればこれでお風呂問題はある程度片付いたと言って過言ではない。時刻は夕方の5時、残る目下の問題は食料だ。



「あれ、これってナナカマドの実じゃないか?」



僕は道端にある針葉樹の赤い実を指差して、アニマに問いかける。



(ナナカマド?)



「うん!食えるよ!これ!食える!鳥みたいのも食ってるし・・・大丈夫だろう!」


「”ルーワン”のことです?それなら食べれるです。」


僕はよく熟れたビー玉ほどの鈴のような赤い実の房をアニマにも渡した。アニマは躊躇いもなくそれを口にした。


(モシ・・・本当ですね。美味しいです。これだけあれば、お腹一杯になりますね。)



ー流石に植生までは地球とは違うな。ナナカマドは初冬に身をつけるのだけど。



グプタは関心も示さず、周辺の土地を見回っている。何かを探しているようにも見える。



「今日はこの辺で寝よう。つっても草しかないけど・・・。」



(ヴァルマさんの話では明日には街に着きます。そこからは村をはさんで、主様の離宮まで10日ほど・・・でしょうか。)



「街かあ!なんかお金になるものとかってないのかな?柔らかいベッドに、ご飯とかもたべたいしなあ。」



ーこっちのタバコも吸ってみたいしなあ・・・そういえば、しばらく吸ってなかったか。これを機に禁煙?いやまさか!



(モシ・・・すいませんお金のことは何も・・・。)



ーグプタは?何か知ってるだろうか。



「お金になるかはわからないですけど、魔力を含んだ薬草がいくつかあったです。昔から、重宝されてたです。」



「ん!じゃあ、明日はちと、自主採取クエストと行きますか!」





      ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


「「「「「お疲れーす!!乾杯!!!!」」」」


ーはあ・・・。


「あ、自分ちょっと一服してくる。」


僕は乾杯するやいなやテーブルから離れて、喫煙スペースになっているトイレ横の窪みに避難する。


ー慣れないなあ・・・こういうところくるの。身分に相応しく無い気がして・・・。。


「あ、ねえ、平くんて、どうしてタバコ吸ってるの?」


「あ・・・。***さん・・・。」


「体に悪いよ?」


「うん?えーとその・・・多分、気が弱いからだと思う。」


「あーそっか。いつも気を使ってるもんね。疲れちゃうとか?」


「いや、そんないいもんじゃなくて・・・人が苦手というか。」


「へえ。優しいんだね。」


「優しい・・・か。」


ー何だか心地いいな・・・まっすぐ目を見て・・・真剣に聞いてくれるって、こんなにいいことなんだな。


「あの、***さんは・・・どうしていつもー」


「おーい***さん!二軒目行こうよ!」」


「あ、本田くんちょっと待って!!・・・平くんは?どう、いく?」


「いや・・・僕は・・・遠慮しておきます。」


ーそれこそ、場違いだ・・・。


「そっか。じゃあまた来週、児童会館(ボランティア)でね!」


「あ、うん。また手伝います。」


ー・・・うん。それだけ。僕にはそれだけ・・・。


「「「「お疲れ様でしたー!」」」」


ーああ、今日も、訊けなかったな・・・。



「***さんはどうして・・・いつも、そんなにまっすぐ人を見つめられるんですか・・・。」


      ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・あれ・・・あ・・・夢か・・・久しぶりに見たな・・・。」


ー***さん・・・懐かしいなあ。ところどころ違うけど、まあ、だいたい昔の記憶と同じだ。地球の記憶・・・か。あれはいい記憶だ・・・。



{ペタペタ}



ーう、なんか頭の周りでにょろにょろと・・・虫!?



「う、うわあ!」


(モシ?タイラさん?どうしました?)


「チュビ?」


ーえ?ああ、ここは・・・異世界・・・そうかそういえば・・・。



「あ。いいえ、なんでもないです。・・・アニマさん起きるの早いですね。」



(あまりよく寝れなくて。)


ーうーん、やっぱり昨日のこと気にしてるのかな。自分が正しいと思う主のことで苦しみ、刃を抜く人ーーそれも子供ーーがいるのだ。僕だったら苦しい。そんなアニマをみて何もできないのも苦しい。


「眠れなくても横になるだけでも、体にいいって聞いたことあります。この辺は魔物もいませんし、たぶん、昨日の盗賊達も追ってこないでしょうから。」



(・・・はい。)



「チュビー」


「ほら、チュビヒゲもこう言ってますし・・・。」


(ええ。でもなんていうか・・・ごめんなさい、今は自分でもよくわからない気持ちです。)



「そりゃあ、人間的ですね。」


(人間的?)



「なんていうかほら、言葉にできないけど、”ああ!人間!”って感じのことです。」


「チュビチュビ」



ーうんうん、チュビヒゲもこう言ってるしね。


(モシ・・・よくわかりませんが・・・。・・・モシ!?)


ーえ?


「うわあ!チュビヒゲ!?」


見れば僕の頭の上には”チュビヒゲ”に瓜二つなドラケトが止まっていた。


ーまてまて、ドラケトなんてたくさんいる。チュビヒゲな訳。。。<解釈>。


____________________________________________________________________________


名前: ーチュビヒゲー(-/-)

種族:ドラケト(Doraketo)<ミリオーノイ Millionoj

性格:孤独

魔力保有量: 45/45 (1/500,000,000)

体重:101g (1/500,000,000)

状態:ー

魔導:属性魔法 (風) 治癒魔法

能力:「レギオン」

加護:ー

アドバイス:「山も海も空も一人ぼっち」

______________________________________________________________________________


「うわ、チュビヒゲって名前ついてる!?まさか、本当に?チュビヒゲ!なのか!?」


(モシ!でも、チュビヒゲは・・・。)


「タイラ、人工精霊と契約してるです?」


「人工精霊?」


{ペシッペシ}



チュビヒゲは何やら嬉しそうに触手のようなヒゲでタイラの顔を叩いている。



「契約・・・ではなさそうです?あ、摂食です?」



ーあ、なに、俺、食べられてた感じ?


(タイラさん・・・精霊って?)


「あ、ああ、口から漏れてた・・・。えっと、グプタが言うには精霊らしいですよ。チュビヒゲは。」


ーもしかして、精霊は復活できるとか?


「蘇生とは違うです。精霊は分霊できるです。それでもってこの精霊は意識を共有してるです。」


「意識の共有?」


ーそれってつまり・・・ステータスのこの数字・・・。


「同じ意思をもったチュビヒゲがたくさんいるってこと!?」


「そうです。」

「チュビ〜。」


(モシ!そんなことがあるんですか?)



ーそうかこの<レギオン>ってのはそういうスキルだったのか・・・。


「ともかく、チュビヒゲは永遠に仲間ってことか!」


{スリスリ}


夜明けの薄明の中、チュビヒゲが再びパーティーに加わった。いや、むしろ、チュビヒゲが永遠にスタメン入りした。


「なるほど!チュビヒゲは永遠に不滅です、と!」


目の前でチュビヒゲとグプタが握手している。



ーあ、そこ、感性で繋がっちゃう感じね・・・。



どちらもよく分からない生き物ではあるが、とにかく”ファンタジーっぽい”括りであることに間違いなさそうだった。




チュビヒゲは離しませんよ?

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