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龍魂  作者: 熟田津ケィ
ー堕ちる龍ー
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言うべき秘密

いつもなら一瞬で終わる午後の任務。

しかし、「フォリアと(二人で)会う」事実が、バージルの体感速度を遅くさせる。

いつまで経っても太陽が沈まないと錯覚するレベルで、今日の午後は永かった。


やっとの思いで任務を終え、事務処理もマッハで片付ける。


そして、約束の時間はやってきた。

正直、時間の余裕はなかったが、シャワーだけは浴び、身だしなみも整えておく。

そして、風よりも速く、彼女の元へと走る。


「すまん、待っただろ?」

「いや、今来たとこだよ」


スーパーイケメンな返答を貰ったとこで、バージルは目を付けていたカフェへと案内を始める。

北の大地で会った時よりも、ガッチガチに緊張しているのが分かる。

口数も少なく、手と足が同時に出てしまうこともしばしば。気付かれていないと良いが。


「……着いたぜ」

「!」


木造のカフェだ。窓から見える店内に、人は多くなかった。待たずして座れそうな感じ。

待ち合わせをずらし、人が少ないであろう時間帯にして正解だった。


「……王都にはこんなオシャレなカフェがあるんだね」

「あぁ。良いだろ?」


暗めな照明だが、落ち着ける空間だ。

穏やかな音楽が流れており、コーヒーや料理の匂いが鼻をくすぐっている。


「うん」


実は、バージルだって、来るのは初めてだ。

内心ヒヤヒヤしていたが、気に入ってくれたようで良かった。


席を隅の方に取り、座る。

席はチラホラ空いており、そこまで気にする必要はないと思うが、念のため。

ここなら、誰かに会話を聞かれる心配はない。


オーダーを済ませ、軽く無関係な会話を流す。


「無断欠勤は平気だったのか?」

「あ!それね。団長が気を利かせてくれたみたいで、連絡が行ってたよ」

「!じゃあ、ペナルティはなしか?」

「そうだね。助かったよ……気が利く人って、いいよね」


優しく笑みを零すフォリア。バージルは、慌てて目を反らし、軽く肯定する。


「ん……」


なぜだろう。

彼女が他の男性を褒めるのが、どうしようもなくむずがゆい。

気が利く人を「好き」と言っているだけで、団長を好いていることではない(はず)。だから、別にバージルがモヤモヤする必要はないのだが、どうも心が落ち着かなくなる。


と、ここで注文したコーヒーが来た。

話も切れたし、そのタイミングで本題に入るバージル。


「そろそろ、いいか?」

「……そう、だね……」


フォリアもそれが分かっていたようだ。


「速報で見たよ。イケメン君がやられたって。王サマやアンタは平気なのかい?」


団内でのみ発行された速報には、王都勤務の男性団員一名の負傷とあった。

側方内で指名は公表されていなかったが、会話レベルで情報は広まる。その中で、彼の名前を聞いてしまった。

彼が出てくるということは、十中八九王も近くにいただろう。


「……体は平気だ。けど、心は……どうだろうな……」


言葉を濁すバージル。

あの姿を見て、「大丈夫、平気だ」と言えない。


「アンタは……平気そうに見えるけど」

「あぁ。あいにく俺は現場にいなかったからな……現場にいたのは、あの二人だけだ」


自分や他のメンバーが無事なのは、見逃してくれたのではなく、その場に居なかったから。

タイミングが悪ければ、怪我人の数はもっと多かったのだろう。


「そう、なんだ……じゃぁ、あのコも無事なんだね」

「ミーネか?あぁ。(敵と)会ってすらいねぇ」


戦っていないメンバーは、当然身体は平気だ。

しかし、ボロボロになり、気力を失っている(ように見える)レイラを見て、精神的に動揺しているのは事実。

ただ、これを馬鹿正直に話す必要はないだろう。不要な心配をさせるわけにはいかない。


「で……」


彼女の問いにも答え、話を変えたいバージル。

出方を窺うが、どうも動きがよろしくない。


「あぁ、えっと……」


フォリアも話さなければならないことはあるが、もう少し心の準備がしたいのだ。

先に彼の話を聞くことにする。


「ゴメン……先に聞いてもいいかい?そっちの話をさ」

「え?あぁ……いいけど。これは非公式っって言うか、まぁ、俺とかレイズとかの考えがほとんどなんだけど」

「うん」

「……敵はフリアって名前で、ヒューズって言うヤツのグループだった」


二人の名前を出した時、フォリアは少し驚いたようだ。


「そうなの?速報に相手の名前は出てなかったよ」

「あぁ。上は名前を出すか迷ってるみたいだ。騎士団の実力で勝てるか分からない相手だしな」


そう。この件について、騎士団はフリアとヒューズの名前を公開していない。

理由は簡単だ。騎士団の実力と敵の実力。明らかに分が悪い場合、騎士団サイドは相手の名前を伏せたがる。逆恨みで襲撃される可能性を下げるためだ。

フリアの場合は、グランズに用がある感じであった。下手に公表すれば、騎士団に乗りこんでくる来る可能性がある。無駄に『動機』を与える必要はない。よって、情報は慎重に扱われる。


「……そんなに強いんだ」


フォリアは、レユーズのことを思い出す。彼も相当な龍力だった。


「あぁ。そのことで、レイラも悩んでるみたいだった」

「そう、なんだ」


フォリアは寂しそうに窓の外を見る。


「それで、だ。俺の話したかったことなんだけど」

「うん」

「……リゼルがやられ、レイラの心も折れる相手。そんなやべぇ力は俺は見たことがない。けど、心当たりがある」


そこで、バージルに視線を戻す。

自分と目が合う。あんな真剣な顔を見たのは久しぶりな気がする。

ドクン、と心臓の音が大きくなった。これは、色んな要因があるが、彼女は心配事の一つしか気付かない。


「……うん」

「ペルソス街道での魔物の傷だ。俺も馬鹿じゃねぇ。あの傷からは属性を感じなかった。だから、(月龍の)フリアとは関係ない。と思うけど」

「そうだね。誰も言わなかったけど、アタシも属性を感じてない。それは間違いないよ」


あの場で誰も追及しなかったのは不思議だったが、当時は「助かってよかった」レベルでしか考えていなかった。

が、こうして「脅威」として立ちはだかってくるとなると、話は別だ。


「けど、だ。力量だけで言えば、魔物の群れを葬った龍力者に近いものを感じるんだ」

「そう……だね」

「あれをやったのはフリアじゃない。けど……全くの無関係でもない。そう思う。証拠も何もないけど」

「それで……?」

「何かそっちで知ってるなら、教えてほしい。お願いだ」


バージルは頭を下げる。机に頭が当たり、コーヒーに波が走る。


「……アタシの話ってさ」

「……?」

「それについて、だよ」

「だったら!」

「まずは、バージルに謝らないといけない。ううん、バージルだけじゃない。皆にだね」


フォリアは本当にすまなそうな顔をする。

そういえば、様子が変だ。

返事の歯切れは悪いし、いたずらじみた顔も一切していない。


「アタシ、見たんだ。魔物をヤッた龍力者」

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