表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
龍魂  作者: 熟田津ケィ
ーマリナ=ライフォードー
84/689

別れ

ミーネの騎士団入団が(ほぼ)決まり、一段落。しかし、息つく暇もなく、レイズたちは動いていた。


時間を置かず、ペルソス騎士団基地から直で王都に帰ることにしたためである。

団長からの指示とはいえ、残業で予定よりも帰宅が大幅に遅れている。ペルソス街道復旧も手伝う話も一瞬出たが、リゼルが却下した。


「これ以上は僕たちの役目ではない。帰るぞ」


ミーネ捜索で、十分ここの基地には貢献したと。魔物の凶暴化も恐らくは解決した。十分な仕事量だ。


ペルソス基地に呼んだ飛行艇。

レイズ、レイラ、リゼルの三人は、先に飛行艇に乗り込んでいく。


「やっと寒さから解放される~~!!」

「……しばらく雪も見なくなりますね」

「…………」


ミーネは立ち止まり、飛行艇を眺めていた。

ただ、別に見慣れない飛行艇に感激している訳ではない。


(……ここ、出るんだ)


これに乗れば、しばらくここには戻ってこないはず。

自分で決めた道だが、実際その時になると、後ろ髪を引かれる。


(でも、決めたから)


迷いを断ち切る様に、首を振る。


しかし、そう簡単なものでもない。タラップを上がりながら、何度も周囲を見回している。

この風景を目に焼き付けるように。


そして、最上段。彼女は振り返り、ペルソスの街並みをしっかりと目に焼き付けた。

……二度と戻ってこれない訳ではないが、彼女にとって、この門出はそれだけ大きなものであるのだ。


「いってきます」


小さく呟き、飛行艇に入ったミーネ。

残ったのは、バージルとフォリアの二人だけ。


「帰るんだね」

「……あぁ」


彼女は寂しそうに、本当に寂しそうにこちらを見ている。

色白なため、寒さで赤くなった鼻と頬がよく映える。


先に乗り込んだ四人は、飛行艇の窓に張り付き、彼らの様子を窺っている。


「……見えます?」

「あぁ。バッチリだ」

「ちょっと、押さないで……」


二人の立ち位置やタラップ、そして翼や窓の位置。

全てが噛み合わなかった。それ故に、一つの窓に三人が張り付いている形だ。


リゼルだけは窓から離れた位置にいたが、それでも彼らの様子が確認できる場所にいる。ただ、目は閉じている。

疲れているなら部屋に行けばいいものを。

無関心を装っているが、心の底では気になっているのだろうか。

レイズはそこをいじろうかとも考えたが、報復が怖くて止めた。


飛行艇内はそんな状態だとは夢にも思わないバージル。

フォリアとの時間を噛み締めている。


「……じゃ、あたしはここまでだね」

「あぁ……そうだな」


悲しそうな彼女の声に、バージルも切なくなる。

彼女がいることが、いつの間にか当たり前になっていた。しかし、自分たちの所属地は全く別だ。

偶然や失言が重なり、ここまで来ただけ。


「……あの時は、こんなことになるなんて思わなかったぜ」


バージルは、恥ずかしそうに額をかいた。

彼女の顔を直視できない。


「あの時?」

「……トイレの近くで」

「あぁ、それはアタシもだよ」


フォリアにしてみれば、単に見知った顔を見つけて、何となく声をかけただけだった。

それで、面白そうな話になっていると察した。彼の迷惑を考えなかったことは悪いと思ったが、どうしても好奇心が勝ってしまった。その結果、ここまで長く同行することになるとは。


「俺も馬鹿だよな。もっと上手く口が回れば、ここまで付き合わせることもなかった」


そもそもは、自分が秘密を隠しきれなかったことが問題であった。

結果論だが、フォリアがいたお陰で救われた場面もある。ただ、彼女は彼女で居場所も仕事もある。

ここまで長引いたのは、完全にこちらの事情。


「いいんだよ。ついてきたのはコッチだし。それに正直な人はスキだよ」

「!」


自分に直接「スキ」と言われた訳でもないのに、体温が上がるのを感じたバージル。

やべぇ。どれだけ意識してんだよ。


慌ててバージルは話を逸らす。


「フリーズルートまで送りたかったけど」

「良いよ、別に。無断欠勤の理由づけに、復旧作業を手伝って帰るよ」

「無断て……やっぱそうだよな……」


想像以上に付き合わせたのだ。しかも、通信珠リンクスフィアは末端団員が持つには高価な代物。

連絡手段がないのは容易の想像できたのに。

彼女は気にしていなさそうだったが、気が利かなかった自分を静かに責める。


「……本当に、そろそろ行かないと」

「あぁ、そうだね」


ちら、と飛行艇を見る。窓から三人がこっちを見ていた。

急ぐよう言われて位はいないが、そろそろ出発したいところだろう。

ただ、実際は恋愛事情を野次馬されているだけだが……


「……じゃあ、行くよ」

「あぁ……そうだね」


バージルは飛行艇に向かって歩き始める。が、すぐに足を止め、振り返った。


「なぁ!」

「あのさ!」


声を上げたのは、二人同時だった。


「なんだよ」

「……何さ」


二人はほぼ同時に頬をかく。少し、恥ずかしい。

しかし、言わなければ。


「また会えるよな……?」

「また、会えるかな?」


二人同時に、似たような言葉を発した。


「「ふふ……」」


互いに顔を見合わせ、クスクスと笑う。


「もちろんだ」

「当然だね」


ひとしきり笑いあい、手を振って、二人は別れた。

別々の日常へ戻る二人。寂しくなるが、心は満たされていた。


二人が別れ、バージルは飛行艇に向かって歩き始める。


「………………」


先程までの様子を見ていたレイラが、思わずつぶやく。


「あの二人……両想いですか?」


『両想い』という言葉に反応し、リゼルは目を開ける。

だが、何も言わない。


「……そんな気がする」


恋愛経験のないレイズだが、それでも分かる。分かりやすすぎる。

それはミーネも同じだ。


「っぽいわね」


レイズは、前バージルが言っていたことを思い出す。


「そういや、同じ試験会場の同期だとか言ってたな」

「それで……辛い別れですね……」



数秒後、飛行艇に乗ってきたバージルに、それぞれ声をかけるレイズたち。


「別れは辛いな……なぁ、バージルよ」

「バージル……また会えますよ」

「良いわね。そういう人がいるのは」


バージルは訳も分からず「???」を浮かべる。

が、彼らは見ていた。まさか、最初から……?


次第に言っている意味が分かり、バージルは顔を赤らめる。体温が急上昇するのが分かる。しかし、止められない。


「そんなんじゃない!!」

「ムキになるなって。第一、それは自白したようなもんだぞ」


『こういう話題』をレイズにいじられるのは、なぜか非常に腹が立つ。


「うるせぇ!!さっさと出してくれ!!」

「……お前が一番うるさい」


リゼルはため息をつく。


飛行艇のプロペラが回り始め、加速のため移動を開始する。


「…………」


飛行艇の離陸を一人見送るフォリア。

その目には、少しだけ涙が浮かんでいた。それは風に舞い、散っていく。


「ありがとう。バージル。みんな……最ッ高な時間だったよ」


フォリアは飛行艇が見えなくなるまで、彼らを見送った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ