表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
龍魂  作者: 熟田津ケィ
―拒絶する島―
601/689

―完全と不完全―

ミーネの『完全なる龍魂』。

彼女の刃に氷が付着し、彼女の周囲を粉雪が舞う。


「ふ~~~~……」


口からは白い息が踊り舞う。

瞳の青みが強まる。


普段は大人しく、無害な彼女の雰囲気だが、押しつぶされそうな圧力を感じる。


「……へぇ」


この強大な力を目の当たりにしても、シェキナーは全く臆さない。

それどころか、より好戦的な龍力を放っている。


「それがあなたの全力なのね」

「……どうかしらね」


素直に「えぇ」と答えても良かったのだが、それは気が引けた。

自ら「これが限界です」と、力の上限を教えてやる必要は全くない。


「なら、わたしも」

「!!」


渦の直径が広くなり、シェキナーの龍圧が急上昇する。

彼女の剣にバブルが発生する。見栄えは強くなさそうなのだが、感じる圧力は段違いに上昇している。


「「…………」」


お互い無言。何か合図があった訳でもない。

それなのに、両者全く同じタイミングで龍力を前方に飛ばした。


「「!!」」


氷の龍圧と水の龍圧が激しくぶつかり、この空間を揺らす。


「ッ……!!」

「ふふ……」


シェキナーは、こちらの龍力レベルに軽く追いついてきた。

今の彼女が『完全なる龍魂』と呼べる領域かどうかは分からないが、フル・ドラゴン・ソウルを超えた力であることは確かだ。

言うなれば、完全なる龍魂の一歩手前。微妙な立ち位置。

憎しみだけで進化したのか。非常に危険だ。


それに、ミーネに分が悪い因子は他にもある。


(この短期間で、ここまで……それに、この渦……鬱陶しい……)


忌々しいこの激流。

シェキナーの龍圧上昇と共に広がりはしたものの、自由に駆け回って戦えるほどの広さではない。

仮に彼女が渦の際まで追い込まれても、リスクは少ないだろう。が、自分は違う。

激流に吞まれてしまえば、最期だ。こちらの氷が長く効かないことは先ほど証明されてしまっている。

完全なる龍魂で龍力レベルを底上げしたものの、激流に揉まれながら激流を凍らせるほどの力が出せる保証はない。


「「!!」」


二人は同時に走り出した。

地面にできる水たまりを散らしながら、激闘は続く。


「水剛刃!!」

「絶氷龍刃!!」


剣と剣とが激しくぶつかり合う。

一発一発毎に空間を揺らし、渦が荒れる。


「まだまだっ!!」

「くっ!」


完全なる龍魂であるミーネの龍力に食らいついてくるシェキナー。

龍力では勝っているはずなのに、どうも押され気味だ。

これは、シェキナーの憎しみによる執着心と、パートナーである水龍とが嚙み合っているために起こる現象だ。

もちろん、術技の練度や、龍力の構成によるものもある。

龍力者同士の戦闘で龍力レベルだけでは勝敗が分からないのは、その要因が挙げられる。


(これで……限界なの……!?)


戦いながら、ミーネの顔に焦りの色が滲む。

ここまでやって『完全なる龍魂』手前の相手にすら勝てないのなら、勝利は絶望的だ。

ならば時間稼ぎを、とも考えるが、こちらのスタミナも無限ではない。

この調子で戦えば、そう遠くない未来、エネルギー切れを起こすだろう。


(一か八か……!!)


ミーネの目が蒼く光る。

腰をゆっくりと下ろし、重心を下げる。

そして、今出せる限界の龍力を解放した。


「!」


途轍もない冷気が空間を支配する。

やがて、激しくうねる渦の表面が凍り始める。


そして。


「絶氷蒼龍王剣!!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ