―限界を引き出せ―
レイラは敵の筋肉を少しだけ裂いた。ミーネは高火力の光線を反らした。マリナは、雷で敵を怯ませた。
どれも喜ぶには早すぎる成果だ。しかし、レイズたちの士気を上げるのには十分だった。
(……負けてらんねぇ!)
(気を抜くな!全力で行け!!)
少なからず結果を出している彼女たちに負けられない。
男性陣は自らを必死に鼓舞する。
(……一気に全滅はなかった。だが、ここからだ)
リゼルは龍力の高まりを感じながら、戦闘を振り返る。
戦う前の戦闘イメージでは、成す術なく全滅だった。
戦う気力さえ失っていた。しかし、実際は思ったよりも戦えている。
ただ、勝利までの道のりは遠い。
敵の体力、攻撃力、防御力全てが超一級だ。こちらもそれを上回るだけの龍力で戦わなければ、勝つことはできない。
「……ここです!」
レイラたちはまだ破壊されていない場所まで走り、振り返る。
マリナの雷のお陰でここまで来ることができた。
ただ、ゴールドライオの怒りは高まっているらしく、離れていても筋肉の血管の浮き上がりや目の充血が分かる。
ゾク、と背筋に寒気が走る。それを振り払うかのように、レイズは走る。
正面から敵の斜め前へ。仲間の立ち位置を気にしながら、立ち回る。
そして。
フル・ドラゴン・ソウルを超え、完全なる龍魂の領域へ。
「……炎帝ッ!!」
陽炎の比にならない火力。
振りかぶった剣に炎の皇帝が宿る。
「ガァァァァアアアア!!」
ゴールドライオは吠え、剛力の前脚でレイズを切り裂こうとする。
「させるか!剛裂空斬!!」
地についている方の前脚に全力の攻撃を叩き込むバージル。
体勢が崩れれば、攻撃されることはない。
「斬月!!」
間髪入れず、リゼルが入る。
が、相変わらず、堅い。刃が通りにくい。リゼルは顔を歪め、舌を打つ。
ここで、レイラが間に合う。
「聖光龍鋭剣!」
「絶氷蒼龍剣!!」
滑り込むように、ミーネも入る。
「……!!」
ゴールドライオの身体がぐらつく。
レイズを切り裂こうとしていた前脚が着地する。
動きを少しでも止めるなら、今だ。
「蒼雷駆!連剣!!」
マリナの、雷が駆けるような四連撃。
彼女の雷は敵を怯ませる。
「行け……!!」
ゴールドライオの頭上には、巨大な龍が。それは、レイズそのものが太陽龍に変身したかのような密度だ。
「食らえぇぇぇぇぇえええ!!」
ゴールドライオの頭に、太陽龍が落下する。
その龍は、老龍山の頑丈な大地にゴールドライオを介してヒビを入れた。
「!!」
凄まじい音と圧力と光。それら全てが混じり合った爆発を起こす。
レイラたちは棘の陰に隠れ、それらをやり過ごす。
(なんて威力……!)
(レイズ……あいつも強くなったな)
仲間の成長を喜ぶ反面、焦りを感じ始めるバージル。
そろそろ成果を上げなければ、精神的にも厳しい。
「…………」
周囲に焦げた臭いが充満する。
巻き上がった煙でゴールドライオの姿は確認できない。まだ勝負は終わっていない。彼らは武器を握り直す。