第21話:マジカルマジカルラミミミ
村の入り口と思われる、柵の1km手前で僕らはヴァルマ一団と別れることにした。近づき過ぎれば、村人に何を言われるかわからないというヴァルマさんの言葉と、そして僕自身の不安のせいだった。初めて出会ったホーマが理解のあるベラローゾ、ヴァルマ、ススーリだったからといって他のホーマまで信用する道理にはない。少なくとも僕はそう言う人間だった。
ー思い返すと、ベラローゾさんもヴァルマさんも、アニマと直接話すことは滅多になかったな。やっぱりアライテル教への警戒とか、キメラに対する恐怖心があるのだろうか?
「あ、それじゃあここらへんでお別れですね。」
ベラローゾさんは握手を求めて伸ばした手を、まじまじと見ながら呟いた。
「せめて、魔法が使えれば安心だが・・・。」
ーカッコいい・・・あ、いや、つい忘れがちな設定だけど、言葉が荒っぽいのは別に彼女の性格の問題ではなく、今のところの僕の翻訳機能の問題だ!・・・でも、握手無視かよ!!
(たしかにそうだ。さっきみたいに獣を手懐けたりはできないのか?そもそもアライテルのところまで行く途中には物騒な連中や、物騒な獣がいるところもある、どうするつもりなんだ?なんなら、しばらくうちでー)
「ま、まあなんとかなるので安心してください。僕、結構強いんですよ?」
ー”強い”と言うか”重い”だけであるが・・・。あまり素性がバレるのも良くないし、煙に巻かねば。。
「ススーリ、また会いたい。元気でいろ!」
ーう、ススーリちゃんまじ天使!やっぱりあれか?自然の中で育つと、純度の高い心が育つのか?どうかまっすぐ、そのままの君でいてくれ!
「ヴァルマさん、ベラローゾさん、ススーリさん!また、かならず恩を返しに来ますので!それまで!」
ベラローゾとススーリの視線がヴァルマに集まる。ヴァルマは口で翻訳した。
「お前、か細いがいい性格のホーマだ。珍しい。」
ーどうしよう、目を瞑ると僕の中でベラローゾさんが屈強な女巨人みたいな風に再生されてしまう。
(気にするな!よく言うだろう!”お土産は無事故でいいですお父さん”!ってな!ハハハ!)
ー川柳!!それ子供川柳!!ぐぬぬ、異世界設定がブレ気味だ・・・。
「ありがとうございました!ではまた!」
「ありがとう。」
アニマと僕は後ろ髪を引く手を振りほどかんばかりに、ハキハキと別れの礼を済ませた。誰も握手をすることはなく、ハグをしたりすることもない。僕は一人宙に右手を浮かせたまま、パントマイムでもしてるかのような姿を晒してしまった。とにかくこっちの挨拶はそういうものらしい。
こうして、僕とアニマのアライテル行きの二人旅がふたたび始まった。ちゃっかり数日分の乾パンと干し肉をもらったので、餓えて死ぬこともない。僕は肩に目の荒い麻の袋をかけ、アニマの毛布も入った。幾ら何でも野宿するには軽装すぎる装いではあるが、アニマが旅路を急ぎたがったので僕も頷くしかなかった。
・・・
ーあれ、どうしよう、なんか気まずい。
僕は2人きりになると突然に恥ずかしい気持ちになった。思い返せば関係はあやふやだ。クサいセリフを言ったかと思えば、喧嘩になったり、はたまた感謝されたり。正直、アニマの僕に対する感情はよくわからない。すくなくとも嫌悪感は抱いていないようだが、しかし好意的なのか、もっといえば異性としてみられているのかもわからない。単調な道のりでは会話が命だ。それがなければ意図せずとも、居心地がわるくなってしまう。ヴァルマさんの話では次の村までは歩いても3日間、そこからアライテルの宮殿までは途中に大きな街を挟んで2週間ほどの距離であるとのことで、その間には小高い山と平野ばかりで、珍しいものはないとのことだった。
「あ、あの、ホーマって地球の人と全然変わりませんね!!」
「ええ、そうですね。」
・・・
ーとまあ、こんな感じだ。あれ、アニマってこんなに無口なキャラだったっけ??
僕はしょうがないので、アニマに精神魔法のテレパシーを解除してもらって、自分からかからないか試すことにした。なにごとも試行錯誤と練習だ。
「じゃあ、練習したいのでアニマさんは一回、テレパシーを解いてください。」
「ええ、どうぞ、好きなだけ試してみてください。タイラさんもこの世界になれた方がいいでしょうし。」
アニマは僕にはだいぶ喋ってくれる。気を使っているのだろうか?
ーええと、確か・・・
「思いを受け止め、思いよ届け。揺れる脳波、電気信号の点滅。同期せよ!意識!」
ーとかじゃなかったかしら?まあ、魔法はイメージと道理の理解がだじだと言っていたし、多分いけるだろう!
僕は声に出さずにアニマを呼んでみた。
(おーい!おーい!)
アニマはピクリともしない。
「意識よ同期せよ!!」
(わー!うおー!ウォーウイェイイェイー!ウォーウイェイイェイ。)
「・・・」
ーん。。。まだだめか?同期じゃなくて、同調するイメージが大切なのだろうか?もっと頭で脳波が共鳴するかんじとか?
「思考よ!共鳴せよ!」
(マイクテス、マイクテス! あめんぼ赤いなあいうえお! どうです?)
「・・・」
ーもしかして、こう、脳波とかじゃなくて、モールス信号みたいに電場信号が脳内で同期しているイメージとかかな?
「電気信号よ同調せよ!」
ーそれにやっぱり思いが大事ってこともあるな。
(おーい、おーい、アニマさんてば。冷たくしないでさー。はなそーよ。)
「・・・」
「チュビ?」
ーいや、なぜチュビヒゲ??うーん、ちょっとふざけすぎたろうか?もっと真面目にアニマに伝えたいこと、伝えたいこと・・・。
(かわいーな、かわいーなったら、かわいーな!)
「チュビ?」
「・・・(ピク)」
ーあれ、いま、ちょっと角が振動しなかったか?チュビヒゲに反応したか?まあいいや、もう一回ちゃんとイメージを詠唱してみよう。
「脳の電気信号よ、空間を伝搬し、互いに行き来せよ!」
ーさてと・・・。
(いやっふー!その控えめに巻いた角を撫で撫でしてみたいぜ!)
「チュビチュビ?」
ーいや、だから、なぜお前??・・・ちょっと”解釈”してみるか。
(アニマさん ハロー ハロー?)
「魔力?」
ーん?なんだ魔力が流れてるってことか?じゃあどうしてアニマには伝わってないのだろう。
(おかしいなー、どうしてテレパシーが成功しないのだろう?)
(モシ?成功してますよ?)
ーΣ!!じゃあ言ってよ!!!!!!
(えええ!じゃあ返事してもらっていいですか?)
(・・・??でも”練習したい”と言っていたので。・・・邪魔しては悪いかと思いまして。)
ー何その忖度!!練習はフェードバックのある方が、進歩が倍でしょうに!!ってかいつから聞いてたの!?もしかして、あの角か!あの角のピクってしたときか!?・・・くわあーちがうんだ、セクハラするつもりんなんてなかったんだ・・・く・・・。
(と、とにかくこれで僕にも魔法が使えることがわかった!)
ーなにより精神魔法のテレパシーが使えれば、いろんな人と意思が疎通できる。言語の習得は億劫だが、すこしでも会話ができれば、異世界ライフを楽しむことができる!!
僕は最後にステータスを確認した。
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名前:大凡 平 (おおよそ たいら)
種族:*ホモ・サピエンス>モンゴロイド>日本人
性格:優柔不断
合計魔力量: 1410/1520
体重:70.23 kg
状態:ー
魔導:精神魔法
能力:「解釈」
加護:「拾う者」
アドバイス:「千里の道も一歩から。」
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