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龍魂  作者: 熟田津ケィ
―拒絶する島―
605/689

―負担―

レイズたちとイクサスの攻防は続く。

しかし、実際は対等に攻防しているように見えているだけで、実際はイクサスに攻め入られているだけである。


彼の龍力も凄まじいものがあるが、レイズたちもスキルアップ・レベルアップしている。

それ故に、しぶとく戦えている。以前の実力であれば、すでに終わっていただろう。


陣形は乱されているものの、全員が前衛で混戦状態だ。

頻繁に範囲攻撃が襲い掛かってくるが、耐える。イクサスの技や術に、良くも悪くも『慣れ』てきているため、所見のインパクトはない。


しかし、これは『やりにくい』。

マリナが最初に感じた違和感は、これだ。


敵一体。それも、サイズは自分たちと同じ。先日までの巨大な魔物戦ではない。

よって、そのサイズのものに五人で突っ込めば、やりにくさを感じるのは自然。


(このまま、やるの……?)


雷を操りながら、マリナは仲間たちの顔をチラ見する。

彼らの動きに大きな変化はない。陣形を変える気配が感じられない。


(わたし、だけ……?でも……)


頭の悪そうなレイズやバージルはともかく、騎士団で常に最前線で戦ってきたリゼルやレイラがこの違和感・やりにくさに気づかないとは思えない。


(ち……邪魔だ)

(そこは私が行きたい!)


実際、二人も気づいていた。

仲間同士では、龍力によるダメージは通らない。しかし、人がそこに居れば場所は埋まるし、剣を振れば仲間に当たる。


「く……!」

「ッ……!」


分かっている。何か作戦を考えなければならないことは。

しかし、二人とも冷静さを失っている。

ミーネを欠き、数秒で全滅しかけた事実。その精神的ダメージは計り知れない。

それに、別の心配もあった。仮に、前衛を数名下げたとして、残った前衛でイクサスを止められるのだろうか。

誰を下げる?誰を残す?それを考えられる時間は、無い。


「鬱陶しい……クリムゾン・メテオ!!」

「なッ!」

「やべぇぞ!!」


天に巨大な炎龍の紋章。

そして、そこから無数の隕石。『クリムゾン・メテオ』。先ほどのクリムゾン・フレアとは比にならない、超広範囲の龍術だ。


大ピンチだが、好機でもある。

あれだけの龍力を消費してしまえば、龍力のピークは下がるはずだ。

耐えきれれば、の話だが。


「……守って!!守護龍陣!!」


地面に描かれる、巨大な光龍の紋章。

それはレイズたちを守るように、光の柱を展開した。

レイラは両手を上げ、手を広げる。彼らを、守るように。


隕石が、ぶつかる。

一発、また一発と、隕石が柱にぶつかる。


「~~~~~~~!!」


凄まじい衝撃だ。島全体が揺れているかのような錯覚に陥る。

立っていられない程ではないが、その衝撃と揺れにバランスを取るのに必死だ。


(いつ終わるんだ……!?)


実際は、始まって数秒である。ただ、危機的状況故に、永遠にも感じる時の流れ。

空には、まだ隕石が浮遊している。


絶望に落ちる、その直後。


ピシ、と嫌な音が響く。

光の柱にヒビが入ったのだ。


「!」


レイラの顔が苦痛に歪む。

それでも、両手は下ろさない。


「くっ……!!」


ミシ、と柱が歪む。龍の守護も、長くはもたない。

彼女の俯く。金色の髪がさらりと下がる。


(……僕は、馬鹿だ)


その時、リゼルは自分で自分を殴った。手加減のないそれに、鈍い音が響く。


「リゼ……」

「おい……?」

「……術者を叩く。互いを『邪魔しない』距離を保て。僕が先頭に立つ」


リゼルはそう言い残すと、一人、光の柱の外へと走り出した。

振り向くことなく、一人で。

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