第3話:意外とすぐ会える
パン屋でメロンパンと、朝食用の食パンを一斤買って家に帰った。地味に、アスファルトを叩いた手から血が出ていたり、ジーパンに擦れたあとが残ったが、そんなことどうだってよかった。
「あの感じ、どう考えても普通じゃないよな。黒い影に、即効性の毒、それに即死級の可愛さ。。。。女神かよ。。。。ああ、っていうか一体何をするつもりなんだろう。ネットになんかあるだろうか。」
頼る友人がいないわけではないが、今回に限って頼れる人がいる訳はない。そして、それを自分だけが知っていることに何故かワクワクしていた。
「どうせこの街がダメになるにしても、せめて死に前にもう一回会いたいなあ。」
なにより、僕の心は完全に浮かれていた。
・・・
時計は午後11時を回っていた。
「わかる訳ないか・・・」
ーどうせ明日だって何もない、僕は何も考えたくなくてノートパソコンを閉じて、外にでた。たばこを吸う為だ。
どうせ吸うのならと、近くの公園に来た。肌寒いこの街の秋は缶コーヒーが恋しくなる。微糖の缶コーヒーを片手に、ブランコに揺られながら煙を吐いた。
ーはあ・・・やっぱりあの子のことが気になる。
その瞬間、遠くで消防車のサイレンが響くのが聞こえた。おそらく火事だろう。
家に戻り自転車にまたがる。やっぱり何かが引っかかり、彼女の影が頭をよぎった。彼女には目的があった。何かあるとしたら、関係していてもおかしくない。
火事の現場までは自分の家から5kmも離れていなかった。
サイレンの音を頼りに1時間近く闇雲に探し回った時には、民家からあがる炎のほとんどは鎮火していたが、なにやら死人がでたのか周囲は物々しい雰囲気だった。路肩に2台のパトカーが止まっている。一台はもぬけなの空だったが表に2人の警官がおり、もう一台には3人の人影があった。
見れば、中にはさっきの彼女がいた。良くない推理が頭の中を駆け巡る。
ーこれは彼女がやったんだ・・・しかしおかしい、たかだかこんな程度の為だけにーー火事を起こすのにーー、明らかに超常の存在がどこからともなく現れたというのか?
その刹那。パトカーが揺れた。窓ガラス越しに、彼女が何かを振り上げるのが見えた。それは今まさに彼女はどこからか取り出した漆黒のダガーで警官を刺し殺すところだった。