第2話:ツンデレ的解釈
ーどうせ夢ならちょっと触ってもいいよね?いいよね?いいよね?ね?ね?
(も、モシ?)
ー案の定、ひかれてる気がする。え、それより、この匂いってさっきの・・・。
「・・・あううううああぅっ!!!」
ー痛い、痛い、痛い。あかん、これ現実だ!!!!しかも、この人、さっきの風と同じ匂いがする。
案の定半端じゃなく鼻腔の中が痛い。もしかしてこの人がテロリストだったりするのか?
悪役は美男美女と決まっているけど、けどもけども・・・。
(あ、これは・・・やはり”救済”が必要なのでしょうか?)
ーうう、痛い、眼球が飛びそうだ・・・でもおかしい、さっきより視界がクリアになって来た。普段しているメガネをしているのに彼女の顔だってよく見える。あ、枝毛だ。てかなんとなく、テレパシーで言葉が通じてる気がする。
(あなたは。。。一体?)
(モシ?私は使徒です。あなたはなにやら苦しんでいるご様子。わかりました・・・。私の手で安らかにしてさしげます。)
ーお、やっぱり。
そういうと天使のような彼女はローブの裾から漆黒のダガーを取り出し、大きく振りかぶった。その切っ先はまっすぐ僕の首元を狙っているように見えた。
ーえ?・・・・えっと、ツンデレに詳しくない僕だけれども、にしてもこんな過激なテンプレート聞いたことないぞ。
(ちょ、ちょ、そ、それはやめてください。)
(こんなに苦しそうなのに・・・。あなたは罪を自らの手で払うというのですね・・・。)
ーえ、なんでこんなに残念そうな顔してるの?違うよね、冗談だったんだよね?
(もう行きますね。どうか救いが貴方に訪れますように。)
「あ・・・あ・・・待っー
・・・
ーって!!!」
不思議な感覚だった。彼女が言葉を言い終わると同時に一瞬意識がプツリと切れたのだ。魔法ってやつかもしれない。すごい!!!俺も使えたらいいのに。
「・・・夢?じゃないよな?」
気づけば言葉も視界も耳も元どおりになっていた。日差しは先ほどまでと何ら変わらない。肌寒い風は、からからと肌を撫でるように去って行った。これまで通りの街、これまで通りの平凡な1日。
”大凡 平”はどちらかといえば裕福な家庭に生まれた。子供時代から、めぼしいゲームは一通り買ってもらっていたし、少年漫画の類は一通り知っている。だからこそ、大学生になって自分がそれに憧れていることが恥ずかしく、そんな自分を振り払うように全部を否定した。昔からよく共通の話題で盛り上がった幼馴染でさえ、オタクと呼んで今では連絡さえとらなくなった。でもほんとは今でもアニメを見る。最近は二次元の絵に興奮したりもする。要するに救いようのないほどにただの凡人だった。
いいえ、かける言葉が見つかりません。