―信用―
リゼルは振り向かない。
この場合、続く者と続かない者の二者いるはずだが、ここには前者しかいないと分かっているためだ。
バージルは半ば呆れる。
「信用しすぎだろ……」
「でも、行くんでしょ?」
彼の脇を、マリナが駆ける。先を越された。
「じゃ、俺も」
「おい!」
レイズまで。
「くっそ、あいつら……」
「皆さん!!」
「レイラ!もういい!行くぞ!!」
「はい!」
レイラは守護龍陣を解除する。その脇を、バージルが隕石の隙間を縫うように走る。
前を走る仲間も、隕石の衝撃は食らっているものの、直撃は避けれている。
(……レイラのお陰だ)
それを可能にしたのは、間違いなく彼女の力。
正確には、彼女の守護龍陣により、クリムゾン・メテオの挙動が分かったためだ。
あの隕石は確かに強力な攻撃だが、操作性はない。
動線さえ読めてしまえば、避けることはできる。地面に直撃した際に生じる衝撃波までは防ぎきれないが、受けるダメージを大幅に減らすことができる。
「ち、抜けるか」
『量』をもって潰しにかかったイクサスだが、その目論見は外れた。
個々の龍力は自分に及ばないが、多彩な戦闘経験により、しぶとく生き残っている。
「やっぱ、一体ずつ確実に……」
「させるか」
「!」
リゼルがイクサスに斬りかかる。
受けることは容易いシンプルな攻撃だが、先ほどよりも、重い。
闇色の間から見える彼の目は、強くギラついていた。
(レイラの力は守る力だ。あいつにばかり負担をかけてどうする!?)
自分への怒りと、レイラへの思い。そして、龍とのシンクロ。
それが上手い具合に噛み合い、完全なる龍魂の域へ一歩踏み込んだリゼル。当の本人は、気づいていない。
「リゼル!つえぇ……!!」
「……負けられないッ!」
イクサスがリゼルに止められている、今がチャンス。
最大限の龍力を引き出せ。
「ソル!力を貸してくれ!!陽炎龍ッ!!」
「蒼雷!!」
「空裂刃!!」
襲い掛かる三龍。
リゼルを振り払おうとするが、力は拮抗している。
「……させるか」
「てめぇら……!!」
イクサスの目が見開かれる。
一人後方にいるレイラは、光の紋章を描いた。
「ホーリー・ソード!!」
「あぁぁぁあああッ!!」
合計四龍の強力な龍力が、イクサスに叩き込まれた。