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彼女は幸せになれないー巻き込まれ転移男の異世界奇譚ー  作者: 赦す内燃機関
第2章:ニラは焼かないでは食べられない
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第2話:ステータスオープン

こういう時にはステータスが見れるものと相場が決まっている。そういう魔法があるに違いない。転移者は最弱で、しかし一つだけくせのある無双スキルがあったりするってわけだ。せっかくだし、思い切って叫んでやる。


「ステータスオープン!」


{・・・}



「ステータスオープン、ステータスオープン、ステータスオープー」



(モシ?)


「あ、ゲホゲホ。なんでもないですよ。おまじない見たいなもんです。新しい土地に馴染めるように。うん、きっとそうに違いない!」



ー考えてみれば、ああいうのはゲームとかに溶け込むタイプだったか?



「そうだ、まずこっちの世界のことを教えてくださいよ。特に魔法のこと!傷を治したり、転移ができるのは聞きましたが、火を作ったり、人の能力を知れる魔法とかないのですか?それに魔物とかいますか?っていうかそもそも安全ですか?争いが起きたり、奴隷商売があったりとか、あとは国とか大陸の話とか聞きたいなあって。」


(も、モシ・・・タイラさん目が輝いてます。楽しそうで何よりですが、えっと何から話せば・・・.)


アニマは真剣に考え込んでメガネの淵に手をかけて考え事をしている。



ー知的と可愛さのfusion, This is IT ! This is IT!!



(どうせなら歩きながらでも?本当は直に主様の宮殿に転移する魔法陣のはずなのですが、本来よりだいぶ東までずれてしまったようです。)



ーアニマは太陽の方角を見つめ、その右方向に行くよう指をさした。それから反対側を振り返って、僕に言った。


(ここより東、あの山脈の向こうはホーマ族の領土ではありません。私がこの世界で知っているのはそれくらいです。なにぶん主様の元を離れることもありませんでしたので、すいませんが土地についてはそれだけです。あ、気分とか悪くありませんか?)



ーホーマ族以外の領土、やはり角と強力な魔力をもつディアブル族や、話の流れから獣人族もいるみたいだし、この世界にはいろんな人種がいるのだろうな。とかく、西はホーマ・東はそれ以外か。


「あ、はい、全然大丈夫です。どれくらいかかりますか?」


ー内心、鬼畜王アライテル教祖様には会いたくないのだ。なるべく遠い方がいいな。



(幸い、主様の宮殿もホーマ族の領土の東端に位置しています。)


ーあー、そういう感じね。近い感じね。そうだよね。そんな離れてないよね。そういう設定で魔法組まれてるもんね。


(ですから、ここからですと・・・すいません・・・わかりません。少なくとも1日では無理です。)


ーいや、うん、とりあえず歩こう。食事の心配とかは後ですればいいや。


 僕は周りに生えている草が地球で見かけるようなものと似ているのをみて、こちらでも光合成を行なっているのを確信した。空気も普通に問題ないし、空の太陽が青くて直視すると明らかに目に悪いところをのぞけば、地球のそれとなんら変わらない。紫外線多めでやばそうだとは思ったが、それもどうにか防ぐ方法はあるだろう。僕はひとまず歩きながらあれこれを聞いて、そして魔力はこちらでは普遍的にあらゆる物質に内在していることを知った。



ー数時間後ー



「・・・つまり、どんなものでも最後には魔力に還元されてしまうと?」


(そうなります。条件はバラバラですが、ほぼ全ての”もの”が特殊な魔法陣で魔力に還元できます。あるいは死んでしまって日数がたてば、ほかの生き物によって土に帰るか、魔力の流れの激しい場所では自然と霧散してしまうようです。生き物によっては結晶などが残りますが。)


ーえ、なにその精霊みたいな消え方。完全犯罪おこりまくりでは?コナンくんもかたなしだ!


(生きているものが魔力の形を留めているのは"タマ"と呼ばれる”意思の力”であるとされています。命がなく動く物質を”タマゲタ”と言うそうですが。詳しいことはよく知りません。)


ーこりゃ、たまげた!!!


などど馬鹿げたことを言いながら、歩いていると、太陽が沈むくらいの時間になってしまった。こちらの夕焼けはオレンジというよりも深い緑色〜青色に近く、ともすればアニマが溶け込んで見えた。


「綺麗ですね。」


(あ、夕暮れのことですか? 私は日本でみた夕暮れの方が好きでしたよ。)


「紅いのもいいですが、この色も素敵ですよ。・・・アニマさんの髪色みたいで。」


「!!」


ー彼女は露骨に驚いて、そんなはずはないという顔をしている。あ、まってこれセクハラ??


「えっ!?なんか変なこと言いました?セリフがくさ過ぎました?でしたらすいません。女性と付き合いがなくて、ちょっと塩梅がわからなくて。」


(いえ・・・この髪が綺麗だと言われたことも、思ったこともありませんでしたので・・・日本の方は変わってますね。)


ー彼女の顔には今でに困惑が残っており、僕は後悔した。なんか引かれてしまっただろうか。しかし、僕は綺麗だと思った。それは卑屈になることじゃないと思う。思いたい。。。やっぱりまずかったか?


僕は少しドキマギした空気に気を悪くしてしまった。昔から割とヘソを曲げやすい人間であるのは自覚していたが、自覚したところでこれがなかなかどうにもならない。恥ずかしいことを言った照れ隠しともとれるかもしれない。矢継ぎ早に話を変えることにした。


「それで寝るところ、どうしましょうか。」


もうかれこれ、膝丈ほどの草が生える平原を数時間歩いている。途中なんて無言で歩いてしまった。そういえばローブくらい代わりに自分持ってあげれば良かった。今はなんだか言い出しにくいが。


(それくらいなら、私の召喚魔法で鎖付けしていた毛布をだせますよ。)


アニマはすでに冷静さを取り戻していた。


ーえっと、野宿は覚悟してたけど、え、草の上に雑魚寝?ナチュラル派すぎん?せめて寝袋とかだせなかったのだろうか。。。いや我がままを言っているのはわかるのだけど、なんていうか魔法の持ち腐れ感が・・・。ああ・・・僕は本当あまちゃんです、すいませんした。



「な、なるほど、ここらで寝ると。えっと・・・魔物とかは大丈夫なんですか?」


(その”マモノ”とは何を指しているのですか?)


ーおっと、そうだよなあ。こういうのは漫画やゲームの専売特許みたいなもんだよな。


「なんて言ったらいいんだ?脅威になるような、生き物のことです。特に強くて凶暴な。」


(モシ?それは。ホーマやほかの生き物と何か違うのですか?)


ーうーん、確かに人間は怖い。地球ならクマだってかなり脅威だが一番怖いのは人間だ。魔物・・・やっぱりこれはこっちの世界ーー”ニラ焼かない!”ーーでは通じにくい概念か。わかってるけど通じないと少しモヤモヤするな。


「あーそうですね。じゃあ、ここで寝てて襲われない?」


(それなら、大丈夫です。この平原に普通の生き物は近づきませんので。)


ーん?それってどういう意味だ?


(ここは今から100年程前に、ホーマ族とディアブル族の合戦の地となった土地です。”不自然の草原”と地図に書いてあるのを見ましたが、正確な名前はないようです。詳しいことはわかりませんが、その時の影響でこの世界の理に生きる生命は、ひどく居心地が悪く感じる場所であるようです。この草だけは何故か例外ですが。)


ーほう?


「えっと、なんとなく歴史的な場所なのはわかりましたが、その”普通の生命”というのは?」


(私のようなキメラ以外ということです。あと、タイラさんも大丈夫みたいですね。)



ーさくっと人外認定か?まあこの世界では人間ぽい種族がいるだけで、ホモ・サピエンスではないからそうかもしれないな。


(今日は歩けるところまで歩いたら寝ましょう。毛布は一つしかないので、お貸しします。私はローブで良いので。)


 それからしばらく僕らは無言で歩いて、空が綺麗な紺色になる頃に腰を落ち着けた。草がチクチクと刺さるので、足で踏み固めて二人分のスペースを作った。僕が横になろうとすると、彼女は毛布を何もない空間からとりだして僕に渡した。


気温はそれなりに高く、風も風邪で遮られているので個人的には毛布はいらない気がしたが、寝ていれば体も冷えるだろう。


彼女は僕のローブで身を包むと横になった。腕を枕にして顔は向こうを向いている。服装が僕のあげた私服ということもあって、ここだけ見ればゆるキャンである。ゆるゆるすぎるし、腹は満たされていないが。僕はというとパーカーのフードを枕にしている。陸を敷いて寝るのは初めてなものだから、その寝心地の悪さにいっそう苛立った。虫の声一つ聞こえない草原で僕はここに来たことを早くも少しだけ後悔した。



やっぱり陸を引いては眠れない。

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