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彼女は幸せになれないー巻き込まれ転移男の異世界奇譚ー  作者: 赦す内燃機関
第2章:ニラは焼かないでは食べられない
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第23話:つま先から足の先まで

{ピトッ}


ー・・・ん?


次の日の朝は早かった。時刻にすれば初夏の4時くらいだろうか。空がかすかに青白んでおり、そして雨が降り始めていた。


「わわ!雨だ!!」


「アニマさん!起きて!!雨ですよ雨!」


(・・・モシ?)


「ここじゃ濡れてしまい・・・ますよ?」


ーおや?アニマのローブが濡れていない?


(あ、雨・・・。)


アニマは枕にしていた毛布を麻の袋に入れるとそそくさと立ち上がった。フードをかぶったまま寝ていたため、表情はよく見えない。


「そういえば、タイラさんの服には水耐性が付与されていないのでしたね。どうしましょう・・・」


ーアニマさんのローブはレインコートにもなるというわけか。フードも飾りじゃないのよフードは、というわけね。


(困りましたね。私はこのまま、ローブのおかげでどうにかなりますが。タイラさんは濡れてしまいます。あ、この魔導帽で少しでも・・・。)


アニマは枝にかけていたヴァルマさんの魔導帽を僕に差し出した。


ー濡れない方法、濡れない魔法・・・あ、閃ききた。


「あー・・・でももしかしたら。」


僕はおもむろに頭の上にいたチュビヒゲを手に移動させ、頭の上に向かって下から空気を送り込むイメージをした。上昇気流を作り、頭のてっぺんで周囲に拡散させる。魔力は昨日の食事と、睡眠でほぼ全て回復したようだ。


ーおおお、いい感じだ。もう少し風を弱くすれば魔力の消費は・・・よし、10秒で1程度か・・・これなら4時間くらいは持つな。


「あ、いや、魔法でなんとかなりそうです!・・・ん?」


「チュビ〜」


チュビヒゲが手の間からすり抜け頭の上に移動すると、上昇気流に乗っかってーー人の頭の上でーーホバリングをした。


羽を伸ばしたチュビヒゲを起点に乱流が生まれると風の層で水滴が弾かれる。


「おお、すごい!これならほとんど濡れない!」


羽を広げたチュビヒゲは僕の肩幅より少し大きい。そこに風の魔法を這わせるとほとんど濡れず、うまく水がはけてくれる。その上、魔力の消費は30秒で1程度なので、半日ほどは持つことになる。


「チュビヒゲに風を這わせれば、ほとんど濡れなさそうです!!!」


(モ・・・モシ、タイラさんやりますね・・・)


「チュビー!!」


チュビヒゲはやたらと上機嫌でヒゲを僕の耳に絡ませ、気分はさながら舵取りのようにそれを動かした。


ーや、やや麻の袋が濡れるからやめて・・・。


「じゃあ、ちょっと早いですけど今日も頑張っていきましょうか。えっと・・・アライテルに向けて。」


ー少し言い澱むのは仕方のないことだ、僕だって感情がある生き物だものっ!


(ええ、それとタイラさんの住むところも。)


「あ、そういえば、それもそうですね。」


ーそういえばそれもそう・・・か。僕はこれからこの世界で生活しなければいけない生き物だもの・・・。


僕らは雨の中、重い足取りで無言のまま歩き始めた。僕が無言だったのは風の魔法に意識を集中し続ける必要があるからだ。アニマは時々僕を気遣い、休憩を挟みつつ風の魔法について質問してきた。昼ごはんにはパンは歩きながら食べたのもあり、会話はほとんどなかったといっていいい。



ーふう・・・なんだか雨の日は憂鬱だ・・・。



 雨は1日降り続いて、上半身こそ濡れなかったものの、僕の靴もアニマの靴ーー僕があげた大きめのサンダルだーーもすっかりずぶ濡れになってしまった。ついでに言えば、アニマは風の魔法を多少ならず習得しているようで、時々水たまりなどを吹き飛ばしていた。道中不思議なまでに民家はなかったし、ヴァルマさんの話ではおそらく次の村までもあと1日はかかる。


ー・・・どうしたものか・・・。雨の中で寝るのは流石に・・・。


日が暮れる頃合いには疲れのせいもあって、僕は少し憔悴していた。


「アニマさん、今日の夜はどうしましょうか?」


「・・・」


「アニマさん?」


「チュビ !」


(何か来ます!)



{バサッ}


遠くで小さく翼のはばたく音が聞こえる。


ーこの音は・・・確か・・・


「「「ドラコ!」」」



ーおー!2人と1匹の声が重なるとこうなるのか!じゃなかった!ってことは例のあいつが・・・。


「早く物陰に!」


(もう遅いです!ほら、後ろの上空からこちらに向かっています!)


アニマがこちらを見ている。チュビヒゲはすでに戦闘体勢なのか、踏ん張るように頭の上に止まって目をきょろきょろさせている。複眼だけど、たぶんきょろきょろさせている。


「前に追い返せた時は僕が不意打ちをしました・・・でも今回は・・・厳しいかもしれません。」



{バサッ}



音はすっかり近くにいる。今では僕の視力でもはっきりとドラコと黒いディアブルの姿が見える。2人とも黒色の甲冑に身を包んでおり、前回よりも本気であるのがわかる。手には弓と思われる褐色の弦を持っている。


ーステータスをば!!

________________________________________

名前: ー?ー( -? -)

種族:ドラコ

性格:剛健

魔力保有量: 1800/2000

体重:63.5 kg

状態:ー

魔導:属性魔法 (火・風) 武法:狩

能力:「耐性(火)」

加護:「龍の息吹」

アドバイス:「類は友を呼ぶ」


<狩:対象の索敵・把握に特化した武法。>

<耐性:各種魔法や物理的な衝撃に対する魔法による緩和。成長する。>

<龍の息吹:魔力の吸収を促進し、回復を促す体質。>

________________________________________


ーやっぱり魔法も使えるのか。てか、スキルが強い!暗くても森の中でもいちいち見つかるのは、武法:狩とかいうやつのせいか?そういえばベラローゾさんにもっと聞いておけばよかった。えっと、男の方はどうだ?


______________________________________________


名前: ー?ー( -? -)

種族:ディアブル

性格:信賞必罰

魔力保有量: 2650/3100

体重:5.6 kg

状態:ー

魔導: 精神魔法 治癒魔法 属性魔法 (火・風・土)  

能力:「龍の脈動」

加護:「義憤」

アドバイス:「類は友を呼ぶ」


<龍の脈動:龍族との間で魔法の干渉が起こりやすい。>

<義憤:怒りの加護の1つ。義憤によって魔力操作能力向上。>

________________________________________


ー魔力保有量も、魔法の数も今まであった中でずば抜けて高い!しかも、よくわからん能力や加護のオンパレードじゃねえか。不意を取らない限り、勝ち目があると思えない。。。



「まずいな・・・本当にまずい。。。ってかこの世界、本気すぎるだろ・・・。なんでこんなに僕に目をつけてるんだ?」


黒い塊はすでにもう100mほどの距離に迫っている。黒い男は手に弓を持っており、気づけばどこから出したのか、矢を装填するところだった。ドラコは口から煙をあげ今まさにブ・・・


「火 火 !」


一番最初に反応したのはチュビヒゲだった。解釈を発動していてよかった。


(これは!炎の息というやつかもしれません。風の魔法で分散しましょう!イメージは前方10m先に上昇気流を!!)


ーちょちょちょ、まってよ!まだ僕もアニマも実戦とかのレベルじゃ・・・。アニマどんだけ度胸あるんだよ。


「う・・・ええい・・・ままよ!!!


ー1、風の壁が目前にあるのを意識する。2、空気を足元から集める。3、登るような空気の壁を、壁を・・・。


ドラコはもう50m手前に迫っている。黒い男は弓をこちらに定めていた。


ーああ、くそ、弓矢もあるんだった!!!しかもなんで俺なんだよ!?


「クゥゥオ・・・ギュアアアア!!」


{ゴオオオ}


ドラコの鳴き声とともに青色の炎が眼前に広がる。思ったよりも範囲は狭く勢いも少ない。だがー


「・・・だめだ!やはり、体から離れて風を送るだけじゃ、風圧が弱すぎる!」


(タイラ!散開を!)



熱風が頬をかすめると、チュビヒゲが慌てて背中の後ろに隠れた。


ー後手に回ればいいように的になるだけだ。こうなれば一か八かで・・・。


僕は意識を手のひらに集中し、空気の圧縮球を意識した。昨日試した”風爆”?とかいうやつだ。


「アニマさん、僕の後ろに立って、空気を僕の周りに集めてください!」


(モシ!!)


ーっ!!!! ”モシ”って、肯定の意味でも使うのか!!!


 くだらない驚きで冷静さを保ちつつ、周辺の空気を掻き集める。先刻起こした前方の風の流れは魔力を絶ったために、すでに弱まっており、ブレスが徐々にこちらに近づいている。前の世界では体験したこともない、絶望的な光景だった。僕はおもむろに腰をかかがめると、ピューピューと音を立てる空気球を床に押し当てた。


「空気よ頼む 押し返してくれ・・・いけ!!」


{・・・ビュオオオ}


ーッイタ・・・。舌噛んだ・・・。


風は手と地面に遮られながらーーといってもすでにタイラは後ろに吹き飛ばされ尻餅をついたーー、向かって前方上方向に吹き出した。ブレスはマッチの火のように風に煽られて揺られ、一拍遅れて周囲の草木が燃える匂いが立ち込めた。


「ヤッタ・・・か?」


{ドスッ}


変な音に気を取られ、周りを伺う。よく見ると尻餅の弾みであけっぴろげになった腹に矢が刺さっていた。


ーえ、うそだろ????????いってえええええええ!!!


「はあ、はあ、僕・・・死ぬの?」



ー止血!早く止血しないと!そうだ、チュビヒゲの治療魔法でなんとかしてもらえるはずだ!


僕はおそるおそる手で腹を触った。


ーい、イタっ!いけど、そんなに・・・じゃない?あれ、血も・・・そんなに出てない?


よく見ると矢尻の先は服を貫通し、腹に到達しているものの刺さっておらず、すぐに床に落ちた。衝撃を感じたし、事実血も滲んでいたが、総じてうっかり手を包丁で切ってしまった程度の怪我だ。


ーえっと・・・・・。あ、うん。


平凡なる男タイラは何の因果か、軟弱な体に似合わず”この世界”での物理耐性が高かった。

体が資本です。。。

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