―完全なる龍の力―
レイラ、マリナ、ミーネの三人が戦闘に加わり、レイズたち三人の時より、戦いはだいぶ楽になった。
それでも一瞬一瞬気が抜けないが、戦える人数が倍になったのは大きい。
ヘイトがバラつき、攻撃を分散させることが可能となる。ただ、お互いがお互いを邪魔しないような立ち回りが必須であるが、レイズたちには慣れたものだ。
レイズたち六龍は、今までの自分の限界を超えつつあった。
フル・ドラゴン・ソウルを超えた完全なる龍魂の領域。その深層へと足を踏み入れている。
先ほどの件を境に、レイズたちの龍力は格段に引き上がった。
リゼルの意志に引っ張られた形ではあるが、レイズとバージルの龍力も高い。
イルザーラの安らかな顔を見た三人。それがトリガーとなり、更なる深みへと進んだ。
ただ、皇獅子ゴールドライオの戦闘能力は非常に高い。
特に、今の姿になってからの攻撃やスピードは凄まじい。
攻撃力は当然だが、巨体に似合わないスピード。爪の攻撃を受ける回数が増えてきた。
だが、レイズたちも上がった龍力を存分に扱い、受けきれている。
先ほどまでのへなちょこ(それでも完全なる龍魂の領域だが)な龍力であれば、刻まれていたクラスの攻撃だ。
「なるべくかわせ!!何度も受ける力はねぇぞ!!」
ただ、バージルが叫んだように、避けることが可能であるなら、避けたい攻撃だ。
無理して何度でも受けて龍力を消費するのは利口ではない。
それでも、レイズやリゼル、ミーネは受けることを選び、戦闘を進めている。
「ん゛ん゛ッ!!」
「!」
何トンかも想像つかない重み。体中が悲鳴を上げるが、耐える。
筋肉や骨に衝撃が加わる。その衝撃はそれらを伝って地面に届く。
到達したそれは、地面にヒビを入れ、場を荒らしていく。それでも、この厚い龍力が破られることは今のところ、ない。
技による相殺とはいかないまでも、ダメージを大幅に減らすことに成功しているためだ。
(よし……!こんなにも力があったのか……!)
(だが、その分体力を持っていかれる。過信はできない)
(でも、そんなの関係ない!イルザーラさんが守ってくれた!彼女を超えないと!助けてもらった意味がない!!)
積極的に前衛に立って戦っている三人に半ば呆れながらも、負けじと前に出るバージル、マリナ、レイラの三人。
レイラ、マリナは一際大きな龍力を放っている。
その力に連動しているのか、レイラの剣は先日より強く光っている。
レイラ自身も変化を感じている。
(気のせい……?前よりも……軽く……?)
重みを感じない。
正確には、重量自体は感じているが、見栄えほどの重さは感じない。
光龍やこの力の影響で、実際の重さよりも相当軽く感じているのだ。
今までであれば、龍力を発動していても剣の重さ自体は変わらなかった。そのため、光龍とエクスカリバーの関係性が非常に大きいと言える。
それに。
(素早いですが……目で追える!!)
龍力レベルが上がったことにより、皇獅子ゴールドライオの動きに目が追いつけるようになっていた。
目だけではなく、身体能力も上がっている。技や龍力コントロールが追いつき始める。
レイズたちが龍力の限界を極めつつ戦っていると、じわじわと皇獅子ゴールドライオの動きが変化しているのが分かった。
「気を付けろ!範囲攻撃だぞ!」
「えぇ!」
「クッソ……!」
一対一で埒が明かないと考えたのか、範囲攻撃を繰り出してくるようになった。
口から光線を出して、首を回すことでそれを曲げてみたり、剛腕と巨大な爪の攻撃を斬撃として広範囲に飛ばしてきたりしてくるようになる。
レイズたちに残された龍力は多くない。龍力レベルが上がり、巨大な力が出せるようになるということは、それだけ戦える時間が減るということだ。
そのバランスを考えた際、『完全なる龍魂』は非常に燃費が悪い。
だが、レイやヒューズ、フリアたちはその状態でも長時間戦える龍力者だ。
限界を極めつつ、エネルギーの限界値を上げていかなければならない。
「動きに注意しろ!疲れに期待するな!!」
「分かってる!」
対する皇獅子ゴールドライオの力は、どのくらい残っているのだろうか。
皇獅子状態になってから、かなりの時間が経過している。時間だけでなく、大技を連発しており、疲労が溜まっているはずではあるのだが、動きに衰えを感じさせない。
「このままはジリ貧よ!一気に決めるわ!」
珍しく、ミーネが号令をかける。
「あたしがきっかけを作る!!全力で叩いて!!」
「分かった!」
「おう!」
この状態で戦えることは、十分確認できた。
今まで以上に龍力管理が必要なことも理解できた。今はこれで十分な成果だ。
ミーネは氷龍の紋章を描き、龍力を最大限解放する。