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龍魂  作者: 熟田津ケィ
ーマリナ=ライフォードー
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残業終了

ミーネを家まで送り届けたころには、夜になっていた。

その道中で彼女は目を覚まし、通常歩行できるようになっていたため、自分の足で共に帰宅した。


報告のため、レイラだけは基地へと向かう。一緒に行っても、同席できないため、この方がいいだろう。

両親へ経緯を説明は、リゼルが代打で行うらしい。

それを聞き、レイズ、バージルの体に電流が走った。


((この無愛想代表が説明を……?))


レイズはそれ以上の考えないようにしたが、バージルは内心ヒヤヒヤしていた。もしものことがあれば、自分やフォリアが、更に代打として出ることになるとすら思っていた。


しかし、リゼルは「敬語で」説明を始めていた。


「娘さんの経緯ですが……」


龍の暴走と、近隣で起こっていた魔物の凶暴化との因果関係のことは伏せたが、彼女が子イヌだけでなく、魔物も調教していたことを話した。


そして、原因は解明できていないが、二回目の暴走が起き、自分の意志で帰れる状態ではなかったこと、破壊を尽くすことはなく、別の形で龍力を使っていた、程度に留めた。

数回家に帰ってこれたのは、龍力を使い果たしたことで、龍の意識が内面深くに引っ込んだため。力が戻ったタイミングで、また意識の交換が起き、雪山に籠ったこと。


ここまで話すことは、本人も了承している。


「魔物の……調教……?」

「うん……ごめんなさい……」


凶暴化の件については、ミーネ本人は知っている。


彼女の暴走は、今まで見てきたケースとは異なることが多かった。

意識や自分の意志が薄くとも、魔物を調教し、それが凶暴化につながっている可能性は非常に高いし、本人もその可能性を肯定している。


そのことまで両親に話すと、更に困惑すると予想されるため、あの場で「騎士団としては」話さなかった。その後、どうするかは彼女次第だ。


その後、騎士団の立場からの提案も行うリゼル。


「娘さんは、暴走状態にありながらも、少なからず自我がありました。そして、小さめの力であれば、使うこともできています。騎士団で龍魂の訓練をすれば、コントロールできる可能性があります」


と。


実際、下山中に試しに龍力を使ってみたところ、小程度の力なら使えていた。

直前にエネルギー切れを起こしていることが作用しているとも考えられるが、意識が飛ぶことはなかった。


背景があるにしても、エラー龍力者では珍しいケースだ。

レイズでも、基礎の基礎から順を追っていた。ミーネが扱った力量だけでいえば、初期レイズ以上だ。


それに、暴走時の龍力も無視できない。

自我が完全に失われていない状態で、あのレベルの力を出せたのだ。


高いポテンシャルを秘めているのは、明白である。


「ただ、娘さんは騎士団に興味はない様子です」

「そうなのか?」

「……うん」


これも、下山途中に得た情報。

本人はイヌの調教に興味があり、騎士団へ行くことは考えていないと。


その反面、両親は前向きだった。龍魂のコントロールが完璧にできるようになってからでも、調教の特訓はできる。

それに、ペルソスで暮らすにしても、安全が第一だ。


娘と話し合い、また連絡するとの返答を得ている。


「それでは、失礼します」

「「娘を、ありがとうございました」」


寒い中、両親は玄関先まで見送ってくれた。

リゼルたちは一礼し、宿へと向かう。


「リゼル。お前、やればできるじゃねぇか。感動したぜ」


扉が閉まるなり、バージルはリゼルに声をかけた。

彼はバージルを見ることなく、口を開く。


「……何の話だ」

「さっきの対応だよ!あんなに丁寧なお前、初めて見たぜ」

「…………」


リゼルは何か言いたそうだったが、何も言わず、足早に歩き始めた。

こいつに構っている暇も体力もない、と背中に書いている。


それを見送り、バージルはレイズに話しかけた。


「……あいつ、来るかな?」

「どうだろうな。気がなさそうだったけど」


正直なところ、入ってほしい部分はある。


彼女の龍が原因で魔物が凶暴化したのであれば、また同じことが繰り返される可能性が高い。因果関係の証明はする暇がなかったが、状況から見ても、確実だろう。

プロの監視下で、コントロールできるような訓練をするべきだとは思う。


が、結局大事なのは、本人の気持ち。

あの場面を見たら、フォリアも教育を受けるべきだと考えている。


「……ヤル気がないのにムリヤリ引っ張ってもねぇ……どうだろうねぇ」


平常時ですら、龍魂は高度な資格として扱われていた。

あの日以降状況は一変したが、高度な能力であることに変わりはない。


「……僕はレイラと合流する。お前たちは勝手にしろ」


取る予定の宿が見えてくると、リゼルはそう言い残し、足早に歩いて行った。


「はぁ~クラッツもいないし、安宿か……」

「いや、高いのも俺らには向いてなかったぞ」

「まぁなー」


レイズとバージルは同じ部屋だったが、部屋で使ったのは一部分だけだった。

部屋数が多く、一晩では使い尽くすことができなかった。

そもそも、ベッド数はもっとあった。大人数向けの部屋だったはずだ。


「今日はゆっくりしよ……」


安宿でも、レイズたちは気にしない。とにかく、休みたい。


レイズ、バージル、フォリアの三人は、宿に小走りに向かう。

ミーネの進路を気にしつつも、身体を休めるために。

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