ルーティーン
班分けでレイラと同じになったフォリア。
立場は王と一般人、騎士団の中核と末端と正反対にいる二人だが、レイラは肩書や立場を気にしない。
天狗になる性格でもなく、親しみやすい性格。
口調が丁寧なため、時折距離を感じるが、右腕であるイケメン君相手でも同じ対応。
多分、癖がついているだけ。彼女からもよく話しかけてくれるし、王様であることをしばしば忘れてしまう。
そして今、そんなレイラと共に夕食を楽しんでいる。
ガーリックバターで炒めたビッグシュリンプがイチオシの店である。他にも海鮮系が強みで、どれも美味であった。ただ、少し値段は張っている。
「すごくおいしいですよ!!プリプリとはこのことを言うのではないでしょうか!?」
「声が大きいよ……!王族なら、こんな食事は毎日じゃない?」
「国民が苦しい状況で、高価な食事をとっている場合ではないと思いまして……それに、多くの時間を『外』で過ごしています。城にいる時間は、短いですよ」
「それは……そうです、ね……」
「そんなことより、食べてください!(食事代は)出しますので!」
「はは……でも……」
出先であることや、フォリアが命の恩人故に、レイラの奢りでこの店となった。言ってもフォリアも隠し事があるため、素直にごちそうにはなれない気持ちもあったが……
「でも?」
レイラの目を見たら、どうでもよくなった。
素直に受け取っておこう。ここで自分が黙っていれば、レユーズの件も忘れられる。
「いや、何でもない。本当に、いただきますよ?」
「どうぞ!」
『魔物を散らした件』の報酬として、ここは頂いておく。
その他の後ろめたい部分に関しては、騎士団員として、結果を出そう。そうすれば、自分の中で納得させることは可能だ。
「私も本気で行きます!!」
一時間弱、レイラたちは回線を愉しんだ。
その後、ホテルに戻ったレイラたち。
「も~食べらんない……」
満足そうにベッドにダイブしたフォリアを見届けた後、レイラは別の部屋に移動した。
「ふ~~~~~……」
長く息を吹き、コンディションを整える。
そして、龍力を少しだけ高める。場所が場所だ。最低限に抑えてからの、基礎練習。
目を閉じ、自信を巡る龍力に集中する。
微弱な龍力でも、生身とは別次元で、能力が高まる。
絶対量は小さくても、龍力オーラは発現しているのだ。練習する意味はある。
それをコントロールし、精度向上に努める特訓だ。
しばらく特訓していたところ、フォリアが顔を覗かせた。
「……レイラ?」
「あ、気になりますか?」
小さめな龍力で練習していたが、それでも近場で龍力が発せられている。
気にするな、とは無理なお願いなのかもしれない。
「特訓?こんな日くらい、やす……」
言葉が止まるフォリア。昼間、基礎練習の重要さを痛感したばかりではないか。
豪華な食事の直後で、気が緩み過ぎていた。
言葉が止まった彼女を、怪訝そうに見つめるレイラ。
「?」
「……いえ、何でもないです。ご一緒しても?」
「もちろんです」
「じゃ、遠慮なく」
並んで基礎練習をする二人。
高級な空間に、似つかわしくない龍の力が充満する。
いつもならじっくり時間を使うが、今日は色々あって疲れたし、フォリアもいる。
自分が特訓を切り上げなければ、気を遣ってずっと一緒に続けそう。
故に、レイラは敢えて早めに基礎練習を切り上げた。本当なら龍力維持の訓練もしたかったが、それには龍力絶対値が小さすぎる。今日はカットだ。
「……お疲れ様です」
「えぇ。お疲れさまでした」
「先、行きます?」
フォリアは浴室に視線を向ける。
しかし、レイラは「どうぞ」と手を向けた。
「軽く日記を書いてからにします。お先どうぞ」
「日記ですか?」
「えぇ。小さい頃から言われて……」
荷物の中からノートを取り出す。チラっと見えたが、荷物の中のノートは一冊ではなかった。
「過去の分も持ち歩いてるんだ?」
「本当に大事な日だけですよ。それでも、毎日書いていると、増えてきますよね」
「……城に保管しておく方が良いのでは……?」
「そうなんですが……これも、言われて……お見せすることは、できませんけれど……」
「(日記だし)見ないよ。でも、グランズ(元)王もマメなことを指示するんだね。意外~」
フォリアは自然と父親に言われたのだと判断した故の発言だが、そこでレイラの動きは止まる。
「…………」
日記を進めたのは父だったか?気付いたときにはルーティーン化していたし、「誰がこんな面倒なことを」と思うこともなかった。
だが、「大事だと思う部分を持ち歩け」とその先まで父は指示するだろうか。自分が書く日記は、機密情報の塊である。
父ならば、日記を指示したとしても、持ち歩く指示はしないはず。
何となくの記憶だが、日記指示と持ち歩きの指示を出した人物は、同じだったような……
「レイラ?」
「!あ、いえ……何でもないです」
「そう?じゃ、アタシ先に入っちゃうね」
「えぇ。いってらっしゃい」
「お先~~」
ひらひらと手を振り、浴室に向かうフォリア。
残されたレイラは、日記の件を「誰からだったっけ」と疑問に思いながらも、ペンを走らせるのだった。




