―絶対に許さない―
瓦礫と共に、奈落の底へと落ちたマリナ。
全力で龍魂を発動させておいたお陰で、死なずに済んだ。
(助かった……けど、力を使いすぎたかしら……?)
瓦礫は砂煙を巻き上げ、視界を奪う。
「げほ……こほっ……」
埃を払いながら、瓦礫の山散を降りていくマリナ。
天を見上げると、遠い先に青空が見えた。
(……だいぶ落ちたわね)
砂煙は徐々に晴れていく。
周囲を見渡すと、ここが大きな空間であることが分かった。
単なる地下道ではないらしい。自分たちが使った地下道にこんな空間はなかった。
(通路、じゃないわね……町の下にこんな空間……センスがあるわ)
軽い皮肉を飛ばしながら、進めそうな道を探す。
レイラたちは今も進んでいるはず。早く合流しないと。
(あれ……?)
しかし、落下の際に方向感覚が狂った。
どの方向に向かえば中央に行けるのか分からなくなる。
(勘を信じるしかないわね……こういう時の勘って鈍いのよね……はぁ……)
その瞬間、稲妻が周囲を駆けた。
「!?」
マリナは足を止める。
これは、自分の龍力ではない。明らかな敵意を感じる。
「……てめぇ」
「!」
声のした方を見ると、汚いコートを着たスゼイがいた。
「スゼイ……!!」
「雷のメスガキ……!!」
「どうして……それに、汚れて……」
「…………」
言えない。
レイラ一行を潰すためにウロウロしていて、落とし穴に落ちたなど。
そのまま気を失い。自分の思い通りの夢を見ていたなど。
「てめぇには関係ねぇな」
雷のメスガキが目の前にいる。
同じように落とし穴にかかったのか、上から落ちてきたらしい。
雷龍使いは間抜けが揃っているのか。ただ、そんなことはクソどうでもいい。
「絶対に……許さん……!!」
スゼイは明らかに怒っている。
「もう少し……あと一秒で……!!」
夢の中ではあるが、あと一秒でフランバーレとキスできたのだ。
それなのに、邪魔されてしまった。
こんな間抜けなメスガキに。
「は!?許さないですって!?あんただって散々やってきたでしょ!!」
「『そっち』じゃねぇ!!」
「は……?」
「が……説明するのもだりぃ……」
というか、口が裂けても言えない。
「…………」
問答無用。黙ったまま、背中の剣を抜いた。
スゼイの龍力が跳ね上がる。
「!!」
今まで感じた、最高の龍力だ。
身体が『逃げろ』と言っている。だが、退かない。というか、なぜか自分は彼を怒らせてしまっている。
上手く逃げたとしても、どこまでも追ってきそうだ。
「クソガキャァァァァアアアアアアア!!」
「クソやろぉぉぉぉぉぉおおおお!!」
恐怖を振り払うため、大声で反応するマリナ。
雷同士が、ぶつかった。