猛攻
凶暴なスノーマンと戦っているレイズたち。
人間の三倍はある巨大な身体。
体格差は歴然だが、最前線で戦うクラッツは、その差を感じさせないレベルの戦いをサポートしているレイズたちに見せた。
「おぉぉぉぉぉおおッ!!」
普段は穏やかなクラッツと同一人物とは思えない、気合の叫び。
纏う土龍の龍力オーラも激しさを増し、周囲に龍圧を放っている。仲間であるレイズたちに圧は感じないが、見ただけでも分かる。その凄まじさが。
彼の剣は、スノーマンの毛皮を割く。しかし、決定打には至らない。
地龍の力をもってしても、強靭な筋肉を裂くことはできないのか。
スノーマンは腕を振り回し、クラッツを吹き飛ばそうとしてくる。
攻撃範囲は広いが、対処できないレベルではない。彼は冷静に動きを読み、回避していく。
振り回し攻撃が終わり、一瞬だけ動きが落ちるスノーマン。
「今だ!」
「おう!!」
そのスキを見て、レイズたちが技を撃ちこむ。
龍術が使える準備が整っている者は龍術を、物理技が可能な者は前衛で攻撃を繰り返す。
毛皮を割き、流血を誘う。しかし、スノーマンの力は弱まらない。
(圧倒的力不足……!わたしと、リゼルの力でさえ……!!)
このパーティの№2と№3のレイラとリゼル。
その攻撃力があっても、まともにダメージを与えることができない。
汗を拭い、拭くレイラ。
戦ってみた感じから、団長の最大限の龍力で攻撃を加えて初めて、筋肉までダメージが到達するようだった。
少しでも力の入りが甘かったり、団員たちに気を取られて精神が乱れれば、与えるダメージ量は著しく低下する。
そのような状況のため、レイズたちの攻撃が、どの程度効いているのか分からない。
だが、いないよりはマシだ。スノーマンの狙いを分散させることができる。
そして、意識が反れたときに、渾身の攻撃を加えるのだ。
(悪くない。が……)
悪くなく戦いを運べていると思っていたクラッツだが、レイズたち新人は、背中を任せることができるレベルではない。
よって、戦いが進み、戦況次第では彼らに注意が割かれる状況も出てくる。
その結果、攻撃のピークと龍力オーラのピークが揃わなくなっていく。
と、その時。
「バージル!逃げて!!」
「しまッ……!」
スノーマンの攻撃の延長線上にいたバージルに一瞬だけ気を取られた。
「土龍牙斬ッ……!」
「ガャァァァァァァアアッ!!」
攻撃の溜め不足か、スノーマンの反撃を許してしまう。
「オォォォォオオオッ!!」
薙ぎ払いの剛腕が、クラッツを捉える。
「ぐっ!!」
ガードが間に合わず、モロに食らうクラッツ。
腹部にめり込む剛腕。半端な龍力者では、内臓が口から飛び出そうな威力。
「団長ッ!!」
「レイラ!行け!僕が時間を稼ぐ!」
リゼルの声を聞いたと同時に走り出すレイラ。
闇の力を充満させながら、今度はリゼルがスノーマンの前に立つ。
「僕が相手だ」
跳躍し、猛スピードで回転斬りをお見舞いするリゼル。
「……閃旋闇」
白い毛皮が斬られ、舞う。毛量に引っ張られ、大きいダメージを与えたと誤解するレイズ。
「やった……!」
「いや、ヤバいよ!!」
フォリアは目を凝らす。
待っているのは、毛皮のみ。皮膚まで攻撃が到達していない。あるいは、皮膚が重厚で、攻撃が通らなかったか。
「ちィ……」
「リゼル!!逃げろ!!」
「!」
スノーマンの両手が上がる。
その腕には、氷の塊が生成されている。
逃げろと言われても、攻撃直後で動けない。
体勢を整えるには、数秒いる。しかし、敵がそれを待つ理由がない。
「く……!!」
あの剛腕と氷の塊。食らえばひとたまりもない。食らってしまう。
無意識に歯を食いしばる。
しかし。
「……だぁぁぁあああッ!!」
レイズは間に割り込み、リゼルを蹴り飛ばした。
「!」
飛ばされながら、レイズと目が合うリゼル。
説明されなくとも、自分を庇ったのだと理解できる状況。
しかし、相手は格下。龍魂ド素人の新人団員。助けられる理由がないはず。
「おい。なぜ助け「レイラを、守るんだろ!?」
その瞬間、スノーマンが剛腕を振り下ろした。
レイズは剣をガードに使う。しかし、その攻撃力は絶大だ。
龍魂初心者のレイズに、その攻撃防ぎきる術はない。
鈍い音が響き、レイズは地面に叩きつけられた。
「が……は……!!」
氷の塊が割れ、レイズは頭と口から血を流す。
彼は攻撃体勢をとっておらず、龍力消費がない状況だった。それ故に、龍力オーラが体に残ったまま。
そのお陰で、一命は取り止めた。
「レイズ!!」
「あのバカが……!」
ギリ、とリゼルは奥歯を鳴らす。
この僕が、庇われた?エラー龍力者に?あんなにも冷たい態度を取る自分を、庇った?彼の中で、何かが千切れる。
「このままじゃ……!!」
マズい。非常にマズい。
フォリアは戦場を見渡す。団長はまだ回復中だ。ダメージが大きかったのか、レイラは回復術を数回かけ直している。
そして、この中で一番戦えるであろうイケメン君の攻撃が通用しなかった。
(アタシの剣も効かない……術だって、『溜め』がいる……!そんな暇は……!)
攻撃が通用しなくとも、波で押し流してしまえばいい。
しかし、今はそんな時間的余裕がない。龍術は威力は高いが、これがリスクとして常に存在しているのだ。
倒れたレイズから注意を反らすため、バージルが躍り出る。
「くそ!!旋風剣!!」
(……ダメだ)
フォリアの顔は濁る。毛皮を散らしただけだ。
頼れる柱が倒れたことで、バージルも動揺している。それは、龍力オーラに顕著に表れている。シンプルに修行不足であるが、龍魂歴はあっても、団員としては新人。
こんな精神的ダメージが大きい山場は乗り越えていないのだろう。
ただ、それは自分も同じ。ここまで力の差があるなんて。
同様はしていても、戦意は喪失していない。
水龍の力を引き出そうとシンクロを試みるが、今までにないくらい低精度。こんな龍では、毛皮すら散らせない。
「バージル!!来るよ!!」
「く……!!」
攻撃が甘かった彼に剛腕をプレゼントするスノーマン。
が、剛腕が直撃する前に、スノーマンの足元に闇龍の紋章が描かれた。
「ダークネスフィア……!」
現れる、暗黒の球体。
その球体はスノーマンを丸々包み、波打つ龍力の嵐でダメージを食らわせていく。
その術を至近距離で見たバージル。
「……!!」
リゼルは、怒っている。渦巻く龍力の嵐がそれに表れているようで、(彼が放つ)今まで見たどの龍術よりも、凄まじい。
が、スノーマンは球体の中で動いている様子。
「マジかよ……!」
それが見えた瞬間、球体の中から剛腕が貫かれる。
そのまま、それは薙ぎ払われた。
「!!」
防御の文字すらない。まともに食らってしまうバージル。
「ぐっ……!!」
「チィ……これでも、か」
リゼルも、龍術を破られたことで、疲労困憊状態である。
彼は攻撃の餌食とはなっていないが、龍力オーラがもう殆ど見えていない。
もう、戦えない。
「……くッそ、が……」
程なくして、彼の体が揺れ、雪のベッドにダイブした。
レイズ、バージルが倒れ、歴戦の猛者のリゼルまでも、戦闘不能。
絶望の波が押し寄せる。




