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彼女は幸せになれないー巻き込まれ転移男の異世界奇譚ー  作者: 赦す内燃機関
第2章:ニラは焼かないでは食べられない
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第18話:向こう側で

「アニマ 体 細い」


「・・・」


{パシャ}



「アニマ 髪 長い」


「・・・」


{パシャ}



「アニマ 傷 痛い?」


「ない 問題」


{パシャ パシャ}


・・・


僕とヴァルマは、ススーリとアニマに先に水浴びしてもらっている間に、”紳士的振る舞い”と”見張り”を兼ねて川を背に精神魔法について話し合っていた。アニマとススーリの会話が断片的に聞こえて来て、僕はそれを<解釈>で盗み聞きすると思わず胸が痛くなった。


「・・・おまえの気持ちも分からないでもないが・・・奪い取るにしても・・・相手が相手だ、冷静になれよ。命がなければ、人を好きになることも、守ることもできないからな。」



ーヴァルマさんはまったく人が出来すぎてるよ。


僕は苦虫をかみしめるような顔で、ただうなづいた。


「そ、それで、つまり精神魔法は脳波に作用しているんですね?」


「・・・あ、ああそうだ。つまり、ほとんどの場合同じ種族それもある程度相性が良くないと成功しない。特にテレパシーはお互いの脳波を同調する魔法だ。精神構造の違う対象には効かないし、そもそも術者の意識が削がれたり、どちらかの精神が異常に興奮していれば成功しない。」


ーそんなに複雑だったのか。となると、僕とアニマが疎通できるのは一体どういうことだ?


「まあ、イメージを掴むだけさ。詠唱は自分で考えればいい。知りたければ教えるが?」


ー僕は慎重派である!


「念のためお願いします。」


「ん?まあ、もうほとんどわかってるみたいだが。ホーマの間でよく使われる詠唱はこうだ・・・。」



ヴァルマは息を吸い口を開いた。



「思いを受け取り思いを投げよ。思いは揺れる波、信号の明滅。意図よ同期せよ!」



ーなるほど、全部は覚えられないが、イメージが大切・・・と。



「特に最後は力強く言い切ったほうがいい!言葉にすると、意識が明確になるからな!」



「はい!ヴァルマさん!!」



{ピタッピタピタピタ}


・・・


{ピタッ}


「Varma , Susuri finitas !」

「タイラさん、ヴァルマさんどうぞ交代です。」


 僕は意識を魔法の練習に費やしてため、<解釈>をしそびれた。アニマの言葉はテレパシーの補助で僕の脳内で意味が理解できる。それでも念話ではなく渋目の声で言ったのはヴァルマさんにも聞こえるようにとのことだろう。


ーやっぱ地声もいい!


「じゃあ、さっそく・・・って、うわああ!」


しっとりと濡れた青い髪に、水を弾く黒い角。胸元にかかるタオルは一片は山々の輪郭を帯びながら揺れる。右手にもったタオルで左腕を拭くとそれは容易に捲れそうだった。その下には、白く伸びる御み足、そして青い・・・。



ータオル巻いてないどころか、服も着てない!!!!



 アニマは貸してもらった薄手の生成り色のタオルで体を拭きながら、僕とヴァルマに話しかけた。体にタオルを巻いてるのですらない。”拭いているのだ”。

 僕はとっさに下を向いた。さながらキョンシーのような立ち姿だ。


「ア、アニマさん、体を隠してから話かけてくださいませんかっ!」



ヴァルマさんには僕の言葉が伝わっているので察したのだろう。ぎこちない動きで、川を背にしたまま、ススーリを抱きかかえながら服を着せていた。


(モシ?)


「いや、”モシ?”じゃなくて??」


(私の体はやはり、見苦しかったでしょうか?)



「いや、だからそうじゃなくて!」



(確かに、タイラさん”美しい”と言及したのは顔の部位と肌と振る舞いについてで、体型や傷については触れていませんでしたね。やはり主様の仰る通りこの体は・・・)



「いや、だからそうじゃなくて・・・。」



(今度からは気をつけます・・・無理して気を使うのが地球人の美徳なー)



「違うって!アニマの体も素敵だよ!傷は痛々しくて悲しい気持ちになるけど、それだって”見苦しい”わけじゃなくて・・・恥ずかしい、そう恥ずかしいからだよ!ってかむしろアニマは恥ずかしくないの!!??お腹鳴った時は恥ずかしがってたじゃん?」



ー後ろでヴァルマさんが僕の言葉を聞いて笑ってる気がする。



(恥ずかしい、ですか?お腹が鳴ったときは・・・あれは侮辱的な音でしたので、失礼かと思いまして。悔しさと申し訳なさならありましたが。)



ーあのプルプル震えてたのに、自戒の念だったの?そんなこと・・・ある?こ、これが異文化理解ってやつか?


「わ、わかりました。えっと、なんだ。とりあえず、僕が落ち着かなくなるから、裸は禁止です!美しくてもダメです!」


ー実際。こっそり見るくらいが一番ありがたみがあるのだし!!



「・・・」


ーうーん、この間は一体・・・。


(もう着ましたので、今度こそどうぞ。)


僕がゆっくり上目でアニマをみると確かにすでにローブを見にまとっていた。濡れた髪が斜めにさす太陽の光をうけて煌めいている。そして今は、メガネを近くの岩場から拾い目にかけるところだった。よく見ると、銃弾で空いた胸元の穴は治っている。これもおそらくはこのローブにかけられた魔法の一部なのだろう。とにかく僕は無駄に荒ぶった心臓を落ち着けるように深呼吸をしながら、川の水面を眺めていた。


アニマはジトッとよく分からないと言った顔で僕をみている。


「ない 理解 地球人」


ーあ、アニマ、絶対”地球人はよくわかりません”って独り言言った!最近当然のように使っているけど、これがカルチャーショックだから!僕もわかってないから!!


「そ、それじゃあヴァルマさん入りましょう!」


「もういいのかい?若いお二人さん?」


「男 女!」


ーチッ!このおっさん!!そして、ススーリは何言ってんだ!


 僕は何も言わずに服を脱いで水に入った。4日ぶりの”お風呂”ということもあり、あるいはなぜだか体が火照っていたこともあり、水浴びがとても気持ちよかった。

 先ほどからきている服は朝方ユニ○ロの服と交換した、ヴァルマさんのお古だという紺色の長袖シャツに、白いゆったりとした長い丈のズボンだ。靴はABOマートで買った3000円の黒色無地のスニーカーなので、ぱっと見ではこちらの世界でも変には思われまいと高を括った。


ーそれにしても相変わらずアニマさんの破壊力がすごいぞ・・・。


帰り道、ヴァルマはススーリに魔法をせがまれて色々とやって見せてくれたので、僕は余すことなく学び取ろうと、細かい解説を求めながらそれを血眼で見た。ちなみにいまだに、僕は一つも成功していない。もう一つちなみに、家に着くまでアニマとは目を合わせることができなかった。




水辺の濡れ場・・・トートロジー?

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