―業火―
龍との戦争で滅んだ町。空中都市リムークス。
それが見え始めたくらいまで、レイズたちは進行していた。
しかし、ある人物により、それ以上の進行は阻止されているところだ。
「よぉ」
「…………」
短い金髪を流れるように立たせている。さわやか系な男。
しかし、感じる龍力は邪悪そのものだ。
レイズのかつての属性の炎を纏い、静かに立ちはだかった。
「イクサス……だったか……?」
「ご名答」
人差し指を立て、ポーズを決めるイクサス。
「悪いが、ここでジ・エンドだぜ」
「!」
レイズたち五人の龍力が跳ね上がる。
「五対一だぞ!!」
「……それでも、オレが勝つ」
「!」
圧倒的自信。
イクサスの龍力は『完全なる龍魂』の域に到達している。
自分たちもその域にはいるつもりだが、精度という意味では劣る。
こちらは五人。束になれば、勝てるはずだ。
「行くぞ」
リゼルの号令で、五人が一気に走り出す。
馬鹿正直に真正面から攻め込まない。イクサスの反応を遅らせるため、動線をずらして攻める。
「だぁっ!!」
「おらぁ!!」
太陽と風の攻撃。しかし、イクサスは器用に避ける。
入れ替わるように光と月の攻撃が繰り出されるが、一つは弾かれ、一つは避けられてしまう。
その乱戦に違和感をもったマリナは、一つの思いを抱えていた。
(あれ……?)
しかし、攻めなければ、勝てない。
その思いを一旦封じ、攻撃を繰り出す。
「蒼雷一閃!!」
一瞬の時を稲妻が駆ける。速度全振りの技だ。
しかし、イクサスの剣と交わり、滑るように受けられてしまう。
剣と剣とが滑り合う音が響く。
「やっぱ、こんなもんか……」
彼は少しだけ口角を上げると、腰を少し落とした。
炎が激しく燃え上がり、空気を焼いていく。
「!!」
炎龍経験者であるレイズですら、ゾク、と背筋を凍られた。
「龍王炎撃砲ッ!!」
剣を振りぬくイクサス。
(彼は炎龍王を知らないはずだが)炎龍の王を模した龍頭が具現され、レイズたちに襲い掛かる。
超強力な範囲攻撃だ。その間合いに、レイズたち全員がいる。
(マズい!!)
攻め入った後の固まったタイミングを狙われた。
逃げ切れない。
「!!」
腕を十字に組み、龍力を防御全振りにする。
しかし、イクサスの攻撃は終わらない。
「紅の業火に抱かれて朽ちろ!!……クリムゾン・フレア!!」
彼が指を鳴らすと、レイズたちの頭上に炎龍の紋章と共に、火炎の球体が出現した。
「!!」
火球の落下。
レイズたちに防ぎきる術はない。
火球の落下の衝撃に巻き込まれ、白目をむきながら空中に投げ出される五人。
「ごは……!!」
「ッ~~~!!」
呼吸すら苦しい。レイズ以外の四人は、呼吸しただけで器官が焼けてしまう。
しかし、ここで終われない。レイラの応急処置の回復術が仲間を包む。
開幕一分も経っていない。
それなのに、これほどのダメージを食らうとは。
「く……そ……」
「はぁ……はぁ……」
いつまでも寝ていられない。
必死でレイズたちは身体を起こし、立ち上がる。
「……まだ、やるか」
イクサスの紅の瞳が、冷たく光る。