表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
龍魂  作者: 熟田津ケィ
―霊峰と空―
586/689

―憧れの龍力者―

「イルザーラ!!」

「イルザーラさん!!」


ゴールドライオがレイズたちへと標的を移すと同時に、二人は彼女の元まで到達した。



「っ……」


イルザーラは血まみれの傷だらけで、今にも倒れそうだ。

それなのに、口から出た言葉はミーネを案ずるものだった。


「はー……はー……ぶじかい?おじょうちゃん……」


かすれ声で、小さな声。相当なダメージを受けている。

しかし、それでも彼女はミーネを守り切った。


「!……は、はい……」


ミーネは腰こそ抜けているものの、氷の盾を具現化しているなど身を守る龍力は発動できていた。

ただ、相手はこの程度の盾を無意味にするほどに力を付けているが。


「はは……よかった……」


彼女の無事を確認した直後、がくん、とイルザーラは膝を折り、地面に跪きかける。


「!」


レイラは慌てて彼女を支える。彼女の手や服に温かい鮮血が付着する。が、彼女は気にしない。


「すぐ治します!!」

「……やめときな」

「でも!」

「すこしやすめば……なおるさ。アタシはがんじょうなんだ……」

「ですが……」


このままで放置する訳にはいかない。レイラは無理矢理にでも光龍の紋章を描こうとするが、うまく描くことができない。

紋章が書かれては、ぐにゃりと曲がり、粒子となって消えていく。龍力がそこで安定しないのだ。いったい、どうなっているのか。



「はは……ていこうしてやったぜ……じょおうさまに……」

「そんな……そこまで……」


その様子から、イルザーラが纏っている微かな炎龍の力が、彼女の光龍を邪魔しているようだった。

こうなってしまえば、治癒術はかけられない。


「そん……なことより……」


痛みに耐えながら、イルザーラは周囲を見渡す。誰かを探している様子だ。


「いた……」


鋭い目つきで、マリナを睨むイルザーラ。

彼女と目が合い、マリナは怯む。今にも死にそうなのに、すごい眼力だ。


「え……」

「あんた……アタシに……かったんだよ……?」


マリナとイルザーラ戦で、マリナは勝ちを収めている。

しかし、彼女との試合は『龍力切れ』だった。よって、気持ちよく勝てた訳ではない。だが、勝ちは勝ちである。


「おおきなちから……それをひっくりかえした、あのしあい……」

「イルザーラさん!!喋らない方が……!!」


彼女が口を開く度に傷口から血が流れる。それだけ力んで言葉を発している。

しかし、レイラの悲痛な声も虚しく、イルザーラは喋りを止めない。


「あれで、アタシはあこがれた……とししたの、あんたに」

「……!」

「あんたたちが、あそこにいくのはわかってた……だから、つよくなったアタシをみせて、おどろかせようと……おもったのに」


イルザーラは歯を食いしばる。喉の奥で、血が吹き出る音が聞こえる。

非常に痛々しく、見ていられたものではないが、マリナは目を反らせない。反らせてはいけない。


「それが、あんたの……げんかいなのかい……?」

「…………」

「アタシは……みるめがなかったのかい……?」


イルザーラに真っ直ぐ見つめられ、マリナは唇を噛み締める。自然に拳に力がこもる。


「……勝手なこと、言わないで」

「マリナ……」


マリナの顔は、動揺や怒りなどの様々な感情が入り乱れているそれだった。

言葉も、突き放すような厳しい言い方だ。勝手に憧れて、勝手に失望して。自分勝手すぎる。


しかし、マリナの周囲には蒼い稲妻が駆け巡る。

今までで一番稲妻量が多い気さえする。心なしか、イルザーラの顔が安堵に変わっていく。


「けど、見てて」

「はは……」


マリナはそれだけ確認すると、踵を返した。


「レイラ。ミーネ。もう十分よ。後はそっとしておいてあげて」

「……ありがと。すこし……ねるわ……」

「…………」


レイラはゆっくりと棘の面にイルザーラを預ける。

イルザーラはすでに目を閉じており、「ふーーーー……」と、息を長くついていた。

その顔は、非常に安らかだった。


レイラとミーネはその顔をしっかりと脳裏に焼き付ける。

特にミーネは。自分を守って、彼女は眠りにつくのだから。


二人はは何度も振り返りながら、龍力を高めていく。

そして、先を歩いているマリナに並んだ。


「……分かってると思うけど」

「はい。終わっても、見に行きません」

「……えぇ。あたしも、見ない」


雷、光、氷。

新たな決意を胸に、その三龍は限界を攻めていく。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ