表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
龍魂  作者: 熟田津ケィ
ーマリナ=ライフォードー
72/689

フォリアの推察

北の地ペルソスのグルメと高級ホテルの夜を満喫したレイズたち。


「おっす。最高だったな!」

「ですね。夜景が最高に綺麗でした」

「飯はどこに行ったんだ?」

「アタシたちは……」


皆、昨夜の興奮が冷めないでいる。各々がどう過ごしたかを共有していた。

しかし、旅行気分もここまで。仕事だ。


「そろそろいいかな?」

「あ、はい」


チェックアウトの手続きをしていたクラッツに呼ばれ、集合したレイズたち。

ここから、ペルソス基地へと移動し、基地長と話をする。その時、昨日の雪崩の件や、魔物の群れについて共有する。

四聖龍の話が最優先事項であったが、生活に直結する事柄が先だ。


「では、行こう」


当然だが、朝は冷える。

だが、人の往来は多く、活気が溢れていた。

雪崩で道が塞がってしまった影響が出始めているのか、物流の遅れを知らせる看板が散見される。


情報に疎いレイズは、思っていたより時間がかかっていると口を開く。


「……龍を使えば(復旧は)すぐだと思ったけど」

「開通自体は速攻だろうな。けど、安全が確保できるまでは止めると思う」

「ふ~ん」

「群れの件も伝えてある。騎士団の監視まだ解かれていないはずだよ」


バージルの説明を、クラッツが補強する。

そう。問題は雪崩だけではない。魔物の件が落ち着くまでは、物流に不便なままである。


唯一謎の男と会ったフォリアは、口のムズムズを感じていた。

言いたい。すごく、言いたい。


(レユーズ……対処はしてたけど……原因ってワケじゃなかったのかな)


再発したということは、原因がある。レユーズは確かに群れを全滅させた。

しかし、あれで終わりだという保証はどこにもない。


銀の町を進んでいくと、ペルソス基地が見えてきた。

レイラはフードを被り直す。リゼルも軽めに被り、不自然さを軽減させる。


団長も合流したことだ。受付は、彼にやってもらおう。


「級友に個人的に用がある。彼らは、私の手伝いをしている者たちだ。信用していい」

「は!」


自分たちの最高責任者が言うのだから、食い下がることはしない。

受付のルールを色々すっ飛ばし、基地内へと入る。


「でっか……」


流石は大都市の騎士団基地。

フリーズルートの基地とは大違いだ。

大きさ、団員の数、トレーニングルームの器具の充実度。全てが違う。


だが、見学に来たわけではない。目的地に直行である。

それが分かっているレイズは、とある人物に問いかけた。


「……おいバージル、トイレは良いのか?」

「「!!」」


事情を知っているバージルとレイラ頭に「!」が浮かぶ。

ゆっくりと瞬きを一回。瞼が上がった時、瞳はレイズを睨みつけていた。


「黙れ。また三連枕を決められたいのか?」


コレの事情は知らないレイラ。


「え?何の話です?」

「……こっちの話だ」


先日行われたピローファイト。その間に炸裂した連続攻撃だ。

それは全てレイズの顔に直撃し、体勢を崩すことに成功。後は大きい枕でトドメ、という流れ。

ただ、そんなことはどうでもいい。


今回は平気だ。

朝食バイキングで、珍しい飲み物も大量に飲んだが、しっかりとトイレは済ませてきた。


そんなバカ話に参加することなく、クラッツはフォリアに指示を出した。


「基地長に会う。悪いが、フォリア君は別室で待機してくれ。話はつけてある」

「……了解です」


当然、フォリアは部屋に入れない。これが同行の条件である。

そのため、別で部屋が用意されることに。


ソファー、机、ちょっとした棚のシンプルな内装だ。小奇麗な部屋ではあるが、暇がつぶせるような道具は置いていなかった。ここで話が終わるまで待機らしい。

死ぬほど退屈だが、丁度一人になりたかったところだ。


「ったく……最高すぎでしょ……」


ソファーに寝転がり、呟く。

興味半分でバージルたちの後を付けた彼女だったが。結果は最高だった。

もちろん、死ぬ覚悟が必要な場面もあったが、それ以上のエキサイティングな経験ができた。


(レユーズ……騎士団……なにかある?)


レユーズと話した時、騎士団の名前をが出た際の雰囲気の変化。それをフォリアは見逃さなかった。

そして、あの言動。何かの因縁があるのか、それは不明だが。


バージルの話では、視察ではなく、何かの調査である。

凶暴化の件であれば、別に視察名目で来る必要もない。それに、あの様子では、凶暴化が再び起こり始めていたことは知らないようだった。

仮に、あれが自分たちの対応力を試す演技だったとしても、結果論になるが、彼は対処できなかった。


ただ、最初の凶暴化が知らぬ間に解決されていたのは気になるところ。

ペルソスの騎士団が対処したという話も聞かない。だから、王都に応援を頼んだとも思った。

しかし、レイラと騎士団長は、現場には出ず、ここまで来ている。


(なら、上層部のいざこざ……?でもそれだったらバージルたちは来なくていい……)


色々推察しているが、末端の団員の情報レベルでは限界だ。

しかし、自分だけが知っている。『レユーズ』と名乗る謎の龍力者を。

このピースが、非常に重要な役割なのは明白。


(レユーズ……意味は、分かんない……だから、暗号って訳ではなさそう……?)


名前にヒントがあるわけではなさそう。

ただ、あの時、一瞬だけ間が開いた。シンプルに躊躇っただけか、何か別の「名前っぽい言葉」を捻りだすのに使った時間なのか。


「がぁ……パンクしそ」


想像は無限大だ。


昨晩のレイラとは、騎士団のことやリゼルのことなどをガッツリ話した。

フォリアも自分の生まれや龍魂のことを話し、彼女を王族だと忘れるほどに距離は近くなった。

だが、肝心の情報は相変わらず渡してもらえない。

即ち、事がそれだけ大きく、公にしにくいこと。


フォリアは天井と睨めっこしながら、思考を巡らせるのだった。



それと同時刻、基地長の部屋に向かっているレイズたち。

レイラは小さめに口を開いた。


「はやり、彼女は待機なのですね……」

「安心してくれ。フォリア君を信用していないのではない。これが本来のメンバーだよ」

「ですが……いや、そうです……ね……」


彼女はそう言い、引き下がる。


「…………」


リゼルは、その様子を黙って見ていた。

フォリアと打ち解けるのは早く、同性の団員と交流し、気分転換ができたと考えていたが、それだけではなかった。

情報を渡しても良いかと思えるほどに、親密になってしまった様子。


彼女が同席しないことに多少の不満があるようだが、これは超えてはならない一線だ。

クラッツが断ったために言う必要はなくなったが、レイラ。気が抜けているのではないのか。


フォリアを信用していないのではなく、規律の問題。

何でもかんでも情報を流すことが、良い方向に繋がる訳ではない。

騎士団のように、巨大で国と密接に関わる組織なら、なおさらである。


「…………」


彼女は納得はしていないようだったが、それ以上何か言うことはなかった。

リゼル的には、彼女の意思を確認しておきたかったが、時間がない。だから、引き下がったのなら、こちらもそれに時間を使わない。


「……ここだ。入るぞ」


クラッツは足を止め、基地長室の部屋をノック。

情報共有のため、入室した。


フリーズルートの時とは状況が変わってしまった。

思い空気感の中、レイズたちの長いミーティングが始まろうとしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ