表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
龍魂  作者: 熟田津ケィ
―拒絶する島―
597/689

―襲来―

進む度に、ミーネの顔色は悪くなっていく。


「…………」


休んでどうこうなる問題ではないのは分かっている。

しかし、こうなると気を遣わずにはいられない。


「ミーネ?少しくらい、龍力を使っても……」


恐る恐るレイラが声を掛ける。


「そうだぜ。その殺気だって、龍力者のだろ?」

「……うん」


ミーネは小さく頷く。

老龍山の混沌とした空気感ではなく、この殺気は龍力者によるもの。魔物のそれではない。


「なら、丸腰(龍力なし)は危ないぞ。極寒の地で素っ裸みたいなもんだ」

「……うん。けど、少しでも力を温存したくて」

「…………」


気持ちは分かる。

敵の強さは未知数だ。長いこと同じ相手を追いかけているが、本気で剣を交えたことは少ない。よって、具体的な龍力クラスは未だ不明である。

分かっているのは、主要メンバー全員が『完全なる龍魂』の領域にいることだけだ。その先のことは分からない。


流石に見かねたのか、リゼルが口を開く。


「ミーネ。それで自分の体力を過度に削るのは本末転倒だぞ」

「リゼル……分かってる。けど……」

「……その殺気……それだけの力を感じるのか」

「……うん。『戦える力』を残しておきたいの」


ミーネは『龍力』ではなく、『戦う力』と表現を変えた。

自分自身の体力だって戦う力の要素の一つだ。だが、彼女はそれらを含め、広義とした。


「……そこまで言うなら、いいだろう」


リゼルは歩みを進める。


(今のミーネは弱くない。だが、それでも力を温存するレベル……)


誰が待ち構えているのか想像するしかできないが、初っ端から実力者をぶつけてきたようだ。


(スゼイ。フリア……イクサスか?だが、僕たちは全く感じない……)


ミーネの主訴である殺気を自分たちが感知できないのはおかしい。

予想したその辺りの敵であれば、少なくともレイラには殺気を飛ばしている筈。

なぜ、ミーネだけなのか。


その理由は、龍力者の攻撃を見て、理解することになる。



「……!!」


ぶる、とミーネは激しく身震いする。


全身から血の気が引く。と同時に、ミーネは龍力を解放した。


「どいてっ!!」


龍力を解放したと同時に、他の仲間を気合で吹き飛ばした。


「「ッ!!??」」


突然のことに驚きながらも、振り返りミーネの方を見る仲間たち。

そこには。


「え……!?」


天まで伸びている水の竜巻が、彼女の周囲を囲むように現れていた。

高さもあるが、かなり広い範囲を覆っている。


「あれは……!」


この力。見覚えがある。

レイラの苦々しい記憶が蘇る。無意識に手の甲に視線を走らせる。あの時は、本当に終わりだと思った。




「…………」


渦の中で、ミーネは冷気を放出する。

激しくうねり狂っている水流が、徐々に凍てつき始める。


「……来たね。シェキナー……」


ミーネは白い息を吐きながら、静かに呟いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ