―覚悟―
マリナとレイラは飛び出した。ゴールドライオの目の前だろうが、関係ない。
ほとんど反射で動いてしまっている。
「……!!」
リゼルはその行動に理解が追いつかない。
(馬鹿が。餌になる気か!?)
とにかく注意を反らさなければ。彼女たちは、飛んで火にいる夏の虫だ。
彼は舌を打ち、二人に指示を飛ばす。
「レイズ!!バージル!!援護しろ!!」
「「!」」
ここで本当にこちらに引き寄せないと、レイラが危ない。
リゼルは全龍力を解放するつもりで龍力を高めた。
「リゼ……!!」
凄まじい龍力だ。先ほどの斬月を放った時よりも絶対量が上がっている気がする。
リゼルは、本気だ。
問答無用の指示。ほとんど無茶振りだが、従う他ない。バージルも両頬を叩き、気合を入れる。
ごちゃごちゃ考えるな。今は、一秒一秒が惜しい。
(風龍!!俺に力を!!)
バージルも最高の龍力で走り出す。ここで、皇獅子ゴールドライオの注意をこちらに引き付けるのが絶対事項だ。
中途半端な注意引きでは不十分だ。今は、弱っている獲物が目の前にいる。その上でこちらに目を向ける必要があるのだ。
半ば強引に、龍力を過剰消費してでもこちらにヘイトを向ける必要がある。
今、やらないと。レイズ。お前も、できるよな?
「!」
バージルの目配せに、彼も気付く。
「あぁぁぁぁぁああああっ!!」
その瞬間、レイズは吠えた。
「やってやるよ……!!」
自分がこのまま及び腰なら、飛び出した二人は死ぬだろう。
そして、イルザーラとかいう女性は当然、死ぬ。その後は、ミーネが死ぬだろう。
その後に待つのは、全滅の文字だけだ。
(俺は一人じゃない!!仲間もいる!!ソルだって(声は聞こえないけど)いる!!)
チリ、とレイズの周囲に紅炎が走る。
(ここで戦えなきゃ!!この先……どんな敵にだって戦えない!!)
紅炎がレイズを包む。そして、激しく燃え上がる龍を模していく。
彼はそのまま走り出す。
「できるだけ引き離せ!」
「あぁ!」
「やってやるよ!」
三龍の強大な力が輝く。
「…………」
そこまでして、ようやく皇獅子ゴールドライオが振り返った。
三人は口をそろえて、挑発した。
「「「……来やがれ」」」