第4話:俺つえええええ
一度言ってみたかっった。
「え?」
ーしまった。。。。こっちにはもっとやばそうなのが。。。
僕は何か硬いものに頭から当たって、その反動で腰をついてしまった。その瞬間、僕は死を覚悟して目をつぶった。当たり前だ、相手はさっきまで"フシュュ"とか言っていたやばそうな獣だ。空気を切る音もこいつだろう。。。
「グウゥゥゥゥゥ・・・・」
「え、なに?」
木のドアに頭をうった程度の痛みを感じ、恐る恐る目を開けると目の前にあった黒い影がなくなっている。よく足元をみれば草が倒れており、後方に吹っ飛んだのだとわかった。
「え?え?どういうこと?」
僕は確かに、目の前にいた”ドラコ”に頭からぶつかった。その結果僕は尻餅をつき、”それ”は吹っ飛んだ?
「君 何 する」
振り返るとすでに黒い影が目の前にいた。アニマは奥に倒れている。見上げるように顔を見ると、捻れた角がまっすぐ空に向かって生えていた。
「ディアブル!」
人生、初ディアブルである。アニマはキメラなので除外するとしても、こう直にあうとなんかありがたみがある。
「君 ドラコ 何 する」
ーするがよくわからないが、過去形と現在形を僕の脳が区別できてないのか?それとも、単にそういう文法がないのだろうか?いやそれよりもー
「あ、ごめんなさい。ちょっとぶつかっちゃって、悪気はないんですよ!敵対するつもりもないし、あの、アニマさんは?」
「何 言葉 ?」
ーあ、そうだ通じないんだった。
「最初 連れ去る」
黒い影から右手が伸びる。まっすぐに僕の頭に伸びているようだ。アニマと同じなんらかの魔法で気絶させるつもりだろう。
ーあ、やばい、連れてかれる。
「ちょ、ま!」
僕は慌てて手を払った。
「ッ?!・・・グフッ・・・。」
「え?」
慌てて払ったせいで力に加減をしなかったことは認めるが、それだってなんてことない暖簾をくぐるのを少し早くしたくらいのものだ。しかし、目の前の男の手はものすごい速度で弾かれ、いまではだらりと肩から垂れている。
「君 危ない ここ 力 出ない 今 見逃す 次 殺す」
それだけいうと、目の前の影はすばやく後方に飛んだ。
ーお?助かった?
そのまま逃げるのかと思ったが、”ドラコ”と呼ばれる生き物に寄って行き、懐からなにかを取り出した。
{キュポ}
何かの瓶だろうか。それをドラコと呼ばれる生き物にかけると、呻きながらドラコは起き上がった。背中に影が飛び乗ると、周りに風邪を起こしながら飛び去る。改めて夜空に浮かぶシルエットを見ると、先ほどのドラコというのはやはりドラゴンのようだ。人が3人ほどは余裕で乗れそうな背中に鞍が置いてある。なるほど馬的用法だな。大きさとしては全長3m、羽を広げると10mほどある。一体どうゆう原理で飛べるのか疑問に思わざるを得ないが、そこはファンタジーだ。愚問かもしれない。
ーは!そんなことより!
「アニマ!アニマ!」
僕は慌ててアニマに駆け寄った。おそらく平気だと思うが、もしも目覚めないとすれば事だ。なんなら王子様のキスが必要かもしれないーーもちろん冗談だーー。
体をゆすろうと手を伸ばす。しかし触れる直前で、先ほどまでの異常事態を思い出す。
ーもしも僕の力(物理的)がこちらの世界では異常に強いのだとしたら、アニマを傷つけてしまうのではないか?
「息はしている!ああ、でもどうしよう。。。どうしよう!なんか状態とかわからないのか?これは本当にただの気絶なのか??うう、どうすればどうすれば。こんなの初めてだっての!」
幸いにしてこの世界はファンタジー。そうこういう時に、都合のいいことが起きるものだ。アニマの体に文字が被って見える。いや実際には真っ暗なので、何も見えないはずなのだが、文字が現れる。
ーいや、なんか書いてあるけど、ええい見にくい。もっとこうステータスっぽく簡潔にまとめてくれないか?
何事も言って見るものである。願望を口にすればそれは思わぬ幸運をもたらすことがある。現実は思わぬ不幸をもたらすことの方が多いが。この時ばかりは・・・
目の前に白抜きの文字が表示された。
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名前: -********-( -********-)
種族:キメラ (ディアブル+ホーマ+カート)
性格:従順
魔力保有量: 412/3070
体重:6.89kg
状態: 認識阻害 気絶 麻痺
魔法:精神魔法 召喚魔法 治癒魔法 空間魔法(喪失)
能力: ー
加護:「生命の冒涜」
アドバイス:「余りに従順すぎることは悪徳である。」
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「で、でたぁ!!」
ーこれだよ、これがステータスだよ。あるなら言ってよ!危機に瀕して現れるなんて下手展開とか別に期待してないんだからね。あれ、もしかしてこの流れで今後もいくつもりか?少し、ノリが読めたような。。。
「えっと、どれどれ。」
ーいけないいけない、思わず下品な顔になってしまった。人の個人情報を覗くのは良くないことだ。。。しかし今は人命にかかわるのだ!うんきっとそう!!
僕は一度周りを見渡した。
ーん?名前は表示されない。これは何か理由が?・・・あ、もしかしてこの認識阻害のせいか?お、気絶、麻痺って書いてある!ってことはこれ、睡眠とか毒とか、麻痺とかわかるのかな。じゃなくて、時間経過で治るのか?」
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<麻痺: 身体的な感覚を奪う。自然経過で治癒。気絶と組み合わせると治癒が遅くなる。>
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ーおお!詳細が分かる、親切設計キターーー!しかし、これだと、治るのに時間がどれくらいかわからないか・・・。とりあえず、夜が明けるまでは待って見るとしよう。他のステータスも見るか。えっと、これは?
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<生命の冒涜:合成された生物は蘇生魔法が効かない。>
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ーほう?そうか、そういう制約とかあるんだ。そして蘇生魔法あるんだ。そうなると命の重みとか地球と違うんだろうな。っていうか、さらっと見逃したけど、性格とかアドバイスが誰へのものか全然わからない・・・。
「あ、てか、体重・・・軽!」
アニマの体重が異常に軽かった。これは痩せているなんてレベルじゃない。もしかしたら、こちらの物質の重量が地球のそれと比べて軽いのかもしれない。もしもそうだとしたら、さっきまでの違和感も説明できる。つまり、襲ってきた連中は僕に比べて”軽すぎた”わけだ。こういう無双の仕方は予想してなかった。それに、なんかジャイアンみたいでちょっとやだ。
ーそんなことより、アニマはどうしよう?
「ひ、ひとまず安静か?それとも場所を変えるべきか?背負って運ぶくらいならできるが。。。」
僕はとりあえず、傍に膝をついて、彼女の容体を見ようとした。アニマは丁寧にも、ローブの上に背中から横たえられており、さっき襲ってきたディアブルの紳士さが垣間みえた。それにひきかえ、僕はといえば。。。
ー最悪だ。
アニマが気を失った直後、真っ先に逃げようとしたあの時の恥ずかしさがずっとリアルに胸に焼け付いている。肺を火傷したとでも言えばいいのか、熱湯を直接に喉に流し込まれたような苦痛が徐々に蝕むように胸いっぱいに広がっていく。彼女は知らない。知ったら軽蔑するだろうか。値踏みするだろうか。これまでのようにはいかないだろうか。彼女が起きた時、僕はなんて言えばいいのだろう。
僕は自分のスキルのことを考えることすら鬱陶しく感じた。意気消沈したまま、少しだけ冷静になって朝になるのを待つことにした。いつまた敵が来るのかわからない以上、寝るわけにもいかない。むしろそれが少しでも自分の意気地なしへの免罪になればいい。そんな思いのままアニマの横で体操座りになってじっとしていた。後になって思い返すと、僕はずっと震えていたと思う。毛布はそっとアニマに掛けて、小声でごめんなさい、と言った。
弱いけど強い。




