白銀里ペルソス
レイズたちは、日暮れ前に-白銀里ペルソスーに到着した。
「楽だったな!」
「そうだな。助かるけど……拍子抜けしたぜ」
到着するなり、レイズとバージルはそう話している。
事実、あの後は、魔物に一回も遭遇することなく、平和だったのだ。
変わったところと言えば、ペルソス付近で、騎士団とすれ違ったこと。
十中八九、雪崩対応だ。この大陸最奥の町であるため、ペルソス街道が潰れては何も往来できなくなる。
最優先の任務だろう。
気になったのはそれくらいで、後は平和な道のりだった。
レイズとバージルは楽観的だが、フォリアは静かに昼間のことを気にしていた。
(レユーズ……アナタが?)
確証はない。
レユーズがあの場所に来るまでにエンカウントし、倒されただけかもしれない。つまり、運が悪かっただけ。
また、近辺の魔物全てが凶暴化し、群れに加わっていたため、魔物の数が一時的にゼロになったのかもしれない。
色々な考えが頭を巡る。が、確認のしようがない。
もっと単純に、雪崩の環境変化により、魔物が警戒して山奥に引っ込んでいるだけかもしれないし。
フォリアがどれだけ考えても、答えは出ない。よって、ただ平和だった後半を喜べばいい。
「門もでけぇ……」
ペルソスは、フリーズルートとは桁違いに大きい町だった。
門をくぐり、メインストリートへと歩みを進める。
建物の構造やデザインはフリーズルートによく似ているが、規模や密集具合が全然違う。
道具屋武器屋だけではなく、それらが集合した商業施設、さまざまなスポーツが可能な体育館、温水プールの施設まである。
白銀の都会という印象だ。
「このまま基地に行くのですか?」
「いや、今日は疲れただろう?明日にしようか」
昼間の戦闘、レイズたちは相当疲れている。調査の件もあるのに大丈夫か、とは思ったが、団長の提案である。
よって、基地に向かわず、一晩騎士団基地の外で過ごすことになった。
「基地で目立ちたくないからな。ここは私が出そう」
「マジか!?」
「ありがとうございます!」
労いの意味も込めて、ペルソスで一番良いホテルをクラッツが泊まらせてくれるらしい。
ただ、全員個室とはいかなかった。
部屋割りは、クラッツとリゼル。レイズとバージル。レイラとフォリアだ。
向かう先は、町で一番背も値段も高いホテル。外観はもちろん、ロビーの装飾も豪華で、スタッフの対応も一級品。
レイズたちはこのホテルで一晩過ごし、明日ペルソス騎士団基地で話を聞く予定だ。
「今日はゆっくり休もう。明日8時30分、ロビーに集合してくれ」
「了解です!」
「承知しました」
クラッツは鍵を渡しながら、微笑む。
部下に気遣いもできる、良い上司だ。レイズたちのクラッツへの印象はどんどん良くなっていく。
「出かけても良いが、遅くならないように」
「はい!」
「了解です」
ペルソスには、フリーズルートで食べられなかった海鮮料理を出す店もある。
レイズたちの手持ちでは高級な店には行けない。だが、安い店を選べば、それなりに食べることができる。
良いお酒を出す店もあるが、レイズたちにはまだ早い店だ。団長はそこで楽しむのだろう。
このタイミングで三グループに分かれたレイズたち。
各階を繋ぐ昇降リフトで分かれ、キープレートに記された部屋へと向かう。
仲間との挨拶もほどほどに、二人は前に到着した。
「入ろうぜ。けど、すぐ出るだろ?」
「あぁ。部屋も良いけど、まずは飯だ」
レイズ、バージルの二人はカギを開け、高級ホテルの一室へと足を踏み入れる。
「は……!?」
「まじ……か……」
飛び込んできたのは、大きな部屋。
奥にある大きな窓からは、ペルソスの街並みが一望できる。銀色と街灯が混ざる、美しい景色だ。
浴場はガラス張りで丸見えだが、間にこれも大きな脱衣所があり、部屋からは見えないようになっている。
寝室には、身体が沈みそうなフカフカの大きなベッドが二台。何故か枕がそれぞれ三つ置かれている。
「すげぇ……」
パンフレットを記念に取ってある。それを見る限り、最低ランクの部屋はでも十分に広い。これを経験してしまうと他のホテルに泊まれなくなりそうなほどだ。
「さて……」
バージルはチラ、とベッドを見る。
「レイズ。分かるな?」
「あぁ……」
彼も全てを理解し、頷いた。
上着を脱ぎ、投げ捨てる。
「行くぞッ!!」
「おう!!」
バージル、レイズの二人は、それぞれのベッドに向かってダイブした。
「「!!」」
フワ、と布団の柔らかさを感じたと思うと、すぐに身体が埋もれていく。
そして、丁度いい位置で止まった。
硬過ぎず、柔らか過ぎず。本当に心地よいベッドだ。
キングサイズと言うのだろうか?数回寝返ってもそこから落ちる気配がない。
「「よし!!」」
ベッドを堪能した後、二人は同時に三つの枕を抱える。
そして。
「おらァ!!」
「くらえ!!」
同時に相手に向かって投げた。
それは互いの顔面に直撃するが、枕も柔らかく、痛みを感じない。
「……練習は終わり。次から、本番だ」
「……良いぜ。で、罰ゲームは」
レイズの問いに、バージルは一秒かからず答える。
「晩飯」
「オーケー。戦争だ」
二人は枕を抱え、構える。
その様相は、魔物相手に戦うそれに等しかった。
「「3……2ィ……1ッ!!」」
高級ホテルで、バカ二人のくだらないバトルが始まった。
泣くのは、そして、笑うのはどちらか……




