―行って―
ミーネの同郷である彼女。名前は、シェキナー。
茶髪ロングの巻き髪で、毛先を水色に染めている。先日見た時より、少し髪が伸びているか。
ゆるふわ感溢れる髪型だが、その顔は凶悪的だ。
「久しぶりだね。シェキナー……」
「えぇ。久しぶり」
二人は睨み合い、憎しみを込めた挨拶を交わす。
その直後だ。渦の外から、レイズたちが声をかけてきた。
「ミーネ!無事か!?」
「敵は!?そこにいるんですか!?」
水流の音は激しく鳴り響いているが、仲間の声はよく聞こえる。
龍魂により感覚が研ぎ澄まされているのが大きいが。
「……無事よ。目の前にシェキナーがいるわ」
「何だって!?他は!?」
「…………」
最小限の動きで渦内を確認する。水流内にいるのは二人だけだ。
「……一人だけみたい」
「よし!!なら、これをぶち破ってそっちに行くぞ!!」
そこで、初めてシェキナーが外側に向かって声を張った。
「止めときな!」
「……あたしも、そう思う」
睨み合ったまま、二人は言う。
「……力は拮抗してる。下手に外力を加えれば、タダじゃ済まないわ」
シェキナーは天高く渦巻く水を見上げながら言った。
その考えはミーネも全く同じである。
「……そう言う事」
この間にも、龍力によるせめぎ合いは続いていた。
途轍もなく大きな水流を凍らしていくミーネの氷龍だが、渦を凍結し、破壊するまでには至らない。
それどころか、凍らせた渦が徐々に解けている部分も見受けられる。これは、二人の龍力が拮抗しているためだ。
「…………」
ミーネは天高く伸びる渦を見上げる。
自分の近くの水流は氷へと変化しているが、激しい流れにより、それが定着することはなかった。
削られ、砕かれ、流れ。削られ、砕かれ、流れを繰り返している。
そんな状態で下手な外力を加えようものなら、展開されている水流がエネルギー源を失い、一気に頭上に落ちてくる。そうなったら、全員溺死しかねない。
「……はぁ……仕方ない、わね」
ミーネは一つ、大きなため息をついた。
自分は、どうやらここまでらしい。
大きく息を吸い、叫ぶ。
「……行って!!皆!!」
「!!」
レイズたちは、渦の外でお互いの顔を見合わせる。
「おい……!?」
「ちょ、ほんとに!?」
ミーネをここで見捨てるのか?そんなことできない。しかし、ここで渦を睨んでいても、埒が明かないのは事実だ。
レイズたちは、決断を迫られている。