表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
彼女は幸せになれないー巻き込まれ転移男の異世界奇譚ー  作者: 赦す内燃機関
第2章:ニラは焼かないでは食べられない
47/67

第32話:何一つ分かり合えなくても


 数十秒、熱風に耐えながら、なんとか建物のある区域まで逃げ込めた。あとは反撃するだけだ。


(じゃあ、私は回り込んでリーダーのあの子を、タイラさんは魔法の射程をうまく避けながら、手下を巻いてもらうといいことでいいですか?)


(お願いします。いくら泥を塗っても、風上であの熱風に当たったら、一瞬で持ってかれそうです。アニマさんもどうか気をつけて。)


(タイラさん、武器は?)


(え?えっと、なんとなく、僕は素手の方がよさそう気がします・・・なんとなくですが・・・あはは・・・)


(何かあれば念話で。)



(はい。)



アニマがサッとその身を翻し、建物の背後に隠れながらアネゴに迫る。向こうの様子はー


「手下四人は建物の間に散らばってるです。アネゴは・・・ノロマと一緒に開けたところから動かないです。」


そう、グプタレーダーによって丸わかりなのだ。僕が動き始めると、すぐに手下の一人と会った。小柄な体型でこんぼうを持ったやつだ。



「ハン!見つけたぜ!丸腰の魔法使い!さっきも守られてた!お前なんざ余裕だよ!」



「うーん、話し合ったりはできないものですかね?」



「なんだよ・・・おまけに言葉もまともに喋れねえのか。」



この世界では、言語は一つといっていい。すなわちニラヤ=カナイ語にあらずは、言葉にあらずだ。無論、日本語などは通じない。こちらが”解釈”する一方である。その間にも、盗賊はこんぼうを片手にもって、軽やかに直進してくる。



「タイラはどうするです?」



「あ、ああ、そうかグプタは知らないのか。たぶん、殴れば勝つと思うんだけど・・・どうかね。」



「は!なんだその腰!てんで素人かよ!おらよっと!」



{バキイィ}



僕の目先で振り上げられこんぼうはまっすぐに頭に落ちてくる。僕は相手が予想したであろう通りに、左手を上げてそれを受けた。結果は単純だ。こんぼうがへこんだだけだ。


「は?お前・・・身体強化系か!?」


「タイラ、魔法なんて使ってないです?」


「ま、まあ、地球生まれは頑丈なんだよ。」


あとは一方的だった。こんぼうがいくら振られようと、少し衝撃が来る程度でまるでダメージがない。おまけに、1回ポカっとなぐれば、相手はそれだけでのびる。同じように残りの四人も、一対一で戦って、ぽかっと殴り、あっと言う間に勝った。金属の棒や、槍のようなものもあったが、結果はいずれも同じである。


ーなんか”良く無い”成功体験を得てしまった気がする。


「タイラ、強いです。」



空中ではねるグプタをよそに急いで、アニマの様子を見に行く。アネゴが手を目の前で合わせ火魔法を使うところだった。


「燃えるべくして燃えるものを! ”BRULIGU”ー(燃えろ)ー」


アネゴの”詠唱”はヴァルマのそれより短く、勢いも低い。しかし直撃すればただじゃいられないだろう。


{シュッ}


アニマはとっさに、腕を振り払いローブで顔を隠した。


「このまま燃え尽きちまいー」


{ドスッ}


「痛っ!」


アネゴの手には、アニマが腕を振り払いざまに投げたダガーが刺さっていた。必然、気を取られて魔法が中断する。アニマは瞬時に肉薄した。


「ふん!小賢しい真似をしてくれるね!でも、あんたに武器はもうないよ!」


アネゴが包丁を構えると、乱暴な手つきでアニマの顔を狙って振り回す。二人とも素人とはいえアネゴの手振りにはためらいがない。本気で殺しにかかっているものと見えた。アニマはかわしながら、手元を狙っている。



「最後にお訊きしたいことがあるのですが。」



「アンタらに話すことなんてないよ!」



「・・・どうしたら許してもらえるでしょうか?」



アネゴの手が止まる、手が震えている。その目はまっすぐにアニマを見つめたまま。


「ふざけるのもいい加減にしろぉぉぉ!!もう、2度と、もう2度と、失ったものは帰らないって!知っているくせに!!」



ーまずい、あの距離で一度立ち止まってしまったら、急にはよけれない!



「だからせめて死ね!!」



アニマの顔に包丁がまっすぐに伸びた。








{カラン・・・}








「アニマさん!!」


「モシ?」


ーあれ?


アネゴはそのまま、立ち尽くして、手から包丁を落とした。体に力が入らないのか、プルプル震えている。


ーあ、そのダガー・・・麻痺が付与されているんでしたっけ?


忘れがちな設定ってやつだ・・・第1章の9話にしかでてないじゃないか・・・。



アニマの肩にポトリと小石があたる。見れば、少し離れたところから、ノロマが石を投げている。



「・・・アネゴぅ!!・・・」



アネゴが殺されると思ったのだろう。



「こ・・・ろせ・・・さっ・・・さと・・・殺すが・・・・いいだろ・・・。」



ーふむ、殺すことはないよな。これ以上、もう彼等が失う必要なんてないよな。



「あ、アニマさん、もう行きましょう・・・。彼女たちは”救済”は望んでないと思いますよ?」



アニマはゆっくりとアネゴに近づいて、態勢を仰向けにしてやった。手にはふたたびダガーが握られている。



「苦しみから解放するにはこれしか・・・。」



ぼくはさっと近づくと無言で手を握る。アニマは時間をかけて振り返ると僕の目を見た。




「・・・。」



アニマの耳元で質問をする。二言三言話すと、僕はアネゴに向き直って歩いた。



「Mi esperas al vi felic(^)on. ・・・。えっと、なんでしたっけアニマさん?」



(G(^)is revido です.)


「ああ、G《^》is revido !」


ーなんてことない別れの挨拶で別れたい。僕らのことなんて見たくもないだろうけれど、どうか彼らには幸せになってほしいよ。


「ッ!!!お前!!・・・消えろ!!・・・2度・・・と・・・2度と!・・・・私たちの・・・前・・・現れるな!」



アネゴの目を僕はまっすぐ見た。決して、冷やかしたのでもない。蔑んだのでもない。憐れんだのでもない。僕は僕の無力が悔しかったのだ。せめて、本当の気持ちを伝えたかった。もしかしたらそれはあまりに傲慢なのかもしれないけれど。





そして僕らは逃げるように足早に、とても重たい足取りで魔法アカデミーを後にした。



 僕はなんとなく寂しくなってアニマの手を繋いだ。いつも想像よりも冷たいその手は、そのいつもより冷えているように感じた。アニマは少しだけ驚いて、それでもいやがりはしなかった。



(巻き込んでしまいましたね・・・。ごめー)


「あの!!」


「モ、モシ?」



「謝ったりはしないでほしいです。」



アニマをアニマ足らしめている気高さが今、揺らいでいるような気がする。主人への絶対的信頼と、目の前の苦しみと、アニマ自身の中のためらい。だけどその何一つも、アニマの罪だとはどうしても思えない。願わくは、どうか、その中で自分が良いと思う道を、自分も他人も許す道を見つけてほしい。



「残酷な話・・・かもしれませんけど・・・ね。」



次の目的地の街まではあと数日だ。そこからアライテルのところまでは村を1つ挟んで、そう遠くない距離にある。それまでに色々と、ゆっくりと、答えが出ればいいと思う。



「あのう!魔道器グプタを置き去りです?」



ーん。いや、今回の展開的にはそうだが・・・・グプタを連れ出したのだから、うーん・・・これは言葉の綾だ。



「まあ、空気の読める魔道器グプタとしては、おとなしくしてるです!」



ーなんだ、気を使ってくれているのか。本当すごいなグプタ。



「できればまた、ちゃんと見てみたいな、あそこ。」



僕が独り言気味にそういうと、他の二人もそれに応える。


(そうですね。前時代のこともわかるかもしれませんし。もしかしたら、帰る方法も・・・。)


「んー私はもういいです。」



ーまだお昼の12時前だというのに、なんだこの神妙な空気は。。。それにこの絵面・・・うん、なんか、家族旅行みたいだ。一人浮いてるけど。・・・物理的に。・・・ん、なんか面白くなってきちゃった。。。



「ぷは・・・ごめんなさい。笑うとこじゃないんだけど・・・ぷはは。」


「「??」」


「ともかく、もうしばらく宜しくお願いします。不束者の地球人ですが何卒。」



「モシ?」

「何の話です?」


アニマとグプタがこちらをみる。



(やっぱり地球人て)

「やっぱりニンゲンて」



(変ですね。)

「頭オカシイです。」


ーそれは言い過ぎだろう!



破れかぶれな展開で、僕たち3人は連れ立って歩き出した。



結局、フィジ・・・。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ