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龍魂  作者: 熟田津ケィ
ー堕ちる龍ー
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まさかの再会

フリアと戦闘を行い、リゼルが深手を負ってから、まだ数日が経った。

彼は相変わらず目を覚まさない。ただ、肉体の再生は順調の様子。包帯の数が減ってきている。

しかし、内に蓄積されたダメージは深いらしく、目覚める気配がない。


「任務はこっちでやるから、見といてやってくれ」

「はい。申し訳ございません」

「気にすんな」

「……起きたら教えてね」


流石に、あの状態のレイラを前線には出せない。それに、彼が目覚めた時、レイラが確認できた方が安心だろう。自分より彼女を優先するようなヤツだ。探そうと、勝手にウロウロされる心配もなくなる。


よって、レイラには毎日病室に通うようにさせ、彼の様子を見守る役となってもらった。


「さ、俺たちはできることをするぞレイズ。ミーネ」

「うす」

「そうだね」


引き続き、任務はレイズ、バージル、ミーネで行うようになっていた。

レイラとリゼルがいないこのメンバーでは、受ける依頼の難易度も更に低くなった。

龍力に『慣れる』ことには向いているが、『上げる』のには向いていない。


レイズ、ミーネは慣れるのが先決のため、そんなに焦る必要はない。

しかし、レイラやリゼルのことを見ていると、どうしても焦ってしまう。バージルにも「冷静になれ」と言われることが増えてきた。

依頼はこなせているが、この何とも言えない停滞感。成長が止まってしまったかのような感覚。これは、二人を焦らせている。


ただ、表には出さないが、バージルも内心焦っている。

彼は龍魂の土台はできているが、レイラやリゼルの戦闘能力には届かない。

そんな二人を軽く倒せる敵が現れた以上、新人ばっかりに構っていられないのが現実。

自分も高みを目指す必要がある。しかし、何をどう頑張ればいいのか分からない。


皆、そんなヤキモキした日々を過ごしていた。

とある日。今日も任務を数件こなし、帰路に着くレイズたち。


「お疲れ」

「あぁ」

「じゃ、明日ね」


解散とはなっているが、実は各々特訓している。


ミーネもだいぶ龍魂に慣れてきた。少なくとも、無意識のうちに龍を解放している状態にはなっていない。

ただ、『動物を調教しよう』の入り口を実験していないため、安心はできないが。

よって、無理のない範囲で「龍力のコントロール」を練習している。

龍魂は、発現すれば何でも良い訳ではない。必要な時に必要な部位に必要な量を必要に応じて流動させることが必須。


蹴り技をしたいのに拳に龍力が集まっていては、ただの蹴り。

足に龍力を流せていても、戦闘の一瞬に追いつかなければ、不十分な威力となる。

威力に集中し過ぎて身体への負担を考えていなければ、反動で自滅。


……このように、全てが噛み合わなければ、いくら身体が龍魂ードラゴン・ソウルー状態とはいえ、充分な火力にはならない。

だから、これを強化し、戦闘力の底上げを図ろうとしているのだ。これは、レイズも同様。


ミーネよりも早い段階で戦闘に出ていたことで、最低限のコントロール能力はある。

しかし、インパクトの瞬間と龍力ピークの瞬間のズレは、度々感じていた。しかも、戦いは一瞬一瞬で大きく変化する。

その刹那に間に合うようなコントロールは、まだできないのが現状だ。


(こんな特訓、バージルを巻き込めねぇ)


バージルはバージルでやりたいこともあるだろう。てか、最近忙しそうだし。

ここまで引っ張り上げてくれた彼の邪魔はしたくなかった。

よって、ミーネとレイズは個人特訓を選んでいるのだ。



バージルも、心が落ち着かないため、特訓のために外には出ている。しかし、意識は龍に向いていない。

レイズやミーネには言っていないが、彼はある人物と連絡が取りたいと考えていた。


できれば、会って話したいレベル。

通信しても良いが、騎士団の通信珠リンクスフィアでそれをしてしまうと、通話はすべて録音され、いつでも聞き直すことができてしまう。

聞かれたくない話題でも、しばらくはログに残ってしまう。

『あの日』からセキュリティが更にキツくなっているのだ。かと言って、個人での連絡先は知らないし、向こうが通信機器を持っているかも分からない。


(くそ……)


三日、いや、二日で良い。休みが欲しくてたまらなかった。

しかし、今のメンバーの中で龍力をまともに使えるのは自分だけだ。

その自分が休むとなれば(大した依頼ではないにしろ)任務が滞る。


(抜け出すか?いや、二日抜けるのはやべぇ。でもな……)


どうにかならないものか。悶々と考えていると、最高な出来事が起こった。

任務の合間、本部内にある休憩スペースで小休止を取っていた時だ。


「バージル!!」


聞き覚えのある声。


「え?」


顔を上げると、そこにはフォリアが立っていた。

心臓が跳ね上がる感覚、体温が急上昇する感覚を覚えた。


防寒具でガチガチに固められていた以前の格好とは異なり、今はそこまで着込んでいなかった。


ブーツにホットパンツ。上は騎士団で支給された上着を着ていた。

再会したことだけでなく、正直、服装にもドキッとした。脚の露出……反則だ。捗っちまうぞ。


興奮する気持ちを押さえつつも、声は大きくなってしまう。


「フォリア!?」

「久しぶりだね。思ったより早い再会になったよ?」

「なんでここに!?」


フォリアは真剣な顔になり、顔を近づけてくる。

ちょ、とバージルが慌てていると、耳元でフォリアは囁いた。


「……ちょっと話したくて、さ。アンタは動けないと思って。それも、二人で」

「!!」


心臓が高鳴る。


二人で?

わざわざ王都に来てまで!?


(落ち着け、俺……)


バージルは一度唾を飲み込む。

浮ついたことは考えるな。リゼルもレイラも大変なんだ。


「分かった。まだ任務があるからな……夜、会おう」

「了解だよ。待ってる」


今は仕事中のため、夜に待ち合わせることにした。


後で聞いた話になるが、その日のバージルはかなり腑抜けた顔をしており、任務に集中できていなかったとか。

『バージルにとって温い任務だから』と二人は誤解していたが、バージル本人にとってはその方が都合がいい。

『フォリアに会える夜』が楽しみ過ぎて腑抜けた顔になったなど、絶対に知られたくない。

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