―残留龍力―
「はぁ……はぁ……ついに……」
レイズたちは、老龍山の頂上へ到着した。
頂上は常に風が吹いており、髪や衣服をなびかせている。
「来たな……」
彼らは老龍山の上に鎮座する浮遊島を見上げる。
近くで見ると、本当に大きい。
「あの剣とか……どうなってるんでしょう……?」
島の底で下を向いている巨大な剣や槍、砲が不気味だ。
「……いきなり落ちてこないわよね?」
歴史から、落ちてくるモノではないのは分かっているが、あくまでそれは用途としての話だ。
老朽化して抜け落ちる、なんて可能性はゼロではない。
「……そう願いたいわ。で、例のモノは……?」
団長から聞いている転移装置。
装置と言うか、装置のエネルギーの照射先のことだ。
「……見えるか?」
「……いや」
レイズとバージルは目を細めて島の底をじっくり見ているが、それっぽい照射装置はない。と言うか、見えない。
「……冗談じゃねぇぞ?ここまで来て……」
「記述にはあったんだ。諦めるには早い」
早々に匙を投げようとするレイズを窘めるバージル。
とは言え、自分も見えていないのだ。
「地面にレーザー的なのがあるのかもな」
「……探すか」
空がダメなら、地面だ。そう言って二人がばらけようとした瞬間。
「!」
リゼルの身体を一瞬だけ闇の力が駆けた。龍力使用後もある程度の時間、力をその場に残すことが可能。残存龍力と表現することが多い。
残存龍力を使って自属性の龍力と合体させたり、純粋に龍力の底上げができたりする。
今瞬間的に感じたのは、禍々しい闇の力。そして、凶悪的な笑みを浮かべるアレクの横顔。
「アレクッ……!」
怒りの形相で彼の名を呼び、周囲を見渡すが、誰もいない。
「リゼル!?どうしたんです!?」
彼の突然の変化と四聖龍の名に、レイラは動揺する。
「……レイラ。お前は何も感じなかったのか……?」
「え?……えぇ……まぁ……」
「…………」
あんなにも禍々しい闇の力。
光龍であるレイラならば敏感に反応してもよさそうだが、彼女は何も感じなかったと言う。
残存龍力エリア外にいたからなのか、元闇龍だからかは全く分からない。が、確かに感じた。
「何だ?アレクが通った後か?」
「……あぁ。微かだが、確実に感じた。あれは、あいつの龍力だ」
「先に行ってんのか。良かったじゃねぇか」
「…………」
バージルの表情は明るくなるが、リゼル個人としては全く明るい気分にはなれない。
残存龍力を感じたと同時に浮かんだ彼の凶悪的な笑みの横顔。
杞憂であればいいのだが。
「……こっちに進んでいる。行くぞ」
「はい!」
リゼルは微かに残るアレクの龍力を辿り、先へのヒントを探るのだった。