第30話:盗賊と商人と通りすがりのものですが
おまたせしました・・・といっても虚しく響くので、評価をぅ・・・フィードバックをくれぇ・・・。
本当にモチベーション上がりますので!
騒がしい様子を聞いてやってきたネティマスは、挨拶をするなり里に帰っていった。集落周辺のパトロールがどうこうとのことだ。”何か困ったことや情報があれば腕輪でよんでください”などといって空の彼方に消えていくその姿。それははさながらヒーローである。魔道具グプタのことは見えていないようであり、説明も面倒なので省略した。
「それにしても魔法アカデミー、やっぱり雰囲気のある建物いっぱいあるなあ。あそこの3階建てのレンガの家だって、いかにも古い本がありそうだし!よっしゃいっちょ探索するー」
{ズウウン}
「「??」」
声の方向はいくつかレンガに似た作りの建物を抜けた先、少しひらけた場所のようだ。アニマと目を合わせて急いで向かう。
ー僕ら以外にも人がいるのか?
「馬車の周囲に人影が1、2、3・・・6人いるです。」
ーグプタやば使える!
・・・
開けた場所につくと馬のような生き物は外傷もないまま横に倒れており、人の乗る布張りの屋形から恨めしそうにヒゲを生やした男が外に乗り出していた。薄汚いボロボロの布を顔までまとった盗賊の集団は四方を包囲し、逃げ場はどこにもないようだ。
ー<解釈>
「これ以上は逃げられない。ここに逃げ込んだのが悪手だったね。この廃墟はあたいらの庭さ。」
「ックソが!お前らみたいな盗賊ごときにやるものはねえよ!」
「ケチなこと言わずさ、お金と商品をおいてけば命は取らないって寸法だよ?悪かないだろ?」
「はぁ・・・てめえら俺の馬に傷つけてねえだろうな?」
ーあれ、”解釈”の精度上がってる?
「グプタと意識を共有してるからです?」
ーグプタやば使える・・・むしろちょっとひいた。
「しょうがねえ、商品には手をつけたくなかったんんだけどな。ああ、まったく最悪だ・・・。」
そういうと、男は木の箱に被せられた布を取り払った。箱を開けて男がおもむろに取り出したものはー
「銃・・・?まずい!あんたたち、距離をとりな!」
「「「「うす!」」」」
盗賊の子分と思われる1人が周りを見渡してから遅れて返事をする。
「・・うっす!」
商人と思われる男は真っ先に彼に照準を向けた。ベラローゾが持つものより銃身の長くがっしりしたもので、それは現代でいうところのアサルトライフルのように見えた。
「ちょ、卑怯者!!・・・ノロマ、よけな!」
「誰が卑怯者だ。まったくこれだからガキどもは・・・。」
{チューン}
「・・・昔から大嫌いなんだよ。」
{ババババッ}
「えっ・・・え。」
乾いた音で連写音が響く。”ノロマとよばれた盗賊は他のものより一拍おくれて、バックステップで背後に下がろうとする。魔力で作られた球がその前方を這うようになぞると、あとには小指の先ほどの穴が空いた。リーダー格の盗賊は必死で詠唱をする。
「ぶつかり合っては熱を生み、彼のものを包め "BRULIGANTA VENTO -(燃える風)- "」
詠唱とともに、熱風が場所を包む。熱風に当てられた地面の草は干からびるように縮れて黒く変色した。
しかし、商人が乗る布は魔法で守られているのか、なんの変化も受けない。
「・・・!!!」
{ババババ}
「あ・・・。」
地面の穴が途切れ、最初の数発が彼の足に消えた。避けようとする勢いもそのままに滑るように倒れこんだ”ノロマ”は、続く数発のうちに腹と肩に弾丸をくらい、鈍い呻き声をあげた。そして一拍を置いて、揺れるボロ切れに血のシミが広がっていく。
無残に穴だらけになった布切れから覗くその顔は、まだ10歳前後の少年のように見えた。
「う、うわぁ・・・。痛い・・・痛いよ・・・。」
「ノロマ!!!!」
ーむ、酷い。いくら盗賊が悪いとは言ったって・・・こ、これは一方的だ・・・。しかも子供じゃないか。
「ハ!いい気味だ。おまけにこりゃあ爽快だ。よーし、せっかくだしな、うん。止めを刺してやるよ。」
僕はとっさに飛び出してしまった。
「も、もういいだろう!」
「んあ?ちっ・・・。」
商人の男は舌打ちをするとこちらを向いた。そして、もちろんその銃口もこちらに向いていた。
「誰だいあんた!危ないよ!」
リーダー格の盗賊は”ノロマ”にかけよりつつこちらに目を向ける。
「通りすがりの異世界人さ!」
{ババババ}
「ヒィッ!!!!」
(タイラさん!)
ーカッコつけました、すいません!
僕は咄嗟に建物の陰に隠れようとするが、すぐ目の前の地面に銃痕がでてきて尻餅をついてしまう。
「グプタ!!け、け結界魔法とかない!?」
「あるです・・・けど、もう止んでるです。」
「ん?なんだお前らその身なり、冒険者か?ちょうどいい、こいつら盗賊だ。やっちまってくれよ。」
気づけば目の前には自らを盾にするようにアニマが立っている。盗賊たちの目がフードを目深にかぶったアニマに守られる僕に集まる。
「「「「「なんだアイツ?」」」」」
ーうわ・・・・なんか俺どこまでも情けない。
「はあ。ともかくだ、俺も遊びでやってるんじゃあない。あとは任せたぜ。」
そういうと、商人は倒れている馬のような生き物を鞭で叩き起こし、そそくさと去って行ってしまった。後に残った盗賊たちは、恨めしそうに眺めるだけでこれ以上追いかけようとはしない。手負いの部下を抱きかかえるリーダー格の女性は泣きそうな声ではげましている。
「”ノロマ”何たっていつもあんたは”ノロマ”だよ。一緒に腹一杯のご飯を食うんじゃなかったのかい!」
もはや地面にまで血を滴らせる”ノロマ”は見るからに瀕死の重体だ。盗賊の一団はすでに一箇所に集まり、こちらを気にしながらも仲間を哀れむように慰めている。
「あ、あのう。あ、通じないんだった。えーと、、、ああそうだ、Bonan matenon。」
リーダー格の盗賊がこちらをみる、フードから覗く顔は・・・涙目の少女だった。
「冒険者にくれてやる手柄はないよ!兄弟の体は渡さないからね!」
「渡すものか!」
「国の犬が!」
「成り上がりめ!」
「刺し違えてやる!」
「・・・痛い・・・」
ーうう、せめてあのリーダー格とだけでも・・・"意思よ共有せよ!"・・・。
(もしもし?)
{・・・}
「タイラ?通じてないみたいです。」
ーく・・・だめか・・・。
(あ、アニマさん、なんとか説得できませんか?あるいは彼の傷とか塞げたりは?)
(モシ、やってみましょう。)
・・・・
フードを被ったアニマが近づくと、盗賊の一団は臨戦態勢をとる。僕らを敵とみなしているのかアニマの言葉にも耳を貸さない。
「うんざりだ!子供だと思って!!何も持たない私たちから、これ以上、何を・・・何を奪うって言うんだ!!」
ーうーん、相当警戒している。子供の盗賊ともなれば、壮絶な事情があるのだろうと察するに余りあるけれど・・・。どうしよう、とにかく傷を塞がなければ死んでしまうし。どうすれば・・・どうすれば・・・。
「タイラ、ちょっと気絶させたらどうです?」
ーん?何その不穏な手段。そもそも、こんな距離でできるのか?
(アニマさん、みんなを同時に気絶させたりできますか?)
(モシ・・・確かに、精神魔法は広範囲でも使えます。それに、彼らはまだ子供で、耐性もなさそうです。しかし、一人では・・・。あ、タイラさんも同時に詠唱してくれれば。)
僕とアニマは、彼らにゆっくりと近づく。グプタは僕の手に手を置くーー感触はないーーと彼らに手を向けるようにジェスチャーした。
「あの”ニンゲンモドキ”と息を合わせるです。同時に発動させるほうが効果的です。」
ーそういえば、アニマの得意な魔法は相手を失神させる・・・魔法だったな。あれ、なんか今、引っかかったような・・・。ま、まあいいか。
(アニマさん、一瞬失神させてしまいましょう!僕にタイミングを合わせてくださいませんか!)
(モシ、もういっそのこと彼の者を救済しては・・・?)
(アニマさん。)
(・・・いえ、わかりました。)
「いいです?1、2の3でいくですよ?1、2の・・・」
ーちょっとまって、呪文くらい覚えたい。
(アニマさん、呪文なんでしたっけ??)
(・・・本当にできますか?・・・PERUDU CONCIOUS です。)
ーあ、グプタさんお願いします。
「ではいくです。」
((1、2の・・・3ー))
「「PERUDU CONCIOUS -(失神せよ)- 」」
ーうおおお!なんか今、指先がピリリと何か弦に触れるような感覚があった。成功か!?
{バタッ バタッ バタッ ・・・バタッ }
(タイラさん、あの子、まだ意識あるみたい。)
リーダー風の少女だけは、よろめき床に手をつきながらもこちらを睨んでいる。
「あんたらも・・・やっぱり・・・他の奴らと一緒だ・・・。優しそうな顔をして・・・私たちから奪う・・・。」
(あのホーマは魔法に精通しているみたいですね。えい、もう一回。)
「PERUDU CONCIOUS 。」
ーうん、容赦ないねアニマさん。
アニマの泣きのひと押しで、全員が意識を喪失した。半ば駆け足で彼らに近づくと、何日も体を洗っていないせいであろう饐えた匂いを感じた。肌は浅黒く、ところどころに傷がある。そしてなにより、彼らはいずれも10代の少年少女たちだった。
」
(タイラさん、できれば同時に治療魔法を。傷が深すぎて私だけではダメです。)
ーグプタ!治癒魔法を教えてくれ!!
「これだけの傷なら中級の治癒魔法が必要です。それをグプタを経由して使ったら・・・タイラの魔力尽きるです?」
ーうん!そんなん一択に決まってる!
(ありったけの魔力で、治療しましょう)
こうして”ノロマ”の傷が癒えるまで僕とアニマは無言のまま、治癒魔法をかけ続けた。治癒魔法は細胞の動きを活性化させるのか、傷口の組織がみるみる新しくなっていくのがわかる。体に埋まっていた魔法弾の数は10個にも上り、これを取り除くために、手を突っ込まなくてはいけなかった。”ノロマ”の体温はすっかり冷え切っていたものの浅い呼吸だけは絶えることがなく、死に際にあって彼の生きようとする意思のように感じた。
グプタ神回。




