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龍魂  作者: 熟田津ケィ
ー堕ちる龍ー
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レイグランズ最大級の病院内。

フリアとの戦闘で大ダメージを受けたリゼルは、その病院で治療を受けた。


処置が一通り終わり、ベッドで眠るリゼル。

包帯が至る所に巻かれ、動かないように固定されている。また、点滴の管も垂れており、ダメージの深さを物語っている。


(龍力があっても、これが限界……)


龍力に頼る治癒は、自己治癒力を衰えさせることが分かっている。

よって、最低限生命が安心できるまでは龍力で治癒し、後は自力で回復するやり方が主流だ。

龍術は便利だが、完璧ではない。

彼の場合、龍の力と人の力のバランスを、人重視にしている。

比率を上げ、龍に頼ると、自己治癒力の減退が認められるだろうと判断されたためだ。


レイラはベッド脇のイスに座り、拳を膝の上で強く握りしめている。


(何も……出来なかった……!!)


先ほどの戦いでは、本当に何もできなかった。唯一動けた最後の最大級のガード。それも、湧き上がる力を感じつつのガード。

しかし、簡単に破られてしまったのだ。自分の無力さが悔しい。



幼いころから騎士団で自分を鍛えていた。

亡き母から受け継いだ光龍の力。それを毎日必死に磨いてきた。

自分の力で人々を守りたい。救いたいと思っていた。


それなのに、このザマだ。


「ッ……!」


レイラは唇を噛み締める。涙が自然と溢れてくる。

毎日の特訓のお陰か、騎士団でも上位の実力まで上り詰めた。かと言って、力に己惚れていたつもりはない。だから、そこで満足せず、訓練はしっかりやってきた。自分の龍のことも理解してきたつもりだ。

それなのに、フリアに勝てる気がしなかった。


あそこでフリアが退いてくれたから良かったものの、負ける未来しか見えなかった。

死傷者が増えなくて一応は一安心だが、強烈な問題ができてしまった。


(フリア……)


フリアのことは、一応応援に来た騎士団には伝えた。

あり得ないレベルの強さ、ヒューズとやらに自分のことやリゼルの存在が知られていること。

そして、グランズを探していたこと。


自分のゴリ押しで、騎士団はフリアを追うことをしていない。

代わりに、王都の警備を強化している。


十中八九、フリアは王都から出ている。騒ぎを嫌がっている様子だったし、目的はここにはない様子だった。

ただ、予想に反して王都に滞在していて、騎士団が見つけてしまえばマズい。

あの力を見ていない団員なら、戦闘に前向きになるはず。当然、フリアも振りかかる火の粉は払うだろう。そうなれば、死傷者が増える。最悪だ。

しかし、放っておくわけにもいかないのは事実だ。


どうすればいいのか、レイラには分からない。

騎士団長も今は四聖龍のことで頭がいっぱいだろう。遅かれ早かれ報告は行くと思うが、今彼は王都におらず、地方に飛んでいる。



色々考えていると、足音が聞こえてきた。

病室の扉が乱暴に開かれる。


「「リゼル!!」」


レイズたちだ。今日は休みにしてあるが、来てくれた。

レイラは慌てて涙を拭う。こんな弱弱しい自分を見せられない。


「静かに、お願いします」

「あぁ、悪い……」


レイラは椅子を用意しながら、力なく笑って見せる。目は赤くないか?晴れていないか?涙は乾いたか?と頭に浮かんでは消える。


ミーネは椅子に座りながら、レイラを見る。


「……何が……あったの?」

「えぇ、それが……」


レイラは話した。


フリアと名乗る、全身黒い服の長髪ロン毛に襲われたこと。

その男は自分の癖など、王に近い人間しか知らないことまで知っていたこと。

グランズを探していたこと。

その男は月龍の力を使えること。

力の差は圧倒的だったこと。


「月の龍……?」


聞き慣れない言葉に、レイズは聞き返す。


「はい。大変珍しい属性です。私も、見るのは初めてです」

「そうなのか……」


その、とミーネが口を開く。


「聞き難いんだけど……」

「はい」

「力の差って……どのくらい……?」

「どのくらい……」


レイラは黙る。具体的に言われると難しい。

圧倒的!とか言葉はあるが、それは漠然としている。

だが、本当に圧倒的すぎて、言葉が見つからない。


「相手は、本気ではなかったと思います……そんな相手に、リゼルが一瞬で負けるくらい……です……私の力も……通用しませんでした」

「そう……」

「マジ……か……」


普段、簡単な魔物退治などの依頼をこなしているミーネには衝撃的だっただろう。

基本的に、依頼では勝てない相手と戦わない。格上では、龍魂の訓練に向かないためだ。


ただ、遭遇した敵―フリア―とは、圧倒的な力の差がある。


レイラとリゼルは、この特別部隊の中ではツートップの実力者だ。


一方は大怪我、もう一方は意気消沈。

この空気感だけで、絶望的な相手だと理解できる。


自分たちは、この新しい敵・組織に立ち向かわなくてはならないのか。

レイズたちは、眠るリゼルと沈んでいるレイラを見ていることしかできないでいる。

漠然とした不安を抱えながら。

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