―最大火力―
ミーネを中心に、冷気が放たれる。
「っ……!!」
「さむ……!」
レイズたちは攻撃対象ではないため、ノーダメージだが、強烈な冷気に身が震える。
龍力を纏っていなければ、動けなくなっていたところだ。
放たれた冷気は氷へ変化し、地面を伝う。そして、凄まじいスピードで皇獅子ゴールドライオの足元へ伸びていく。
「大零感!!」
氷が結晶のように具現化され、皇獅子ゴールドライオの四肢を凍らせる。
彼女の龍力で、あの強敵の動きを、止めた。
「~~~~~~!!」
皇獅子ゴールドライオは脱出しようと暴れているが、前脚後脚が完全に氷の結晶内に閉じ込められ、動けない。
これが、先ほど言っていた『きっかけ』か。
「みんな!!今よ!!」
「!」
「あぁ!!」
レイズたちは龍力を限界まで高め、走り出す。
ある者は剣に、ある者は紋章を描く。
そして。
「獄炎龍斬!!」
「裂空衝!」
「ホーリーランス!!」
「月剛斬!!」
「蒼雷疾駆斬!!」
六龍の大技が皇獅子ゴールドライオに叩き込まれる。
先ほどとは違い、技や術全てが敵の強靭な皮膚や筋を裂き、血液が散る。
「まだです!!ヴリリアント・ソードレイン!!」
光龍とエクスカリバーの調子が良いレイラは、更なる高位術を叩き込む。
龍力レベルもそうだが、詠唱スピードが跳ね上がっている。普通あのクラスの龍術を詠唱しようと思えば、十秒以上の時間が必要だし、立ち止まって集中して紋章を描く必要がある。
しかし、レイラはその常識に囚われていない。
走りながら紋章を書くし、詠唱時間も非常に短い。
「食らいなさい!!」
光り輝く無数の剣が雨のように降り注ぐ。
裂けた皮膚や筋の上からあのクラスの攻撃は非常に痛い。
皇獅子ゴールドライオは悲鳴を上げ、よろける。しかし、脚が固定されていて倒れることすらできない。
そこで、彼女の出番だ。
「……終わりよ」
氷が爆発したように弾け、皇獅子ゴールドライオに最後のダメージを与える。
皇獅子ゴールドライオは成す術なく、崩れ落ちる。
「やった……のか……?」
「はぁ……はぁ……殺気は感じなくなりましたが……」
肩で大きく息をしながら、注意深く敵に近づくレイズたち。
気高い皇獅子ゴールドライオ。
膨れ上がった筋肉は収縮を始めており、黄金に輝く毛も輝きを失い始めている。
少なくとも、皇獅子状態は切れた様子だ。
「……しぶといな。まだ息があるぜ」
ゴールドライオは、浅い呼吸を繰り返していた。
目は半開きだ。目線は空を向いており、近くにいる自分たちを見てすらいない。
ここまで来ると、少し可哀そうだが、強者が生き残る自然の鉄則だ。
「……行くぞ。場所を変えて、休む」
戦いは終わった。わざわざトドメを刺す理由もない。
リゼルは仲間たちを促し、ゴールドライオに背を向ける。
レイズたちは勝利を収めたが、上には上があることを思い知らされたのだった。