第17話:異世界っぽいやつ
「なるほど、魔法の発言には意思と起こしたい現象の理解が必須なんですね?」
(そうそう、だから最初はしっかり、原理を口にしながら魔法の発動を行うといいよ。”詠唱”はめんどくがらずやるのが、近道ってわけさ!ベラローゾはこれがどうしても苦手でね。頭より体で覚えたいタイプなのさ。いくら治癒魔法を教えても、傷はつば治るとか言いながらまるで上達する気配がないんだ。あとちょっとなのになあ・・・おっと、話が逸れたな。)
ヴァルマとベラローゾ、ススーリは午後には村に行くとのことでそれに同行してお別れをすることに決めた。今は午前中の空き時間に近くの川に水浴びに行く途中だった。ススーリとアニマは連れ立って歩いている。
ススーリにとっては両親以外の来訪者は、キメラだろうがホーマだろうが珍しいのだろう。髪をベタベタと触ったり、ツノをつかんだりしている。アニマも迷惑そうにしているが、完全に鬱陶しいだけということもないようだ。気づくと手を握って歩いている。もちろん、チュビヒゲは僕の肩だ。
(だから別に言語は関係ないよ。実際、魔法を使う獣もたくさんいる。もちろん物事の道理を学ぼうと思ったら、僕らの言語に限定されているがね。しかし、そうなると、君はどこから来たんだい?この大陸中どこをさがしても独自の言語を持つのは、山脈の”向こう側”くらいしか考えられないが。)
(説明は難しいですが、だいたいそんな感じです。アニマが調査に来て、僕がひょんなことで、ここまでついて来たという感じですかね。)
(そうか・・・山の向こうまで・・・やはりアライテル教は周辺を侵略するつもりなのだな・・・。私たちもその時に備えねばならないか・・・。)
ーそうだ、アライテル教は彼らに取って最大の脅威なのだろう。どうにか同郷の誼みで僕が説得できる相手・・・ではないよな。
(あ、話の続きだが、つまり理解が大事なんだぞ?理解していれば、頭に浮かべて最後に魔法の最終イメージを強く願って口にする。逆に本当に強い魔法使いは詠唱どころか、発動の際に魔法の発動を口にすることもない。それどころか詠唱による魔法と、それとはまったく違う魔法を無詠唱で同時に発動することができる。ん?簡単そうだと思っているかもしれないが、これができるのはこの国でも100人居るか居ないかってもんだ。)
ー多重詠唱みたいなことなのか?やっぱり、魔法使いかっこいいなぁ。
(現象の理解・・・ですか・・・。でもなあ、そもそも魔力ってのがよくわからないんだよなあ。)
(まあ、見る方が早いか・・・例えば火の属性魔法はこうだ。)
ヴァルマさんは念話を続けたまま、口で魔法を詠唱した。
「大気よ。燃えるべくしても燃えるもの、我が手に集め炎を象り、噴出せよ。」
ヴァルマさんは右手を顔より高く突き出し、手のひらを空に向けた。
「BRULIĜU ー燃えよー!」
{ゴオオォ}
ヴァルマさんの手から、まっすぐ上に向かって青い炎の柱が噴出した。ものの数秒、直径10cmくらいであろうがすごい威力だった。てっきり小さな火の玉でも出すのかと思っていたものだから、僕は腰を抜かしてしまった。チュビヒゲは肩からずり落ちそうになり文句を言っている。
「凄い!」
先行していたアニマとススーリが慌てて振り返った。
「父 凄い! ススーリ 欲する 魔法」
(タイラさん大丈夫ですか?)
僕は手を力なく振って無事を伝えると、その手でヴァルマさんが伸ばしてくれた手に捕まる。さっきまで、火が出ていた掌だ。不思議なことに全く暑くなく、それどころホーマは地球人より少し体温が低いのか冷たく感じた。すなわち、大気中の何かの成分を手の上に集め、魔力で着火し燃やしているようだ。やはり何かの可燃性の気体だろう。いや、しかしどうやって気体を掴むイメージを掴めというのか。
(ははは!驚かせたかい!これくらいは”マージェス”を目指すなら初歩の初歩だぞ!それにしても、君の手はあったかいな!それに触ってるとドキドキする!不思議だ!)
ーヴァルマさんにも恋愛フラグが!?
マージェスというのは下級魔術師のことだと昨日のヴァルマさんの会話で教えてもらった。なんでもギルドに行くとジョブクラスに応じてうけれる仕事が変わるらしい。
魔術師は3クラスあり、マージェス<ウィザード<アデプトと、さらにその上にも最高位のジョブクラスがあるとのことだった。これはいわゆる信用関係だろう。能力は認められて初めてその責任を自覚できるものだ。それまでの声に念話を乗せた会話から、急にヴァルマさんは黙って脳に直接囁いた。
(君はなりたいんだろう?彼女の力に?)
僕は無言で頷いた。
(アライテル教のキチガイ教祖は少なくとも上級魔術師”アデプト”の位はある。あるいはその上だろうな。説得するにしても、戦うにしても、逃げるにしても、魔法の知識もなく近づけば、良くて即死、悪くて実験動物にされるだけだ。)
ー事実、キメラは誘拐されたホーマ・ディアブル・獣人・獣の合成動物だもんな・・・。
「ススーリ いつか なる 立派な 魔法使い」
ヴァルマは駆け寄って来たススーリに抱きついて持ち上げると、力強い声で話しかけた。
「テレパシーは精神魔法の一種だ。水浴びの間に、基礎くらいなら教えてやろう!」
「お願いします!!!」
マージェス<ウィザード<アデプト<???




