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龍魂  作者: 熟田津ケィ
ーマリナ=ライフォードー
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残業

『あの日』の被害者の一人であるミーネ=マクライナ。

彼女は調教師の娘で、動物と関わる仕事に慣れている。

そして、凶暴化の時期と、フィールドワークに出る時期が被っている。


ここまでの情報が出ていれば、勘が鈍くとも彼女が何かしらのカギを握っている、若しくは、元凶であると想像がつく。


ただ、本命である四聖龍の話の後にこれを出してきたと言うことは……


「俺たちに言うってことは……ここでは対処できないと?」


レイズの問いに、テスラは少し黙る。


「……言いにくいですが……ペルソス街道復旧に多人数を取られています」

「そちらの確認が最優先じゃないですか?本当に暴走している可能性もあります」


捜索願いも出ている状況で、後回しにされる理由に納得がいかないバージル。

魔物の群れの被害をド直球で受けた身としては、早急に対処すべき事案であると思うが。


「申し訳ございません。雪崩がなければ、我々が動けていたのですが……」


雪崩は別にレイズたちに責任はない。

が、彼らからすれば、戦闘を避けてくれればペルソス街道が潰れることもなかったのだ、と言っているのである。


「「…………」」


レイラもリゼルも何も言わない。

レイラはともかく、リゼルであれば、テスカに小言を言って、取り下げさせていたと思うのだが。




こいつ。面倒ごとを押し付けてきた?とレイズは思う。


群れ自体の鎮静化は、四聖龍により対処された。

一回目の凶暴化と照らし合わせ、安全である期間も予測ができた。

故に、今は原因対処よりも生活に直結する問題に力を注いでいる状況。


確かに、町の人々からすればペルソス街道は生命線である。それは理解できる。が、魔物の凶暴化の原因を探ることや、捜索することだって大事な仕事だろう。

ただ、基地内で仕事をしている団員を見る限り、余裕はなさそうである。


クラッツは、渦中の彼女の写真をじっと見つめている。そして、一式の資料を渡してきた。


「レイラ。君たち。頼めるか?」


この状況はどう考えても、「任せる」と言っているのと同義。


「!?」

「え?私たちだけですか?」


とんでもないことを言い出した。

引き受けるのは上官命令であるし、仕方ない。しかし、また群れに遭遇でもすれば、それは対処できない。

暴走間隔の時期的に可能性は低いが、ゼロではない。


「私はここの四聖龍と、他の四聖龍の対応について協議しなくてはならない。力になりたかったが、四聖龍が私の優先課題だ」


まぁ、人の捜索に騎士団トップが動くのも変な話なのかもしれない。

ただ、国のトップに任せる仕事かと問われると、疑問である。それでも、レイラの性格を考えると、やる方向にはなっている気はしていたが。


(ま、しゃあねぇな)


この銀世界での仕事は、まだ続きそうだ。レイズは覚悟を決める。

実際、自分もこのまま帰る気はない。


「えぇ……それは……そうですが……」

「昨日は魔物はいなかった。早いうちに彼女を確保できれば、三度目の凶暴化を防ぐことにも繋がる」


確証はないが、非常に高い確率で、ミーネが元凶。

どうやって群れと凶暴化を引き起こしているかは全くの不明だが、ペルソスでは他に考えられるトラブルも起こっていない様子。


とは言え、暴走龍力者の件は当初の仕事の範囲外だ。

しかし、命令ならば従わなければならないし、レイラが大人しく「帰る」と言わないだろう。他のメンバーも、前向きな様子。


諦めたリゼルが、口を開く。


「……条件がある」

「聞こうか」

「引き受けるが、また群れに遭遇した場合、レイラを守れない。群れの兆しが見えた時点で、ペルソス基地に引き継ぐ。直ちに優先順位を入れ替えさせてくれ」


団長も群れのヤバさは知っているはず。レイラの安全を考え、次の群れが出来上がる前までが、タイムリミット。

鎮静化直後の今は、一時的に安全であろう期間ではある。

しかし、次も同じ間隔で群れが出来上がるとは限らない。だから、それの兆しが見え、調査続行不可能と判断した時点で、このチームでの任務遂行はストップ。

即撤退すること。そして、その場合は優先順位を入れ替え、基地一丸となって対応すること。


これらが、リゼルの出した条件だ。

本来なら、四聖龍調査の段階でこの仕事は終わっていたはずなのだから、これくらいは出して良いだろう。


「私はそれで構わない。あくまで、一時的に仕事を預かるだけだ。それに、本来はペルソスの業務範囲。テスラ、それでいいですね?」

「……助かります」


レイズたちから見れば、雪崩を理由に仕事を押し付けられた身。

彼らの言い分も少しは理解できるが、人一人も寄越さないとは。


「魔物には十分注意してくれ。解決できれば勿論良いが……彼女が過ごしている場所が何となく分かるだけでも良い。命最優先で頼む」

「……分かりました」


こうして、追加の仕事を押し付けられてしまったレイズたち。

最悪な状況だが、あの日の被害者を無視することはできない。


「私は先に王都に戻る。後は頼んだぞ」

「はい。四聖龍の件、頼みます」


そうして、レイラたちはクラッツを見送った。


「俺たちも行くか……」

「大変申し訳ございません。が、お願いします。彼女の両親の住所もその中にございます。以前に話は聞いておりますが、直接聞かれるようでしたら、そちらへ」

「はい」


大変かつ重要な残業するために、部屋を後にするレイズたち。

残されたテスラは、自分たちの力のなさに強く拳を握りしめるのだった。

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